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第二章:本編
40-マチナカサガリ の、期待
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「正確には、僕の弟の養子なんだけどね」
父親が母親の言葉を引き継ぎ、形式的な書類上の話として提案をしてきた。
キリも俺も突然過ぎて唖然としていたし、キリに至っては俺だったら言葉の揚げ足取って肯定とみなすような態度を取ったあと、即座に否定をしていた。
「は……はい~……あ!これは返事じゃなくてですね!!」
俺だったら肯定の意と捉えるんだがな。
うちの両親は常識的だった。
「ふふ、分かってるわよぉ。急だから困っちゃうわよね。でもね、私たちマチナカ家は、キリちゃんを歓迎しているの。サガリとの幸せを願っているわ。でも、今の日本じゃ叶わないでしょ?」
「キリ君がマチナカ姓になるために、僕の養子にすると、法が整った時、サガリと結婚が出来ない。でも従兄弟なら結婚は出来るから、僕の弟の養子はどうかな?って思ったんだ」
2人は本当に俺等の事を真剣に考えてくれていた。
「えー?父さん母さんそんな事考えてくれてたんだ?ありがとう。感謝する。俺、父さんと母さんの子どもで良かった。キリ、いいよな?叔父さんの養子になろうぜ」
キリが居なかったら気持ちが溢れて両親に抱き着いていたかも知れない。
キリが居る手前そんな事は出来ないので軽口で応える。
俺は本当にこの2人の息子で良かった。
ついでに勢いでキリも養子の承諾してくれねーかな?と聞いてみたが、
「ちょ!サガリ君!?」
流されなかった。
「サガリ、強引に勧めないの!キリちゃんの気持ちをキチンと聞きなさい!で、いつ手続きする?」
「母さんっ!」
母親は俺を窘めると見せかけて応戦し、タケルはタケルで爆笑しながら母親にツッコミを入れていた。
母親もノリが良いからな。
そんな収拾付かない状況を纏めるのは、父親。
「すぐ、とは言わないし、ゆっくり考えて答えを出してほしい。どっちの答えになっても、僕たちマチナカ家は君の事も家族だと思っているからね。そこは知っていて欲しい」
提案は、あくまでも提案でしかなく、どちらになってもマチナカ家はキリを歓迎しているのだと、ハッキリと伝えてくれる。俺ばかりがキリを好きでいるんじゃない。
家族全員がキリを気に入ってるのだと、家の長が伝えてくれている。
「は……、はい~……あの、ありがとう、ございます」
それがどれだけ心強い事か、と思うが、キリはいつも通りの陰キャなコミュ障紛いな態度で両親にお礼を言っていた。
でも顔は嬉しそうな表情をしている。
「あの、叔父さん……?は、僕が養子になるのは大丈夫なんですか?」
キリは叔父さんの意思が気になったのか、父親に聞いた。
「あぁ、そこは気にしなくて大丈夫だよ。むしろ弟もノリノリだ。弟はなんと言うか……ちょっと風変わりでね、独り身でいつもフラフラとほっつき歩いてるような男なんだよ」
父親が遠い目をしている。
あの叔父さんの性格を思えば分からなくもない。
「あら、聞こえが悪いじゃないの。地頭が良くて何でも1人で出来ちゃうとても頼りになる方よ。型に嵌まらない自由な人でね、野性的で生命力に溢れているわ」
母親がフォローを入れるが、キリの顔には、ますます分からないとありありと書いてあった。
「要するに、心配しなくて良いって事だよ」
と、父親が無理やりまとめたのもウケる。
タケルも側でずっとニヤニヤ笑っているもんな。
「俺は、出来れば早めに結論出して欲しい。だってキリがマチナカになるんだろ?名実ともに家族じゃん。それにあっちの家族とも縁切れて願ったりだろ?」
両親がキリを養子に迎える事に前向きなのであれば、俺としては早々に決めて欲しいとキリに伝える。
それが叶えば完全にキリのクソ家族と縁が切れるのだから。
こんな好条件無いだろ。
「うぅ~ん……けど……そうか。もしかしたら僕の家族が迷惑かけてくるかも知れない」
キリは、まだあのクソ家族が接触してくる事を不安に感じている。
それに対して、うちの両親の表情も少し曇った。
前から、キリは家族と縁が薄い事はサラッと伝えていたが、そこまで詳しく話していない。
キリが分籍した時も、経緯は詳しく話さなかった。
けど、良いきっかけかも知れない。
キリが言葉を濁しながら、最近家族に絶縁宣言された事を話したので、俺も補足した。
「言っとくけど、キリは何も悪くねーからな?アレはあっちがおかしい。俺は実際目の当たりにしてるから、父さん母さんは俺とキリを信じて欲しい」
「そうか。前に分籍したのも関係あるのか?」
軽く頷いて、証拠がある旨も伝える。
「きょうだいの電話録音とあっちの母親とのショートメールの履歴を残してる。必要なら見せる」
「うん、僕は2人を信じるよ。君たちの事は良く知ってるつもりだからね。それなら、なおさらキリ君をうちで囲っておきたいねぇ」
父親は確認する事無く、俺の言葉を信用し、キリを養子に迎える意思をさらに強めていた。
「したいわねぇ」
母親も、のんびりとした口調で笑顔だが、目は笑っていない。
これはキリを確実に囲って行く目だ。
「決まったらキリ兄さんって呼んでいい?」
タケル君は両親の空気感を分かっているのか不明だが、マイペースな態度で場を和ませていた。
この流れでキリも受け入れてくれねーかな?と期待したが、曖昧な表情で笑うだけだった。
やっぱり流されないんだな。
父親が母親の言葉を引き継ぎ、形式的な書類上の話として提案をしてきた。
キリも俺も突然過ぎて唖然としていたし、キリに至っては俺だったら言葉の揚げ足取って肯定とみなすような態度を取ったあと、即座に否定をしていた。
「は……はい~……あ!これは返事じゃなくてですね!!」
俺だったら肯定の意と捉えるんだがな。
うちの両親は常識的だった。
「ふふ、分かってるわよぉ。急だから困っちゃうわよね。でもね、私たちマチナカ家は、キリちゃんを歓迎しているの。サガリとの幸せを願っているわ。でも、今の日本じゃ叶わないでしょ?」
「キリ君がマチナカ姓になるために、僕の養子にすると、法が整った時、サガリと結婚が出来ない。でも従兄弟なら結婚は出来るから、僕の弟の養子はどうかな?って思ったんだ」
2人は本当に俺等の事を真剣に考えてくれていた。
「えー?父さん母さんそんな事考えてくれてたんだ?ありがとう。感謝する。俺、父さんと母さんの子どもで良かった。キリ、いいよな?叔父さんの養子になろうぜ」
キリが居なかったら気持ちが溢れて両親に抱き着いていたかも知れない。
キリが居る手前そんな事は出来ないので軽口で応える。
俺は本当にこの2人の息子で良かった。
ついでに勢いでキリも養子の承諾してくれねーかな?と聞いてみたが、
「ちょ!サガリ君!?」
流されなかった。
「サガリ、強引に勧めないの!キリちゃんの気持ちをキチンと聞きなさい!で、いつ手続きする?」
「母さんっ!」
母親は俺を窘めると見せかけて応戦し、タケルはタケルで爆笑しながら母親にツッコミを入れていた。
母親もノリが良いからな。
そんな収拾付かない状況を纏めるのは、父親。
「すぐ、とは言わないし、ゆっくり考えて答えを出してほしい。どっちの答えになっても、僕たちマチナカ家は君の事も家族だと思っているからね。そこは知っていて欲しい」
提案は、あくまでも提案でしかなく、どちらになってもマチナカ家はキリを歓迎しているのだと、ハッキリと伝えてくれる。俺ばかりがキリを好きでいるんじゃない。
家族全員がキリを気に入ってるのだと、家の長が伝えてくれている。
「は……、はい~……あの、ありがとう、ございます」
それがどれだけ心強い事か、と思うが、キリはいつも通りの陰キャなコミュ障紛いな態度で両親にお礼を言っていた。
でも顔は嬉しそうな表情をしている。
「あの、叔父さん……?は、僕が養子になるのは大丈夫なんですか?」
キリは叔父さんの意思が気になったのか、父親に聞いた。
「あぁ、そこは気にしなくて大丈夫だよ。むしろ弟もノリノリだ。弟はなんと言うか……ちょっと風変わりでね、独り身でいつもフラフラとほっつき歩いてるような男なんだよ」
父親が遠い目をしている。
あの叔父さんの性格を思えば分からなくもない。
「あら、聞こえが悪いじゃないの。地頭が良くて何でも1人で出来ちゃうとても頼りになる方よ。型に嵌まらない自由な人でね、野性的で生命力に溢れているわ」
母親がフォローを入れるが、キリの顔には、ますます分からないとありありと書いてあった。
「要するに、心配しなくて良いって事だよ」
と、父親が無理やりまとめたのもウケる。
タケルも側でずっとニヤニヤ笑っているもんな。
「俺は、出来れば早めに結論出して欲しい。だってキリがマチナカになるんだろ?名実ともに家族じゃん。それにあっちの家族とも縁切れて願ったりだろ?」
両親がキリを養子に迎える事に前向きなのであれば、俺としては早々に決めて欲しいとキリに伝える。
それが叶えば完全にキリのクソ家族と縁が切れるのだから。
こんな好条件無いだろ。
「うぅ~ん……けど……そうか。もしかしたら僕の家族が迷惑かけてくるかも知れない」
キリは、まだあのクソ家族が接触してくる事を不安に感じている。
それに対して、うちの両親の表情も少し曇った。
前から、キリは家族と縁が薄い事はサラッと伝えていたが、そこまで詳しく話していない。
キリが分籍した時も、経緯は詳しく話さなかった。
けど、良いきっかけかも知れない。
キリが言葉を濁しながら、最近家族に絶縁宣言された事を話したので、俺も補足した。
「言っとくけど、キリは何も悪くねーからな?アレはあっちがおかしい。俺は実際目の当たりにしてるから、父さん母さんは俺とキリを信じて欲しい」
「そうか。前に分籍したのも関係あるのか?」
軽く頷いて、証拠がある旨も伝える。
「きょうだいの電話録音とあっちの母親とのショートメールの履歴を残してる。必要なら見せる」
「うん、僕は2人を信じるよ。君たちの事は良く知ってるつもりだからね。それなら、なおさらキリ君をうちで囲っておきたいねぇ」
父親は確認する事無く、俺の言葉を信用し、キリを養子に迎える意思をさらに強めていた。
「したいわねぇ」
母親も、のんびりとした口調で笑顔だが、目は笑っていない。
これはキリを確実に囲って行く目だ。
「決まったらキリ兄さんって呼んでいい?」
タケル君は両親の空気感を分かっているのか不明だが、マイペースな態度で場を和ませていた。
この流れでキリも受け入れてくれねーかな?と期待したが、曖昧な表情で笑うだけだった。
やっぱり流されないんだな。
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