地下アイドルを推してたワープアコミュ障陰キャな僕だけど気付いたら執着系ハイスペイケメンに僕が推されて(性的にも)磨かれました?

黒川

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第二章:本編

41-マチナカサガリ の、気持ち

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結局、養子の話は一旦保留。

「返事はいつでもいいよ。断っても大丈夫。それでも君はサガリと同じくらい大事だからね」

父親も急かす事なく、結論がどちらになってもキリは自分たちにとって大切な存在である事には変わりないと、改めて伝えながら、頭を撫でていた。
分かる、撫でたいよな。

特に会話をする事なく帰路に向かっていたら、唐突にキリがため息を吐いた。

「疲れたか?」

キリにとっては割と重要な事を、いきなり提案されたんだ。
身体は疲れていなくとも、精神的に疲労が出ているかも知れない。
そんな心配をしたのだが、キリは疲労と言うより自分の家族と俺の家族を比較し、その違いにため息が出たのだと答えた。
散々理不尽な扱いを受け、嫌な事も言われてきたが、それでもキリにとっては血の繋がりのある「家族」だ。
キリ自身は、家族に対してあからさまな嫌悪や憎悪を持っていない。
好意を持っている様にも見えないが。
でも、家族はそんな好き嫌いで事が済む関係かと言われれば、世間一般的には否と言われるだろう。
今は、キリも自分の家族の態度や言動に違和感を覚え、距離を置くことを選んでいるが、またあのクソ家族が接触してきたら?家族は共に居るべきだ、なんて言い出したら?
キリは俺より向こうを選ぶのだろうか?
そんな可能性もゼロでは無い。
俺は平静を装いながら、キリに聞いた。

「……キリは、今もあっちの家族に未練あるのか?」

平静とか言いながら、不安にかられてキリの手を強く握った。
ここに居ろ。
お前はずっとここに居ろ、と願いながら。
キリはしばし間を置き、独り言の様に呟いた。

「無い……なぁ。なんか、別にどうでもいいやーって感じ」

キリらしいフラットな声音で、あたかも天気の話をしているような軽さだった。

「あれ……?……うん、本当に、どうでもいいやーって思ってる」

キリも自分の出てきた言葉を反芻し、何かに気づいたような顔をしていた。
そして、吹っ切れたように言葉を続けた。

「どうでもいい人たちと、わざわざ比べる必要も無かったね。ごめんね、変な事言って。うん、比べなければ別に気分が沈む事もないね。なんか、無駄な事しちゃった」

いつもの気の抜けた表情で笑っている。
そうか。
お前にとっての向こうの家族は、それでいいのか。
これは、俺の自分勝手な感情なのだが。
キリの家族は本当にどうしようもないクソ野郎どもだ。その考えは今もこれからも覆ることは無いだろう。でも、キリの家族だ。あの中で、今のキリが出来上がったのも事実。父親には会ってないが、あの両親から生まれてきたのも事実。
クソと思いつつも、あの家族がいたからこそのキリで。縁を切ってしまえと思いながらも、俺の家族の仲の良さを思うと、そう簡単に縁を遠ざけて良いものなのかとも考えてしまう。

キリは今、どんな思いで家族の事を「どうでもいい」と答えているのだろう?

自分に置き換えて、俺が出来ない事をいとも簡単に発言してしまうキリの強さに、今まで感じたことのない感情が生まれた。

「サガリ君……?……あの、……大丈夫?」

キリは俺の態度に不安を感じているのか、握っていた手を強く握り返してきた。

不安がらせたいわけではないのに。

「あぁ、わり。変な表情してるよな。自覚ある。なんか、キリが凄ぇなって思って……」

そうだ。
キリは凄い。
あの環境で擦れる事なく育って、家族に対して憎む事も、憂える事も無く、向こうが絶縁と言えば、あっさりと「どうでもいい」なんて切り離してしまう。
俺に出来ない事を、コイツはずっとしてきたんだ。

……せざるを得なかった、のかも知れないが。

なのにコイツは自覚も無く、俺の事を凄いと言う。
傍から見て分かりやすい有能さは、俺の方だから仕方のない事ではあるが。
だとしても、俺がキリを凄いヤツだと思っている事を知って欲しい。

「そう言う事じゃなくてよ、キリはキリで凄いよ。尊敬してる」

「え?えぇ~??」

俺が守らなきゃ、囲って閉じ込めて庇護して、なんて思ってたけど、彼は彼なりの強さで生きてきて、今がある。
なんて細部までは伝えなかったが、キリは戸惑う様子も見せながら、

「ぼ……ぼくもぉ~~……」

と、何に対しての回答なんだか分からない返事をしてきて、それはそれでキリらしいなと、吹き出してしまった。

締まらねぇな。
だが、それがキリなんだから仕方無ぇか。
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