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第一章:本編
31-マチカナ サガリ の、沈着。
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事務所の意向か、ラキの売り方が変わった。
ライブが減り、イベントが増えた。収益化をはかるならそっちの方が割がいいのだろうか?
あまりアイドル業界の裏事情は分からないが、色々と邪推してしまう。
と言ってもキリは相変わらず脳内お花畑の全肯定野郎だ。
ファンミーティングと称したトークイベントにも嬉嬉として参戦をしている。
俺も一緒だ。
今回の会場は座席指定だったので、連番でチケットを取るべく俺がまとめて購入した。キャパもデカかったのでチケ取りは特に苦労しなかったし、発売開始時間直後で購入したおかげか、そこそこ前の方の座席を確保出来た。
今までの会場に比べれば強気に出た大きさだったが、それでも座席は全て埋まっていた。
事務所のプッシュもあるのだろう。
地上波の出演に公式アカウントからの動画切り抜き、一気にラキの知名度が上がってのイベントだ。
今回の集客も、新規がかなり影響している筈だ。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
イベントが始まれば、ラキと司会の女性がステージに上がってきた。
その後ろで別のスタッフがラキの私物と思われるアコギを設置している。
そんな中でラキがマイクを持って挨拶をした。
「今日も私のために来てくれてありがとう。長いこと応援してくれているみんなも、最近私を知ってくれたみんなも、一緒に楽しんでね!あとで弾き語りもするから楽しみにしててねー!」
古参、新規どちらにも気遣った挨拶。
最近古参のごく1部がネットで新規に対して気に入らないだなんだと色々言ってたからな。
ラキを生かすも殺すもファンだろうが。
増えて知名度上がったのだって新規が増えたおかげだろ、感謝していればいいのに、ファン拗らせるとめんどくせぇ。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
恙無く始まったトークイベントは、なかなか楽しかった。
ラキ自身もトーク力はあるが、それを引き出してる司会者もそれなりに長けた人である事が伺える。
絶対に個を出さずにラキの話題の引き出しに徹底し、受け応えも不快にならず、会話のテンポも悪くない。声のトーンも高過ぎず、低過ぎず、邪魔にならない。
ファンが求めているものと己の役割をしっかりと認識しての会話だ。
隣に座っているキリを見ればラキに釘付けになって表情をクルクルと変えている。時折小声で「凄いね……面白い……楽しいっ……知らなかったラキちゃんだ……」とモゴモゴと呟いていたので、
「アレは司会者もスゲーな」
と俺も思わず呟いてしまった。
すると、キリは少し考えるようにジッと司会者の方を見て、また笑みを浮かべながらラキのトークに耳を傾けていた。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
「……って……わぁ、時間が経つのって早いね。いっぱい喋っちゃった!私が喋るだけのイベントなんて需要あるかなー?って少し心配だったんだけど……」
イベントも終盤。
たしかにトークのみでありながら弛れる事はなく、楽しく過ごせた。
客席からは、そんなラキのセリフに被せるように言葉が飛び交う。
「楽しかったよー!!」「大好きー!!」「またやってー!!」
肯定的な言葉にラキは笑っていたし、隣を見ればキリも叫んでいた。
「いつだってだいすきー!!」
「おれもー!!!」
つい俺も叫んだが、ラキに対してなのかキリに対してなのかは、この際どちらでもいいだろう。
「ふふっ!みんなの気持ち伝わった!嬉しいっ!またライブもするし、こうやってイベントも開催するからね!」
ラキは最後にと、アコギを抱えて2曲連続で弾き語りを披露した。
どちらもしっとりめで、ギターの音色とラキの声がしっくりと合わさって心地よいハーモニーになっていた。
やっぱりラキの歌はいいなと改めて認識していたら、隣でキリがボロボロに泣いていた……。
あぁー……
オタク、感情昂ると軽率に泣くよな……
ライブが減り、イベントが増えた。収益化をはかるならそっちの方が割がいいのだろうか?
あまりアイドル業界の裏事情は分からないが、色々と邪推してしまう。
と言ってもキリは相変わらず脳内お花畑の全肯定野郎だ。
ファンミーティングと称したトークイベントにも嬉嬉として参戦をしている。
俺も一緒だ。
今回の会場は座席指定だったので、連番でチケットを取るべく俺がまとめて購入した。キャパもデカかったのでチケ取りは特に苦労しなかったし、発売開始時間直後で購入したおかげか、そこそこ前の方の座席を確保出来た。
今までの会場に比べれば強気に出た大きさだったが、それでも座席は全て埋まっていた。
事務所のプッシュもあるのだろう。
地上波の出演に公式アカウントからの動画切り抜き、一気にラキの知名度が上がってのイベントだ。
今回の集客も、新規がかなり影響している筈だ。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
イベントが始まれば、ラキと司会の女性がステージに上がってきた。
その後ろで別のスタッフがラキの私物と思われるアコギを設置している。
そんな中でラキがマイクを持って挨拶をした。
「今日も私のために来てくれてありがとう。長いこと応援してくれているみんなも、最近私を知ってくれたみんなも、一緒に楽しんでね!あとで弾き語りもするから楽しみにしててねー!」
古参、新規どちらにも気遣った挨拶。
最近古参のごく1部がネットで新規に対して気に入らないだなんだと色々言ってたからな。
ラキを生かすも殺すもファンだろうが。
増えて知名度上がったのだって新規が増えたおかげだろ、感謝していればいいのに、ファン拗らせるとめんどくせぇ。
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恙無く始まったトークイベントは、なかなか楽しかった。
ラキ自身もトーク力はあるが、それを引き出してる司会者もそれなりに長けた人である事が伺える。
絶対に個を出さずにラキの話題の引き出しに徹底し、受け応えも不快にならず、会話のテンポも悪くない。声のトーンも高過ぎず、低過ぎず、邪魔にならない。
ファンが求めているものと己の役割をしっかりと認識しての会話だ。
隣に座っているキリを見ればラキに釘付けになって表情をクルクルと変えている。時折小声で「凄いね……面白い……楽しいっ……知らなかったラキちゃんだ……」とモゴモゴと呟いていたので、
「アレは司会者もスゲーな」
と俺も思わず呟いてしまった。
すると、キリは少し考えるようにジッと司会者の方を見て、また笑みを浮かべながらラキのトークに耳を傾けていた。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
「……って……わぁ、時間が経つのって早いね。いっぱい喋っちゃった!私が喋るだけのイベントなんて需要あるかなー?って少し心配だったんだけど……」
イベントも終盤。
たしかにトークのみでありながら弛れる事はなく、楽しく過ごせた。
客席からは、そんなラキのセリフに被せるように言葉が飛び交う。
「楽しかったよー!!」「大好きー!!」「またやってー!!」
肯定的な言葉にラキは笑っていたし、隣を見ればキリも叫んでいた。
「いつだってだいすきー!!」
「おれもー!!!」
つい俺も叫んだが、ラキに対してなのかキリに対してなのかは、この際どちらでもいいだろう。
「ふふっ!みんなの気持ち伝わった!嬉しいっ!またライブもするし、こうやってイベントも開催するからね!」
ラキは最後にと、アコギを抱えて2曲連続で弾き語りを披露した。
どちらもしっとりめで、ギターの音色とラキの声がしっくりと合わさって心地よいハーモニーになっていた。
やっぱりラキの歌はいいなと改めて認識していたら、隣でキリがボロボロに泣いていた……。
あぁー……
オタク、感情昂ると軽率に泣くよな……
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