地下アイドルを推してたワープアコミュ障陰キャな僕だけど気付いたら執着系ハイスペイケメンに僕が推されて(性的にも)磨かれました？

第二章：本編

10-マチナカサガリ は、好機を見る

耳を塞ぎたくなるクズみたいな言葉がキリに降り注いでいる。
そんなに学歴は大事か？
部外者なのに俺がイライラしている。
恐らくキリは糠に釘打ってるような反応なのだろうな。
だんだん扉向こうの声は大きくなり、下手したら近所にも聞こえるレベルだ。

俺は無理矢理タイミングを見計らって、玄関の扉を開けた。

「すみません、キリさん。勝手に開けました。なんか皆さんのやり取りが外にまで聞こえて来ましたので。キリさん、大丈夫ですか？」

自慢じゃないが、俺は自分のスペックを正確に認識している。
使えるものは何でも使う。
ここでの傲慢な態度は逆効果である事も分かる。
クソ正直に関係性を話すのもNGだ。
だから最初は穏便に。
あくまで、キリを心配する友人を演じる。
キリの妹弟きょうだいを視界に捉えつつ、キリの様子を伺う。……2人とも普通だな。
キリは突然俺が入ってきた事に狼狽えているみたいだが、取り敢えず「大丈夫だ」と言う意味を込めて笑顔を見せた。

「はじめまして。キリさんと仲良くさせて頂いてます、マチナカと申します。今日は、私がわがまま言ってキリさんの用事に付いてきてしまいました。お邪魔するつもりは一切無かったのですが……ずいぶんと大きな声が外にまで漏れていましたので、お声がけしてしまいました。キリさん、用事は終わりましたか？それとも、久々の家族水入らずで過ごされるなら、私は近くで時間つぶしてますよ」

テメーらの声うるせーんだよ外に漏れてんぞ？恥ずかしくねぇのかよ？キリ連れて早く帰りてぇんだけど？を、オブラートに包む。ついでに念願のキリ家族への自己紹介も済ます。

「な……なに、このイケメン……」
「兄貴の友だちとか、ウソだろ。パシリかなんかにされてる系だろ。はっ！ご愁傷さま」

なかなかの低俗発言過ぎて心の中で笑った。特に弟。だいぶ自尊心がこじれているようで。
しかもこっちはご丁寧に挨拶してやってんのに返さねぇのかよ。
取り敢えず、目の前の2人の発言は無視してキリを見る。

「あ、もうね、用事は終わってる。家に上がる事も無いからもうおしまいだよ。2人とも、元気でね。父さんと母さんにもよろしく伝えておいて」

そうだよな。キリも早く帰りたいよな。そんで道すがらデートもしたいよなぁ？
なんて愛でていたら妹の方が俺をロックオンしたらしい。

「お兄ちゃん、彼と友だちなの？私の事を紹介してよ」

凄ぇな。目が猛禽類だ。
紹介前に俺はテメーらに挨拶してんだよ。返せよ。
と、言う事は顔に出さず遠回しに「年上女は興味無ぇから帰る」と笑顔伝えた。
すると、俺が年下だと分かると弟までさらに態度が厚かましくなった。
もう玄関先でするやり取りじゃねーだろ。
これ以上話し込むなら茶でも出せや。