色彩の大陸3~英雄は二度死ぬ

谷島修一

文字の大きさ
51 / 66
人民革命

オレガの証言~人民革命~その8

しおりを挟む
【現在】

 大陸歴1710年5月4日・パルラメンスカヤ人民共和国・首都アリーグラード

「そういうわけで何日も、師の遺体を探したんだけど、その行方が分からなかった。でも結局、師は数か月後に生きて帰って来たので、遺体が見つかるはずもないわね」。
 オレガは過去の出来事について話し終えると、紅茶のカップをテーブルの上に置いた。

 イリーナは改めて尋ねた。
「確認ですが、数か月間はユルゲンさんの行方は全く分からなかったのですね?」
「そうよ。どこにいたのか師は詳しくは教えてくれなかったのよ。ただ、戦場からそう遠くない村にて、怪我が治るまで潜伏していた、とだけ言っていたわ」。
「何か隠していますね」。
「私もそう感じたわ。でも、それ以上は教えてくれなかった」。
「この謎は調べたいですね」。

 続いてクララが尋ねた。
「お爺様は戻って来てから革命軍の士官になったの?」
「そうよ、ナタンソーンと会って革命軍の指揮をすることになったみたい。その頃、外国勢力がまた攻めてきそうだという情報が入って来ていたから、ともかく、ナタンソーンは軍の指揮のできる者、元帝国軍でも戦える者は構わず仲間に引き入れていたのよ」。

 その後、テレ・ダ・ズール公国、ダーガリンダ王国、アレナ王国、プネルタバ王国の四か国がパルラメンスカヤ人民共和国に宣戦布告して侵攻してきたのだ。約一年の戦いの後、革命軍はなんとか四か国の連合軍を撃退した。

「その後は、師は肩書は上級士官だったけど、軍隊を実際に率いるのはさほど多くなくて、士官学校で剣や用兵を教えたりしていたみたい。例外的にシンドゥ王国との戦争の時は指揮を執って活躍したわ」
 四十数年前、南の大陸 “ダクシニー”にある大国のシンドゥ王国が大陸に侵攻してきた戦争があった。その時は、大陸の南端のアレナ王国を主戦場に激しい戦いが行われ、シンドゥ王国の侵攻を寸前のところで食い止めたのだ。

 オレガ、イリーナ、クララの三人は紅茶をもう一杯飲んで雑談をした後、その日は別れることにした。
 “人民革命”については、オレガの知る限りの話を聞くことができだろう。
 イリーナとクララの二人は、ユルゲンの行方が分からなかった数か月が気になっていた。オレガによるとユルゲンは確かに死んでいたというのだ。しかし、実際には生きて帰って来たので、彼女の勘違いだったと思うが、そのあたりのことも調べたい。
 イリーナは礼を言った。
「今日はありがとうございました」
「お役に立てたかしら?」
「はい!」
 二人は元気よく返事をした。
「また、いらっしゃいね」。
 オレガは家の扉まで杖をついて見送ってくれた。

 帰り道、二人はオレガの話で、これまでの分かったことと不思議な点を改めて全て挙げていった。

【分かったこと】
・ブラミア帝国の皇帝スタニスラフ四世が殺され魔術師アーランドソンに体を乗っ取られていたこと。
・その魔術師アーランドソンを倒したのはユルゲン・クリーガーであったこと。
・“チューリン事件”のチューリンや怪物はアーランドソンに魔術で操られた傀儡だったこと。
・“ソローキン反乱”は皇帝がソローキンを排除するための謀略であったこと
・ソローキンを倒したのはユルゲンだった。
・ユルゲンが率いる遊撃部隊が共和国の反乱に加担してモルデンを掌握したこと。
・そもそもユルゲンは、かなり前から共和国の独立派と内通していたこと。
・ユルゲンは一人で降伏し、軍法会議において反逆罪で死刑宣告を受けるが恩赦されたこと。
・ユルゲン・クリーガーの屋敷にいた召使いナターシャ・ストルヴァは、革命軍の仲間だった。

【謎】
・モルデン掌握、死刑宣告と恩赦について秘密にされている理由は不明。
・ユルゲンが裁かれた軍法会議の記録が残っているか確認する。
・ユルゲンが革命軍の追っ手から逃げ延びたこと。
・ユルゲンがオレガに斬られて死亡したはずなのに、数か月後生きて現れたこと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...