色彩の大陸3~英雄は二度死ぬ

谷島修一

文字の大きさ
52 / 66
英雄は二度死ぬ

新たな証言者探し

しおりを挟む
 大陸歴1710年5月8日・パルラメンスカヤ人民共和国・首都アリーグラード

 イリーナとクララは、クララの屋敷で集まって資料を調べていた。

 最初にピックアップした証言者のリストに、メモを書き込みながら改めて確認する。

 ユルゲンの弟子の三人
・オットー・クラクス
・ソフィア・タウゼントシュタイン
・オレガ・ジベリゴワ
 彼らからは貴重な証言を聞くことができた。

 傭兵部隊の隊員
・フリードリヒ・プロブスト。
 ブリュンヒルデが会っているが収穫は無し。

・アグネッタ・ヴィクストレーム
 ヴィット王国で存命らしい。

 以下の三人は鬼籍に入っているか入っていると思われる。
・ユルゲンの妻で皇帝親衛隊の隊長 ヴァシリーサ・アクーニナ。
 遺品の中にはめぼしいものはなかった。
・ユルゲンの上官、第五旅団長 ボリス・ルツコイ。
 消息不明。おそらくすでに死去。
・帝国の最後皇帝イリア。
 国外脱出後は、消息不明。

 イリーナとクララは、他に何か手掛かりを持っていそうな人物はいないか話をしていた。
 しばらくすると、召使いのナターシャが飲み物を持って部屋に入って来た。彼女は飲み物の入ったコップをテーブルを上に置く。 
「皇帝イリアの消息が何とかわからないかしら?」
 そう話し合うイリーナとクララの話の内容を耳にしてナターシャが話しかけてきた。
「そういえばお嬢様」。
「なに?」
「プリブレジヌイに、皇族の末裔が住んでいるのをご存じですか?」
「皇族の末裔?」
「はい、皇帝イリアが公国へ亡命して数年後、東方のプネルタバ王国の王族と婚姻し、二男二女を授かりました。晩年に相手が死去してから、皇帝イリアは人民共和国政府に許されて、末息子と一緒にプリブレジヌイに移住したそうです。それが十年ほど前の事です。皇帝イリア自身は移住して数年後に病死しましたが、その末息子が存命です。歳はたしか四十歳ぐらい」。
「よく知ってるね」。
「私は、こちらでお世話になる前の屋敷が元貴族でしたので、知っていました。そして、帝国の元皇族や貴族の子孫たちがあつまる会合があります。それで、以前、その会合に臨時の給仕係として参加したことがございます」。
「へー。そうだったんだ」。
「その御子息が皇帝イリアの遺品の中で、何か手掛かりになるような資料を持っているかもしれません」。
「国外に脱出した皇帝が何か資料を持っているとは思えないけど。オレガさんの話では皇帝は着の身着のままで脱出したようだと」。
「でも、国外に言った後でも、例えば日記の類があれば、彼女しか知りえないようなことも書いてあるかもしれません。何せ皇帝ですから当時の民衆には知られていないような事実も知っているのではないでしょうか?」。
「そーかあ。日記があればね。でも、その息子のその消息が分からないわ」。
「住所が分かればいいんだけど」。
 クララが答えた。

「その元皇族、貴族の会合に参加できればなあ」。イリーナはつぶやいた。「いい方法がないか…」。
「通常では会合への参加は難しいかもしれません。でも、わたくしが、前の屋敷の旦那様にお願いして会合に参加できないか頼んでみましょうか?」
「えー。それ助かります」
 イリーナは思わず姿勢を正した。
「だた、ご了承いただけるかはわかりませんので、あまりご期待はされないようにお願いします」。
「いいよ。当たって砕けろだね。もし、うまくいったらラッキーだし」。
 クララが嬉しそうに言う。
「では、数日中に前の屋敷の旦那様に会ってみます」。
 召使いはそういって部屋を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...