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英雄は二度死ぬ
最後の真相1
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【50年前】
ブラミア帝国内のとある小さな村。
ユルゲン・クリーガーは目が覚めた。
見慣れない少々汚れた木の天井が見えた。
ユルゲンは、ハッとして身を起こした。
自分は皇帝イリアを逃がすため、馬車を操って囮となり、革命軍の追っ手に取り囲まれ、戦闘中に矢で負傷し馬車の中へ逃げ込んだところまでは覚えている。その後、自分はどうなったのか?
「目が覚めましたか?」
近くから女性の声がした。
ユルゲンは辺りを見回す。いま居る部屋は、どこかわからないが、小さい民家の寝室だろうか。そして、部屋の隅の椅子に女性が座っているのに気が付いた。
ユルゲンは、その彼女の顔を見て驚いた。
「アグネッタ!」
部屋にいたのは、アグネッタ・ヴィクストレーム。ヴィット王国の魔術師。三年前、傭兵部隊で約一年間、ユルゲンの部下だった女性だ。
ユルゲンは困惑したが、何とか言葉をつないだ。
「ここはどこだ? これは一体、どうしたことだ? なぜ君が居る? 私は確か追っ手に取り囲まれて…」。
「クリーガーさん、どうか、落ち着いて。一つずつ質問に答えます」。アグネッタはユルゲンに体を向けて姿勢を正す。「まずここは、あなたが囮となって馬車で逃げて来た林からさほど遠くない村です。革命軍の追っ手は私たちが追い払いました」。
「私たち?」
「私以外にも数名、ヴィット王国の者と一緒に行動しています」。
ユルゲンは再びハッとなって自分の体を見回した。服に血が滲んでいているのが見えたが、矢の刺さった時の痛みはない。
「怪我は治癒魔術で治しました」。
「そうか…」
ユルゲンは改めて尋ねた。
「なぜ私を助けた?」
「話せば長くなります。私がヴィット王国の特殊な部隊に所属している話をしたことがあると思います」
「ああ…、三年前、アーランドソンを倒した時だね」。
「はい、その特殊な部隊は、アーランドソンのように使用禁止の魔術を利用した者や、禁止のされている魔術の魔術書を持って国外に逃亡した者を捕えるのが任務の一つです。もう一つ、重要な任務があります」
「重要な任務?」
「はい。それは、ヴィット王国の体制の維持です」。
「体制の維持?」
「ヴィット王国が国内外にいる危険と思われる個人や組織を排除するのです」。
「それは、秘密警察のようなものか? 帝国の“エヌ・ベー”のような」。
「そうです。しかし、私たちは王国の体制維持の為に、外国にも間接的ですが干渉しております」。
「干渉?」
「大陸の各国のパワーバランスを均衡にするための干渉です」。
「よくわからないのだが、具体的にはどういう?」
「例えば、共和国が帝国に占領されたあと、私たちは潜伏している共和国派を助けました。もっと具体的に言うと、モルデン近くに潜伏していた彼らのアジトを発見されないようにしておりました。三年近く帝国軍が捜索していたのに、アジトが見つかったのは、たった一つだけです」。
「それは、どのようにして?」
「幻影魔術でアジトが発見されるのを防いでいました」。
「そうだったのか」。
幻影魔術は、文字通り幻影を起こし、対象者を錯覚させる魔術だ。
ユルゲンはこの話に納得した。確かに、当時の帝国軍は何度も共和国派の残党狩りをしていたと聞いたことがある。モルデン近郊にいたダニエル・ホルツが率いる残党はいくつか拠点を持っていたが、ユルゲンの知る限りそのアジトが発見されてしまったというのを聞いたことが無かった。
そして、結果的にホルツ率いる共和国派の反乱をきっかけに、共和国は帝国の占領から再独立をしたのだ。
アグネッタは続けて話す。
「帝国があのまま共和国の占領を続け、さらに強大な国家となればヴィット王国や他国への大きな脅威となったでしょう。ですので、共和国の再独立を手助けしたのです」。
ブラミア帝国内のとある小さな村。
ユルゲン・クリーガーは目が覚めた。
見慣れない少々汚れた木の天井が見えた。
ユルゲンは、ハッとして身を起こした。
自分は皇帝イリアを逃がすため、馬車を操って囮となり、革命軍の追っ手に取り囲まれ、戦闘中に矢で負傷し馬車の中へ逃げ込んだところまでは覚えている。その後、自分はどうなったのか?
「目が覚めましたか?」
近くから女性の声がした。
ユルゲンは辺りを見回す。いま居る部屋は、どこかわからないが、小さい民家の寝室だろうか。そして、部屋の隅の椅子に女性が座っているのに気が付いた。
ユルゲンは、その彼女の顔を見て驚いた。
「アグネッタ!」
部屋にいたのは、アグネッタ・ヴィクストレーム。ヴィット王国の魔術師。三年前、傭兵部隊で約一年間、ユルゲンの部下だった女性だ。
ユルゲンは困惑したが、何とか言葉をつないだ。
「ここはどこだ? これは一体、どうしたことだ? なぜ君が居る? 私は確か追っ手に取り囲まれて…」。
「クリーガーさん、どうか、落ち着いて。一つずつ質問に答えます」。アグネッタはユルゲンに体を向けて姿勢を正す。「まずここは、あなたが囮となって馬車で逃げて来た林からさほど遠くない村です。革命軍の追っ手は私たちが追い払いました」。
「私たち?」
「私以外にも数名、ヴィット王国の者と一緒に行動しています」。
ユルゲンは再びハッとなって自分の体を見回した。服に血が滲んでいているのが見えたが、矢の刺さった時の痛みはない。
「怪我は治癒魔術で治しました」。
「そうか…」
ユルゲンは改めて尋ねた。
「なぜ私を助けた?」
「話せば長くなります。私がヴィット王国の特殊な部隊に所属している話をしたことがあると思います」
「ああ…、三年前、アーランドソンを倒した時だね」。
「はい、その特殊な部隊は、アーランドソンのように使用禁止の魔術を利用した者や、禁止のされている魔術の魔術書を持って国外に逃亡した者を捕えるのが任務の一つです。もう一つ、重要な任務があります」
「重要な任務?」
「はい。それは、ヴィット王国の体制の維持です」。
「体制の維持?」
「ヴィット王国が国内外にいる危険と思われる個人や組織を排除するのです」。
「それは、秘密警察のようなものか? 帝国の“エヌ・ベー”のような」。
「そうです。しかし、私たちは王国の体制維持の為に、外国にも間接的ですが干渉しております」。
「干渉?」
「大陸の各国のパワーバランスを均衡にするための干渉です」。
「よくわからないのだが、具体的にはどういう?」
「例えば、共和国が帝国に占領されたあと、私たちは潜伏している共和国派を助けました。もっと具体的に言うと、モルデン近くに潜伏していた彼らのアジトを発見されないようにしておりました。三年近く帝国軍が捜索していたのに、アジトが見つかったのは、たった一つだけです」。
「それは、どのようにして?」
「幻影魔術でアジトが発見されるのを防いでいました」。
「そうだったのか」。
幻影魔術は、文字通り幻影を起こし、対象者を錯覚させる魔術だ。
ユルゲンはこの話に納得した。確かに、当時の帝国軍は何度も共和国派の残党狩りをしていたと聞いたことがある。モルデン近郊にいたダニエル・ホルツが率いる残党はいくつか拠点を持っていたが、ユルゲンの知る限りそのアジトが発見されてしまったというのを聞いたことが無かった。
そして、結果的にホルツ率いる共和国派の反乱をきっかけに、共和国は帝国の占領から再独立をしたのだ。
アグネッタは続けて話す。
「帝国があのまま共和国の占領を続け、さらに強大な国家となればヴィット王国や他国への大きな脅威となったでしょう。ですので、共和国の再独立を手助けしたのです」。
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