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捜査1日目
捜査1日目~ヴェールテ家屋敷
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マイヤーとクラクスは馬を駆りヴェールテ家の屋敷に向かう。屋敷は警察本部からさほど遠くないところにあった。この辺りは旧貴族多く住む地域で豪邸が多い。
二人は、目的のヴェールテ家の屋敷の前に到着した。柵の向こう側には、よく手入れされた広い庭が見える。二人は柵の門を開け中に入り、庭を抜けて屋敷の大きな門扉の前に立ちノックをした。
中から出てきたのは、顔には皺が目立つ高齢の白髪の男性だった。しかし、顔の見た目の年齢の割には背が高く背筋もピンとしている。黒い服を着て身なりが整っており、おそらく彼は執事だろう。
彼は二人をそれぞれ見てから尋ねる。
「何か御用ですか?」
「我々は軍の者です。先日のハーラルトさんの殺害事件について調査しております」。
「軍の方ですか? なぜ軍が事件の捜査を?」。
「軍の機密情報と関連している可能性があり、事件を警察から我々が引き継ぎました」。
マイヤーはとっさに適当な嘘をついた。
「機密情報!?」
男性は少々驚いたようだが、この場は屋敷の中に招き入れてくれた。玄関も広く、掃除が行き届いているのであろう、とても綺麗にされている。壁には絵画が掲げられ。彫刻や壺など美術品らしきものも並んでいる。
男性は自己紹介をする。
「失礼しました。私は執事のフリッツ・ベットリッヒです」。
「私はエーベル・マイヤー、こちらはオットー・クラクスです」。
二人は敬礼をした。
「軍ということは帝国の方と思いましたが、お名前からすると共和国の方ですね」。
「そうです。正確に言うと我々は軍に雇われている傭兵部隊です」。
「傭兵部隊の噂は伺ったことがあります。傭兵部隊の方とは初めてお会いしました」。
そういって執事は二人の着ている制服を一瞥した。傭兵部隊の制服は帝国軍の者とは少々デザインが違う、それが珍しかったのだろう。
マイヤーは微笑んで本題に入った。
「では、早速ですが、ハーラルトさんが殺害された日にパーティー会場で給仕係をしていた、アデーレ・ヴェーベルンさんはおられますか? お話を伺いたいと思っております」。
「おります。お呼びいたします。こちらでお待ちください」。
マイヤーとクラクスの二人は執事に連れられて、屋敷一階の奥にある応接室に通された。応接室も玄関同様豪華な作りで、かつ綺麗にされている。ここにもやはり美術品らしきものが幾つも飾られている。二人は案内されて、ふかふかのソファに座る。
クラクスは興味深く部屋の中を見回していた。
「あまりキョロキョロするな」。
マイヤーはクラクスに落ち着くように言う。
しばらく待つと事件当日に給仕係をやっていた召使いのアデーレ・ヴェーベルンが応接室にやって来た。彼女は小柄でぽっちゃりした体形で、青い目、金髪を肩辺りの長さで切り揃えた若い女性だ。
それと一緒に執事がお茶を運んで二人の前のテーブルの上に置いた。そして、執事は頭を下げて部屋を出た。
アデーレが二人の正面のテーブルの反対側の椅子に座った。
「こんにちは。私は先日のハーラルトさんの殺害事件を調査しているエーベル・マイヤーとオットー・クラクスです」。
彼女は緊張しているのか小声で話す。
「お二人は警察の方?」
アデーレは、うつむき加減で尋ねた。
「いえ、私達は軍の者です」。
「軍?」
「そうです、今回の案件は軍の機密情報に関係している可能性があって、それで私達が捜査をしております」。
「そうですか」。
彼女は一層、小声で話す。
「では、事件当日のことについて伺います。ハーラルトさんにグラスを渡したのは誰かわかりますか?」。
「わかりません。誰かほかの給仕係だと思います」。
「ハーラルトさんが倒れた時、どうしていましたか?」
「私は他の給仕係と一緒にお酒を参加者に渡していました。すると突然誰かの叫ぶ声が聞こえて、会場の真ん中あたりに人が集まりました。誰かが、 “医者を呼べ” と叫んでいました。そして、すぐに参加者の一人がハーラルト様が倒れたと教えてくれました。それを聞いて私はすぐにハーラルト様の方に向かいました。他の参加者の方が救護活動をしておりましたが、しばらくして、お医者様が会場に着いた時はもう手遅れだと」。
「なるほど」。
マイヤーは顎に手を当てて何かを考えているようだ。
「ところで、会場で怪しい人物は見かけませんでしたか?」
「いいえ」。
クラクスが追加で質問をする。
「仲の悪い他の旧貴族などおりませんでしたか?」
「それは、わかりません」。
「ハーラルトさんはどんな方でした?」
「仕事熱心で屋敷を開けることが多かったです」。
「貿易関係の仕事ですね」。
「そうです」。
「仕事上でトラブルがあったという話は聞きませんでしたか?」
「いいえ。私達召使いには仕事の話は、ほとんどしませんでしたから、もし、トラブルがあったとしても、わかりません」。
「わかりました。ありがとうございます」。
クラクスはマイヤーに質問はもうないと目で合図した。それを確認してクラクスはアデーテに言う。
「もう結構です、執事のフリッツさんを呼んでください」。
アデーテは立ち上がると会釈して部屋を出て行った。
それを確認すると、マイヤーはクラクスに話しかけた。
「確かに、仕事関係のトラブルがあったかもしれないね」。
「それに旧貴族の仲間同士の仲が良いとは限りません」。
しばらくして執事が部屋に来た。彼を見てマイヤーが話しかけた。
「ベットリッヒさん。ハーラルトさんの仕事関係については何かご存知ですか?」
「いいえ。屋敷ではお仕事の話はされませんでしたので」。
「そうですか」。
「なにか?」
「仕事のトラブルで殺害された可能性も視野に入れています。あとは他の旧貴族たちの関係は良好だったのでしょうか?」。
「特に仲が悪い方がおるとは聞いておりませんでした」。
「ハーラルトさんを殺害するようなや人物やその動機に心当たりはありますか?」
「いえ。何かトラブルがあったという話は全然聞いておりません」。
「そうですか」。
マイヤーはうつむいて少し考えた。
手掛かりが全く見つからない。捜査の方法を考えた方が良いのかもしれない。そもそも我々には無理なのだろうか。警部にもう一度アドバイスをもらうのもいいだろう。
マイヤーとクラクスは立ち上がって敬礼した。
「では、今日のところはこれで失礼します」。
マイヤーとクラクスは屋敷を後にした。
二人は、目的のヴェールテ家の屋敷の前に到着した。柵の向こう側には、よく手入れされた広い庭が見える。二人は柵の門を開け中に入り、庭を抜けて屋敷の大きな門扉の前に立ちノックをした。
中から出てきたのは、顔には皺が目立つ高齢の白髪の男性だった。しかし、顔の見た目の年齢の割には背が高く背筋もピンとしている。黒い服を着て身なりが整っており、おそらく彼は執事だろう。
彼は二人をそれぞれ見てから尋ねる。
「何か御用ですか?」
「我々は軍の者です。先日のハーラルトさんの殺害事件について調査しております」。
「軍の方ですか? なぜ軍が事件の捜査を?」。
「軍の機密情報と関連している可能性があり、事件を警察から我々が引き継ぎました」。
マイヤーはとっさに適当な嘘をついた。
「機密情報!?」
男性は少々驚いたようだが、この場は屋敷の中に招き入れてくれた。玄関も広く、掃除が行き届いているのであろう、とても綺麗にされている。壁には絵画が掲げられ。彫刻や壺など美術品らしきものも並んでいる。
男性は自己紹介をする。
「失礼しました。私は執事のフリッツ・ベットリッヒです」。
「私はエーベル・マイヤー、こちらはオットー・クラクスです」。
二人は敬礼をした。
「軍ということは帝国の方と思いましたが、お名前からすると共和国の方ですね」。
「そうです。正確に言うと我々は軍に雇われている傭兵部隊です」。
「傭兵部隊の噂は伺ったことがあります。傭兵部隊の方とは初めてお会いしました」。
そういって執事は二人の着ている制服を一瞥した。傭兵部隊の制服は帝国軍の者とは少々デザインが違う、それが珍しかったのだろう。
マイヤーは微笑んで本題に入った。
「では、早速ですが、ハーラルトさんが殺害された日にパーティー会場で給仕係をしていた、アデーレ・ヴェーベルンさんはおられますか? お話を伺いたいと思っております」。
「おります。お呼びいたします。こちらでお待ちください」。
マイヤーとクラクスの二人は執事に連れられて、屋敷一階の奥にある応接室に通された。応接室も玄関同様豪華な作りで、かつ綺麗にされている。ここにもやはり美術品らしきものが幾つも飾られている。二人は案内されて、ふかふかのソファに座る。
クラクスは興味深く部屋の中を見回していた。
「あまりキョロキョロするな」。
マイヤーはクラクスに落ち着くように言う。
しばらく待つと事件当日に給仕係をやっていた召使いのアデーレ・ヴェーベルンが応接室にやって来た。彼女は小柄でぽっちゃりした体形で、青い目、金髪を肩辺りの長さで切り揃えた若い女性だ。
それと一緒に執事がお茶を運んで二人の前のテーブルの上に置いた。そして、執事は頭を下げて部屋を出た。
アデーレが二人の正面のテーブルの反対側の椅子に座った。
「こんにちは。私は先日のハーラルトさんの殺害事件を調査しているエーベル・マイヤーとオットー・クラクスです」。
彼女は緊張しているのか小声で話す。
「お二人は警察の方?」
アデーレは、うつむき加減で尋ねた。
「いえ、私達は軍の者です」。
「軍?」
「そうです、今回の案件は軍の機密情報に関係している可能性があって、それで私達が捜査をしております」。
「そうですか」。
彼女は一層、小声で話す。
「では、事件当日のことについて伺います。ハーラルトさんにグラスを渡したのは誰かわかりますか?」。
「わかりません。誰かほかの給仕係だと思います」。
「ハーラルトさんが倒れた時、どうしていましたか?」
「私は他の給仕係と一緒にお酒を参加者に渡していました。すると突然誰かの叫ぶ声が聞こえて、会場の真ん中あたりに人が集まりました。誰かが、 “医者を呼べ” と叫んでいました。そして、すぐに参加者の一人がハーラルト様が倒れたと教えてくれました。それを聞いて私はすぐにハーラルト様の方に向かいました。他の参加者の方が救護活動をしておりましたが、しばらくして、お医者様が会場に着いた時はもう手遅れだと」。
「なるほど」。
マイヤーは顎に手を当てて何かを考えているようだ。
「ところで、会場で怪しい人物は見かけませんでしたか?」
「いいえ」。
クラクスが追加で質問をする。
「仲の悪い他の旧貴族などおりませんでしたか?」
「それは、わかりません」。
「ハーラルトさんはどんな方でした?」
「仕事熱心で屋敷を開けることが多かったです」。
「貿易関係の仕事ですね」。
「そうです」。
「仕事上でトラブルがあったという話は聞きませんでしたか?」
「いいえ。私達召使いには仕事の話は、ほとんどしませんでしたから、もし、トラブルがあったとしても、わかりません」。
「わかりました。ありがとうございます」。
クラクスはマイヤーに質問はもうないと目で合図した。それを確認してクラクスはアデーテに言う。
「もう結構です、執事のフリッツさんを呼んでください」。
アデーテは立ち上がると会釈して部屋を出て行った。
それを確認すると、マイヤーはクラクスに話しかけた。
「確かに、仕事関係のトラブルがあったかもしれないね」。
「それに旧貴族の仲間同士の仲が良いとは限りません」。
しばらくして執事が部屋に来た。彼を見てマイヤーが話しかけた。
「ベットリッヒさん。ハーラルトさんの仕事関係については何かご存知ですか?」
「いいえ。屋敷ではお仕事の話はされませんでしたので」。
「そうですか」。
「なにか?」
「仕事のトラブルで殺害された可能性も視野に入れています。あとは他の旧貴族たちの関係は良好だったのでしょうか?」。
「特に仲が悪い方がおるとは聞いておりませんでした」。
「ハーラルトさんを殺害するようなや人物やその動機に心当たりはありますか?」
「いえ。何かトラブルがあったという話は全然聞いておりません」。
「そうですか」。
マイヤーはうつむいて少し考えた。
手掛かりが全く見つからない。捜査の方法を考えた方が良いのかもしれない。そもそも我々には無理なのだろうか。警部にもう一度アドバイスをもらうのもいいだろう。
マイヤーとクラクスは立ち上がって敬礼した。
「では、今日のところはこれで失礼します」。
マイヤーとクラクスは屋敷を後にした。
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