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徹底抗戦派の反乱
第8話・医務室
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私とエーベルが城に戻ろうとした頃、時刻はもう夜となり、辺りは暗くなりつつあった。
私達は、先ほど繋げた馬のところへ行った。しかし、馬は居なかった。ブロンベルクの部隊が回収したのだろうか。仕方ないので徒歩で城まで向かうことにした。
「大丈夫か?」
エーベルが私の火傷に気が付いて、心配そうに声を掛けてきた。
「大丈夫だ。おそらく、さほど酷い火傷でないみたいだ」。
我々は、一時間程度歩いて城に到着した。
「私は医務室で火傷を見てもらうよ」。
「付き合おうか?」
「いや、大丈夫だ。先に兵舎で休んでくれ」。
「わかった」。
エーベルは手を振って兵舎に向かった。
私は軍の医務室へ向かう。
そう言えば、軍は解体されているが、軍の医務室には誰かいるのだろうか?もし、だれも居なければ勝手に薬などを使わせてもらおう。
私は医療室のあるところまでやって来て、医務室のドアをノックした。
「どうぞ」。
中から女性の声が聞こえた。
私は扉を開け中に入った。
すると軍服の上に白衣を羽織った、すらりと長身で色白の見慣れない若い女性が立っていた。長い黒髪を束ねてアップにしている。
「どうしました?」
「顔と手を火傷をしましたので薬が欲しくて」。
女性は私に近づくと、特徴的な大きな目で私の顔を覗き込んだ。
「なるほど。軽い火傷ね。薬を塗ってあげるわ。そこに座って」。
そう言うと椅子を指さした後、棚の薬を端から確認している。どうやら薬を探しているようだ。私は椅子に座って待った。
「私、ここは今日来たばかりなので、薬がどこにあるのか…」。
「今日?今までいた軍医は?」
「私は帝国軍の軍医よ。命令で、一足早く来たのよ。今までいた共和国軍の医者たちは他の兵士と同じで、上級士官並みの軍医は追放よ。残った他の医師や看護師達は修練所か街に向かったわ。さっきの反乱兵との戦いで負傷者がたくさん出ているみたいだから。先日のグロースアーテッヒ川の戦いの負傷者も街の集会所などを臨時の病院として使っているから、そこにも分散しているから人出が全く無くて」。
彼女は棚から薬の瓶を取り出した。
「あったわ」。
薬瓶の蓋を開けながら話を続けた。
「私はアリョーナ・サービンコワ。当面はここを仕切ることになりそうだから、よろしく」。
軍医も帝国軍の者が来るのか。よく考えれば当然のことか。しかし、彼女は若いな。それなのに、これからここを仕切るとか大丈夫なのだろうか?
彼女は瓶の中に指を突っ込んで塗り薬を搔き出した。そして、私に近づいて顔に塗り始めた。
「私はユルゲン・クリーガーです。こちらこそ、よろしく」。
「あなた、ずぶ濡れね」。
彼女は私の服を見て言った。
「海に飛び込んだので」。
「早く着替えた方が良いわね」。
「そうします」。
「どこで火傷したの?」
「船が火災になったので、そこで」。
「船?」
「港で反乱兵と戦いになって」。
「そう。他にケガは無いの?」。
「ケガは大丈夫なようです」。
「それは良かった」。
彼女は私の手にも薬を塗り終わると言った。
「これでいいわ」。
「ありがとうございました」。
私は立ち上がると、礼を言って扉に手を掛けた。
「また明日来て」。
「わかりました」。
「また、けが人がたくさんやってくるだろうから、忙しくなりそうね」。
サービンコワは、そう独り言をつぶやく。
私は兵舎に戻り、海水で濡れた服を脱いで新しい肌着に着替えた。
そして、ベッドに横になった。
隣のベッドにはエーベルが横になっている。時間はまだ早いが、もう寝息を立てて眠っていた。他の士官達もじきに戻ってくるだろう。
私も疲れた、もう休ませてもらうことにしよう。
翌日、反乱とその鎮圧の経緯について帝国軍の士官による聴取があった。
私達は、先ほど繋げた馬のところへ行った。しかし、馬は居なかった。ブロンベルクの部隊が回収したのだろうか。仕方ないので徒歩で城まで向かうことにした。
「大丈夫か?」
エーベルが私の火傷に気が付いて、心配そうに声を掛けてきた。
「大丈夫だ。おそらく、さほど酷い火傷でないみたいだ」。
我々は、一時間程度歩いて城に到着した。
「私は医務室で火傷を見てもらうよ」。
「付き合おうか?」
「いや、大丈夫だ。先に兵舎で休んでくれ」。
「わかった」。
エーベルは手を振って兵舎に向かった。
私は軍の医務室へ向かう。
そう言えば、軍は解体されているが、軍の医務室には誰かいるのだろうか?もし、だれも居なければ勝手に薬などを使わせてもらおう。
私は医療室のあるところまでやって来て、医務室のドアをノックした。
「どうぞ」。
中から女性の声が聞こえた。
私は扉を開け中に入った。
すると軍服の上に白衣を羽織った、すらりと長身で色白の見慣れない若い女性が立っていた。長い黒髪を束ねてアップにしている。
「どうしました?」
「顔と手を火傷をしましたので薬が欲しくて」。
女性は私に近づくと、特徴的な大きな目で私の顔を覗き込んだ。
「なるほど。軽い火傷ね。薬を塗ってあげるわ。そこに座って」。
そう言うと椅子を指さした後、棚の薬を端から確認している。どうやら薬を探しているようだ。私は椅子に座って待った。
「私、ここは今日来たばかりなので、薬がどこにあるのか…」。
「今日?今までいた軍医は?」
「私は帝国軍の軍医よ。命令で、一足早く来たのよ。今までいた共和国軍の医者たちは他の兵士と同じで、上級士官並みの軍医は追放よ。残った他の医師や看護師達は修練所か街に向かったわ。さっきの反乱兵との戦いで負傷者がたくさん出ているみたいだから。先日のグロースアーテッヒ川の戦いの負傷者も街の集会所などを臨時の病院として使っているから、そこにも分散しているから人出が全く無くて」。
彼女は棚から薬の瓶を取り出した。
「あったわ」。
薬瓶の蓋を開けながら話を続けた。
「私はアリョーナ・サービンコワ。当面はここを仕切ることになりそうだから、よろしく」。
軍医も帝国軍の者が来るのか。よく考えれば当然のことか。しかし、彼女は若いな。それなのに、これからここを仕切るとか大丈夫なのだろうか?
彼女は瓶の中に指を突っ込んで塗り薬を搔き出した。そして、私に近づいて顔に塗り始めた。
「私はユルゲン・クリーガーです。こちらこそ、よろしく」。
「あなた、ずぶ濡れね」。
彼女は私の服を見て言った。
「海に飛び込んだので」。
「早く着替えた方が良いわね」。
「そうします」。
「どこで火傷したの?」
「船が火災になったので、そこで」。
「船?」
「港で反乱兵と戦いになって」。
「そう。他にケガは無いの?」。
「ケガは大丈夫なようです」。
「それは良かった」。
彼女は私の手にも薬を塗り終わると言った。
「これでいいわ」。
「ありがとうございました」。
私は立ち上がると、礼を言って扉に手を掛けた。
「また明日来て」。
「わかりました」。
「また、けが人がたくさんやってくるだろうから、忙しくなりそうね」。
サービンコワは、そう独り言をつぶやく。
私は兵舎に戻り、海水で濡れた服を脱いで新しい肌着に着替えた。
そして、ベッドに横になった。
隣のベッドにはエーベルが横になっている。時間はまだ早いが、もう寝息を立てて眠っていた。他の士官達もじきに戻ってくるだろう。
私も疲れた、もう休ませてもらうことにしよう。
翌日、反乱とその鎮圧の経緯について帝国軍の士官による聴取があった。
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