雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

谷島修一

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混乱の修学旅行編

接待する会~その2

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「イエーイ!」
 女子たちが万歳して、奇声をあげた。

 おおお、何が始まるんだ…?
 僕はちょっと身構えた。
 ひょっとして、エロイベントか?

「じゃあ、歌いまーす!」
 波多野さんが、そう言ってデンモクを手に目にもとまらぬスピードで入力して、マイクを取った。

 なんだ、エロイベントでないのか…?
 ちょっと残念。

 そして、何か曲を歌い出した。
 僕は、あまり音楽を聴かないので、知らない歌だった。

 次に、尼子さん、吉川さんが歌う。
 一巡すると、再び波多野さんが歌い始めた。
 誰かが歌っている間は、僕以外の他のメンツは、手拍子や合いの手をいれて盛り上がっている。
 二巡目からは、六角君まで歌い始めた。

 これが、陽キャの集まりというやつか。
 騒がしいのは苦手なので、ちょっと辛い。

「ねえねえ! 武田君はどんな曲が好きなの?」
 吉川さんが尋ねてきた。

「ええと…。あまり曲をしらないのだけど…。昔のアニソンとか…」
 僕は答える。

「じゃあ、武田君を喜ばせるために、昔のアニソン入れまーす!」
 吉川さんが言うと、さっそくアニソンを歌い出した。

 しばらく、みんなでアニソン大会となった。
 僕でも知っている曲がいくつかあったので、少し楽しめた。
「武田君も歌いなよ!」
 波多野さんが言ってきた。

 ここは拒否できそうな雰囲気でもないので、とりあえず1曲歌った。

 こんな調子でカラオケボックスで2時間が過ぎた。

「じゃあ、そろそろお開きにするか」
 六角君が言った。

「ざんねーん」と尼子さん。
「しょうがないね」と吉川さん。
「また来ようよ!」と波多野さん。

 やっと終わった。
 やはり、こういうのは苦手だ。

「武田君、LINE交換しようよ!」
 波多野さんが提案してきた。
 尼子さんと吉川さんも交換したいというので、IDを交換した。

 LINEの画面を眺める。
 これまでで、女子のIDがだいぶ増えたな…。
 修学旅行で同室の男子とも交換したので、男子もそれなりにIDがある。
 誰ともあまりやり取りしていない。
 たまに、やり取りしているのは歴史研のメンツと、雪乃、真帆ぐらい。

「じゃあ、武田君を接待する会は今日は終了!」
 六角君が言うと、皆で部屋を出た。

 カラオケボックスの料金は僕以外の4人が払ってくれた。
 ありがたや。
 でも、あまり楽しめなかったな。
 今度、会を開いてくれることがあったら、僕が楽しめる内容を提案してみよう。
 多分、もう、開かれることはないと思うけど。

 そんなこんなで、僕らはカラオケボックス前で解散となった。

 僕は徒歩で、自宅へと向かう。
 しばらく歩いていると、聞きなれた声で背後から名前を呼ばれた。

「武田先輩!」

 振り向くと、そこにはTOS団の団長の西園寺さんと団員の女子数名。

「合コンだったんですか?」
 西園寺さんは尋ねてきた。

「いや。違う」
 さっきのは、”合コン” ではない、僕が”接待される会”だ。

「でも、カラオケを歌って、楽しそうでしたよね?」

「いや、別に…。って、なんで、知ってるの?!」

「私たち、カラオケボックスの隣の部屋にいましたから」

「はあ?! なんで?!」

「それは、武田先輩の研究のためですよ!」

「またつけてたのかよ?」

「はい!」

「怖…」

「と、言いつつ、私たちもカラオケで楽しんでました」

「あ、そう…、よかったね」

「今後、私たちともカラオケに行ってください!」

「うーん…。あまり騒がしいのは好きじゃないんだよ」

「そうなんですか?」

「僕の事、研究してるんだろ? 覚えておいてくれよ」

「はい。でも、静かな合コンって、どういうのですかね? お茶会とか?」

「ああ…。悪くないね」
 僕は、以前見た宇喜多姉の着物姿を思い出して答えた。

「わかりました! 武田先輩が楽しめるお茶会を設定します!」

「あ、そう…」
 西園寺さん、お茶とかできるの?
 まあいいや、早く帰りたいから、それには答えずにその場を立ち去ろうとする。
「じゃあ、もう、遅いから帰るよ」

「ちょっと待ってください!」
 西園寺さんは僕の腕をつかんで引き留めた。

「なに?」

「武田先輩は、来月の生徒会長選挙に関わっているんでしょ?」

 そう言えば、もうすぐ生徒会長選挙だな。
 中間試験や修学旅行とかがあったから、ちょっとその話題とは距離があった。
 雪乃は、選挙運動してるんだろうか?
「関わっていると言えば、関わっているな」

「副会長候補だと聞きました」

「誰に?」

「支倉君です」

 新聞部の支倉君なら、その話は知ってるだろう。
 生徒会長選挙の対策会議にも参加していたからな。

「でも、僕が副会長をやるのはまだ確定じゃあないよ」
 雪乃が生徒会長に当選したら、多分、副会長をやらされる羽目になるんだろうな。
 何か、上手く逃れる方法はないものか…。

「私たちも、選挙活動をお手伝いします!」
 西園寺さんは、ズイっと僕に近づいて言った。

「そ、そうか…。雪乃が喜ぶよ」

「今度、選挙の会議があったら、参加させてください!」

「わかった、雪乃に言っておく」
 僕は言って、そこで会話は終わり、それぞれ帰路に就いた。
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