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謎めいた指令
レストラン “ストラナ・ザームカ”
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大陸歴1658年3月21日・帝国首都アリーグラード城内
翌日。この日も遊撃部隊は城内での訓練を行っていた。
それも終わり、夕刻、今回は私がヴァーシャを夕食に誘った。
私が昨年首都を訪問した時、二度ほど入ったお気に入りのレストラン“ストラナ・ザームカ”だ。いまさらだが、城の中でヴァーシャと何度も会っていると人目に付くので、今回はこの店での待ち合わせとした。さらに店の奥の個室を予約したので、店内でも人の目を気にすることはない。
私は一足早く店に到着し、ヴァーシャの到着を待った。
しばらくすると、ヴァーシャがウエイトレスに連れられて部屋に入ってきた。
ヴァーシャはウエイトレスに礼を言うと、私に向き直った。
「こんばんは。今日は誘っていただいて嬉しいわ」。
「私の方も招きに応じていただいて嬉しいです。ありがとうございます」。
「ところで、どうしてこの店にしたの?」
「昨年、首都を訪問した時に二度ばかり入ったことがあって、料理も雰囲気も良くて気に入ってしまいました」。
「そうですか。私も以前何度か入ったことがあります。良いお店ですね」。
私は椅子を引いてヴァーシャを座らせた。そして、私も席に着いた。
タイミングよくウエイターがワインクーラーをワゴンに運んで入ってきた。私はウエイターに合図をすると、ワインクーラーからワインの瓶を取り出しコルクを開けた。
そして、卓上に置いてあるグラスに丁寧に注ぐ。
私とヴァーシャはグラスで乾杯をした後、運ばれてくる料理を談笑しながら食べた。
「両親にあなたのことを話したら、会ってみたいと言っていたよ」。
それを聞いて少々驚いて答えた。
「お会いするのは構いません、しかし、帝国軍の上級士官は皆、貴族出身と聞きました」。
「そうですね、ほとんどがそうね。私のアクーニン家も一応貴族で、一族は軍人が多い。軍人以外もいます。それがどうかしました?」。
「私は共和国の平民の出身です。さらに子供の頃、両親を亡くして孤児院育ちです。いまさらですが、身分の違いは大丈夫なのでしょうか」。
「そんなこと」。そう言って、ヴァーシャは笑って見せた。「五十年前ならともかく、今はそんなことを気にする人はさほど多くないわ。私の両親も然り。しかも、あなたは“帝国の英雄”。両親は“是非に”、と言っているわ。気にすることはないわよ」。
「それは良かったです」。私は安堵のため息をついた。「そう言えば、お父様も軍関係者でしたよね」。
「ええ、文官だけど。城内で調達の仕事をしているわ」。
「そうなんですね。そういえば、ヴァーシャ自身はどこで剣の腕を磨いたんですか」。
「はじめは、子供の頃、たまたま知り合いになった剣の指導者がきっかけで、その後、軍のアカデミーに入学してからは、そこの講師に教わったわ」。
「いい人に教わったんですね」。
「ええ。ユーリの方は、師が居たのよね?」
「そうです。師に孤児院で拾ってもらって、父親代わりでした。そして剣でも“深蒼の騎士”になるために鍛えられました」。
昨年の“チューリン事件”の際に、師のセバスティアン・ウォルターは魔術師のアーランドソンに殺害されていることが分ったのだ。
私は師との日々を少し思い出した。
「大丈夫?」
私が師のことを思い出して、ぼーっとしてしまったのを見て、ヴァーシャが心配して声を掛けたらしい。
「大丈夫です。ちょっと師のことを思い出していました」。
ヴァーシャにも師が殺害されていたことを話したことがあったので、彼女はそれ以上この話には触れずにいた。
我々はその後、食事をしながら将来について話し合って時間を過ごした。
翌日。この日も遊撃部隊は城内での訓練を行っていた。
それも終わり、夕刻、今回は私がヴァーシャを夕食に誘った。
私が昨年首都を訪問した時、二度ほど入ったお気に入りのレストラン“ストラナ・ザームカ”だ。いまさらだが、城の中でヴァーシャと何度も会っていると人目に付くので、今回はこの店での待ち合わせとした。さらに店の奥の個室を予約したので、店内でも人の目を気にすることはない。
私は一足早く店に到着し、ヴァーシャの到着を待った。
しばらくすると、ヴァーシャがウエイトレスに連れられて部屋に入ってきた。
ヴァーシャはウエイトレスに礼を言うと、私に向き直った。
「こんばんは。今日は誘っていただいて嬉しいわ」。
「私の方も招きに応じていただいて嬉しいです。ありがとうございます」。
「ところで、どうしてこの店にしたの?」
「昨年、首都を訪問した時に二度ばかり入ったことがあって、料理も雰囲気も良くて気に入ってしまいました」。
「そうですか。私も以前何度か入ったことがあります。良いお店ですね」。
私は椅子を引いてヴァーシャを座らせた。そして、私も席に着いた。
タイミングよくウエイターがワインクーラーをワゴンに運んで入ってきた。私はウエイターに合図をすると、ワインクーラーからワインの瓶を取り出しコルクを開けた。
そして、卓上に置いてあるグラスに丁寧に注ぐ。
私とヴァーシャはグラスで乾杯をした後、運ばれてくる料理を談笑しながら食べた。
「両親にあなたのことを話したら、会ってみたいと言っていたよ」。
それを聞いて少々驚いて答えた。
「お会いするのは構いません、しかし、帝国軍の上級士官は皆、貴族出身と聞きました」。
「そうですね、ほとんどがそうね。私のアクーニン家も一応貴族で、一族は軍人が多い。軍人以外もいます。それがどうかしました?」。
「私は共和国の平民の出身です。さらに子供の頃、両親を亡くして孤児院育ちです。いまさらですが、身分の違いは大丈夫なのでしょうか」。
「そんなこと」。そう言って、ヴァーシャは笑って見せた。「五十年前ならともかく、今はそんなことを気にする人はさほど多くないわ。私の両親も然り。しかも、あなたは“帝国の英雄”。両親は“是非に”、と言っているわ。気にすることはないわよ」。
「それは良かったです」。私は安堵のため息をついた。「そう言えば、お父様も軍関係者でしたよね」。
「ええ、文官だけど。城内で調達の仕事をしているわ」。
「そうなんですね。そういえば、ヴァーシャ自身はどこで剣の腕を磨いたんですか」。
「はじめは、子供の頃、たまたま知り合いになった剣の指導者がきっかけで、その後、軍のアカデミーに入学してからは、そこの講師に教わったわ」。
「いい人に教わったんですね」。
「ええ。ユーリの方は、師が居たのよね?」
「そうです。師に孤児院で拾ってもらって、父親代わりでした。そして剣でも“深蒼の騎士”になるために鍛えられました」。
昨年の“チューリン事件”の際に、師のセバスティアン・ウォルターは魔術師のアーランドソンに殺害されていることが分ったのだ。
私は師との日々を少し思い出した。
「大丈夫?」
私が師のことを思い出して、ぼーっとしてしまったのを見て、ヴァーシャが心配して声を掛けたらしい。
「大丈夫です。ちょっと師のことを思い出していました」。
ヴァーシャにも師が殺害されていたことを話したことがあったので、彼女はそれ以上この話には触れずにいた。
我々はその後、食事をしながら将来について話し合って時間を過ごした。
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