上 下
12 / 20
第1章

ギルドへ出向いたけど、すごく目立った

しおりを挟む
次の日、私は医師の診断で問題なしと判断されて無事退院となった。
もとの世界で看護師をしていた私としてはそんな問診で大丈夫?というような内容だったけど、退院させてくれるのならいいだろう。

私は病院でガラムさん達を待っていることにした。
今、街に出てもしょうがないし。道、わかんないし。

片付けをする看護師さん達の邪魔をしないようにルゥと病室で待っている。

「お、もう元気そうだな」

しばらくすると、男の人が入ってきて私に声をかけてきた。
はて…?出会ったことがあるだろうか?

「迎えにきたから、もう動けるならいこうぜ」

妙に馴れ馴れしい…誰だろう?
とりあえず、私は首を横に振る。

「えっと…知らない人には着いて行くなと言われてるので」

そう言うと、男の人はガクッとリアクションをとった。
ベタだなぁ。

「俺だよ俺!カイルだよ!」

カイル…あー…昨日来た時も街に向かう時も鎧を着てたから、顔がよくわかんなかった。

「ごめんなさい。鎧着てたからわかんなかった」

「ご飯の時は兜とってたじゃんか!」

「でも、よくよく見ると顔はいいんだね」

「そ、そうか?」

私がそう言うとちょっと照れるカイル。
ちょろい。

私はカイルについてギルドへ向かう。
はじめてのこの世界の街は、なんというかフランスとかイギリスとかの街を彷彿とさせる、石畳と木組みの街並みだった。

あっちこっち見ながらルゥを抱っこして歩いていると、カイルに急に手を握られた。

「ふらふらしてると転ぶぞ」

「あ、ごめんなさい」

そのまま私はカイルに手を引かれてギルドまで案内された。
でもねカイル、軽々しく女の子の手を握っちゃダメだよ。
思わぬトラブルに巻き込まれちゃうこともあるからね。

「ここがこの街、メインフォートのギルドだ。これから何回か来ることもあるかもしれないから、覚えておくといいぞ」

「うん」

そう言ってカイルがギルドの中へ入ると、急にカイルの顔面に誰かの拳がめり込んで、そのまま吹っ飛んだ。

「あんた…なに軽々しくモモちゃんの手を握ってんのよ!」

よくよく見るとエルさんだった。
エルさんは私を抱き寄せると頭を撫でる。

「モモちゃんごめんねぇ。あのケダモノになにもされなかった?」

「い、いえ。特になにも…」

というか、あそこまで人を殴り飛ばせるエルさんのが怖い。

「お前…なにすんだ…」

鼻を押さえたカイルが再びギルドに入ってくる。

「うっさいわね。女の子の手を軽々しく握ってんじゃないわよ」

ほーら、思わぬトラブルに巻き込まれた。
ん?でも、なんで手を繋いでいたことがわかったんだろう?
ギルドの前について手を離したはずなのに。

「エルさん、どうして私が手を繋いできたことわかったの?」

「私の占い魔法で見たからよ?」

そんな当たり前でしょ?みたいに言われても。
占い魔法とかあるんだ。ていうか、その魔力持ってる人しか占いできないってこと?
あと、そろそろ離してほしい。
その柔らかい膨らみ2つが当たって苦しい。

「モモさん。騒がしくてごめんなさい。さ、こっちにギルマスがいるから」

カイルと揉めているエルさんの隙を見て、アイシアさんのところまで抜け出して行く。
勢いあまってアイシアさん半分ぶつかりに行くようになったが、なんなくキャッチしてもらった。

「ごめんなさい…」

「いいえ、問題ありません」

アイシアさんが笑顔で答えると、私の手を握る。

「アイシアさん、別に手は大丈夫です」

「え?あ、あぁそうですね。ごめんなさい」

アイシアさんはパッと手を離してフフフと笑った。
何かあっただろうか?
まぁ、いっか。

ふと、周りを見るとすごく視線を集めていることに気がついた。
これだけ騒いでいればそうか…。そもそもこんな歳でギルドにいる方が変なのだろうか。
なんだか怖くなってやっぱりアイシアさんに近づくことにした。
アイシアさんは私が近づいて行くのを見て、ギルドマスターさんの部屋に向かって歩き出した。
その時も周りから注目を浴びる私。
何かしたのだろうか?
なんだか、悪いことをしていないのに授業の途中で呼び出された気分だ。

そんなモヤモヤした気持ちのまま、おそらくギルドマスターさんの部屋に到着してしまい、私の気持ちを置き去りにしてアイシアさんがノックをした。
しおりを挟む

処理中です...