魔法の数字

初昔 茶ノ介

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2章:学園生活

もう1人の特殊

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「おっと、自己紹介してなかったにゃ、クレア・キャンディハートっていうにゃ!好きなことは楽しいこと!嫌いなことは勉強にゃ!よろしくお願いするにゃー」

突然の自己紹介よりも特殊属性もちということに全員が固まっていた。

「え?あなた特殊属性なの?」

最初の沈黙を破ったのはハナちゃんだった。

「そうにゃー、いやぁ初めてクレア以外の特殊属性を持ってる人に会ったからちょっと気分が上昇中にゃ!」

「あなた…は…」

「んー?リンちゃんリンちゃん、『あなた』じゃなくてク・レ・アって呼んでほしいにゃ!リンちゃんとはこれから仲良くしていきたいんにゃー!」

「う、うん…クレア…ちゃん…」

私が名前を呼ぶとクレアちゃんが下を向いてぷるぷると震えていた。

「か、可愛いにゃー!」

「きゃっ」

そう言って私に抱きついてくるクレアちゃん。

「にゃあ!小さい体にさらさらの髪!しかもあんな魔法も撃てるなんて最高にゃ!」

「ク、クレアちゃ……くすぐった…」

クレアちゃんは私の体をあちこちまさぐってくるのですごくくすぐったい。
それを見ていたレインがクレアちゃんを私から離した。

「リン様から離れなさい。困っているでしょう」

「にゃー?ただのじゃれ合いにゃのにー」

「リン、大丈夫?」

「う、うん…くすぐったかった…だけ」

クレアちゃんは手をわきわきさせながらがっくりしていた。

「さっきからいろいろ言ってるけどお前は何位だったんだよ?」

ゴウくんがクレアちゃんに順位を聞くとクレアちゃんがビシッとゴウくんを指さした。

「聞いて驚くにゃ!19位にゃ!」

「「「………」」」

しばらくの沈黙。

「えっと…1クラス…何人…?」

「たしか…20人ですね」

「下から2番目じゃねーか!」

「いや、あんた最下位でしょ」

ゴウくんの言葉にすかさずツッコミを入れるハナちゃん。

「そうにゃー、ほんとは20位を狙ってたのにクレアの予想を超えてくる的外れ魔法があったせいで19位にゃー」

「え…?」

狙った…?20位を…?

「はぁ?じゃああんたはわざと20位になろうとしたってこと?」

「そうにゃ!」

ハナちゃんが聞くとクレアちゃんはコクコクとうなづいて答えた。

「なんでそんなことする必要がある?普通は1位を目指すだろ?」

「えーだってにゃー…」

クロくんが聞くとクレアちゃんはクルッとクロくんの方を向いて答えた。

「1位になるなんて簡単にゃん?」

1位は簡単。その言葉はこの場にいた全員を凍らせた。
クレアちゃんの言葉は適当ではなく確かな自信があって言っているとわかったから。
1位なんて取れて当たり前。その上で狙って1組のぎりぎりを取るという宣言が全員を固めた。

「あんた、リンのあの魔法をみてすごいって言ってたのにそれでも1位は簡単っていうの?」

「もちろんにゃ!なぜなら…」

またしてもクレアちゃんはビシッとポーズを決めて言った。
このポーズ好きなのかな…?

「魔法っていうのはいかに相手を早く倒せるかというのが重要だからにゃ」

クレアちゃんの言葉には確かな重みと相手を倒すというとても私達と同い年とは思えない発想があった。
魔法は便利なもの。現代の生活に利用されている技術であり、その根本にあるのは…人を殺すための技術であるということ。

「そんなこと当然でしょう?リン様なら魔法展開速度だって普通よりも全然…」

「わからない人だにゃー…試してみたほうが早いかにゃ?」

そう言ってクレアちゃんは魔筆を取り出し、それを見てレインもすぐに魔筆を取り出そうとした。

「遅いにゃ」

レインが一文字目を書こうとした瞬間にはもうクレアちゃんがレインの後ろに立っていた。

「なっ…」

「どんなに強い魔法を使えてもこんなふうにされちゃったらみーんなおしまいにゃん?」

そう言ってクレアちゃんは私に近づいて来てまた抱きつく。

「クレアは自信あるにゃ、仮にリンちゃんと戦うことになっても絶対クレアが先に…リンちゃんを殺せるにゃ…」

私を殺せる。その言葉は私の心に深く突き刺さるような感じがした。
今までに感じたことのない嫌な感じ。
そして嘘でも冗談でもなく、クレアちゃんは本気で言っているということがよくわかった。

「ま、そんなこと絶対しないけどにゃー!にゃはは!驚いた?リンちゃんみたいな可愛い子、クレアが殺すわけないにゃー!むしろお嫁さんにしたいにゃー!」

「クレアちゃん…くすぐったい…」

そう言ってまたクレアちゃんは私の体をまさぐり始めるのだった。
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