魔法の数字

初昔 茶ノ介

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2章:学園生活

犯人は…

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とりあえず、ママとリリスさんと私はヴェルくんの部屋で落ち着くことにした。
まぁ、落ち着きが必要なのは主にリリスさんだけど…。

「それでリリスちゃん。どうしてあなたは犯人がヴェルくんの部屋にくると思ったのかしら」

「そ、それは…」

ママがリリスさんの顔を覗き込んで聞くと、リリスさんは困ったような顔をして、目をキョロキョロとさせた。
なにか隠したいことでもあるのかな…。

「まぁ…言わないならいいのですけど、勝手に男子寮内に入ってたことについては報告させていただきますね。きっとしばらく男子寮に近づけなくなるでしょうけど」

「……!?リーネ様ぁ…お許しくださいませぇ…」

ママの圧力のせいかリリスさんはダラダラと冷や汗を流し、だんだん表情も青ざめていくのがわかった。
そんなリリスさんの様子を見て、ママが手を差し伸べる。

「まぁ、これから先生達に協力して犯人を捕まえたら話は別ですが」

「え…?」

「犯人を捕まえられたら、ここにいたことも協力していたことにできますし、ヴェルくんの状態次第ではどうどうと男子寮に入って、看病もできますね。何しろ、リリスちゃんはライト家、学生とはいえ、その辺の医者よりは治癒魔法の技術は上でしょうし…」

ママがそこまで言うとチラッとリリスさんを見た。
いや、いくらなんでもそんな揺さぶりで話すわけが…。

「どうどうと…看病…ヴェルくんを…」

えぇ!?揺さぶられてるぅー!?

「そうだよー学校終わりに、夕暮れ迫る部屋にヴェルくんと2人きりなんて素敵じゃないですか?」

「わ、わかりましたぁ…でもぉここでの話はぁ…誰にも言わないでほしいのですよぉ…」

うん、しょうがないみたいな雰囲気だけど、顔が赤くなってるよ。リリスさん…。

「実はぁ…私の得意属性はぁ光と風なんですよぉ…」

「え?本当に?」

ママがけっこう驚いていたが、そんなに珍しいことなのだろうか。
クロくんだって闇と雷だし、ヴェルくんは全属性が得意属性だ。そんなに珍しいものとは思えない。
私の様子を察して、ママが理由を教えてくれた。

「リンちゃん、九花の話は前にお母様から聞いたよね?」

「うん」

「九花の一族の中には得意属性のみを極めていくところが多くてね。そういうこともあって得意属性が複数ある人を邪道と罵る人も中にはいるんだよ。うちはそんなのなかったけどね」

なるほど…だから隠しているのか。

「でもそれで…魔法を覚えるのに…影響…ある?」

「特にないわよ?でも、お年を召されたお堅い方々はそういうのにこだわるのよ」

ママが半分嫌味で言った。たしかにママも3色だもんね…。
きっと昔、何かあったのだろうと思う。

「それでぇ…ヴェルくんを探す時にぃ私がよく使う風魔法があってぇ…」

「あ、もしかして『風調べ』ですか?」

「風調べ?」

「あ、そうですぅ…前にリリー様にぃ教えていただきましたぁ」

「なるほど…」

「ママ…」

「ん?あぁ、リンちゃんはわからないわよね。んーまた今度教えてあげるわ。簡単に言うと、その場の音を少し遡って聞くことができる魔法よ」

ママが『96÷24=4』と式をたてて、緑の魔法陣が広がる。

【おい、どうする?あれが見つからないぞ】

どこからともなく男の人の声が聞こえてきて、少しびくっとしてしまった。

【とりあえずこいつを連れて行って、その後探しに戻ればいいだろ。とにかくいくぞ】

そこで音が聞こえなくなった。

「なるほど…たしかにこれならここでまつほうがいいかもしれませんね…でも、リリスちゃん、これでもし犯人がその何かを持ち出した後ならどうするんですか?」

「………はっ、た、たしかにぃ…」

リリスさん…意外と抜けてる人なのかな…。ゴウくんと同じ雰囲気を感じるよ…。

それにしても…これもしかしたら…。

「リンちゃん?」

私は魔筆を取り出して『(x-4)(x-6)=0』と式をたてる。
緑色の魔法陣が先ほどのように広がるが、その魔法陣から壁に光が当たる。
そして壁には縛られたヴェルくんをまさに連れ出そうとしている男子生徒2人の姿が映し出された。


【おい、どうする?あれが見つからないぞ】

【とりあえずこいつを連れて行って、その後探しに戻ればいいだろ。とにかくいくぞ】

そこまで映したところで魔法陣が消えた。

「リンちゃん?今のは…」

「特殊魔法で…時間を遡って…風魔法で声…光魔法で映像を…だした…」

「複数の魔法を同時発動したんですかぁ!?」

私の複合魔法の説明を聞いて、リリスさんが驚いていた。
たしかに複合魔法は私にしか使えないし、他の人からしたら固有魔法と同じくらいの驚きがあるのかもしれない。

「それにしても、さっきの映像が本当ならヴェルくんをさらっていったのは中等部の子たちですね。探していたものが何かはわからないですが、今は置いておきましょう。それに、私はなんとなく犯人に心当たりができました」

「え!?」

ママの言葉に、リリスさんが声を上げた。

「だ、誰ですかぁ?」

「……ランガイ先生です」

ママの口にした名前に、私とリリスさんが言葉を失った。

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