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2章:学園生活
ヴェルの意地
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「あーつまんなかった」
ゴウくんが観客席にあがってきて、のんきに言った。
「あんた、いつの間にあんな魔法覚えたのよ?」
「へっへっへ、すげーだろ?」
「さすがにクレアも初めて見たにゃーこんな感じにゃ?」
クレアちゃんが『5-4=1』と式を立てると、魔法陣がクレアちゃんの左手に展開した後、火でできた猫が出てきた。
「かわいい…」
「ダメよリン。やけどしちゃうわ」
私が触ろうとするとハナちゃんに止められた。
その横でゴウくんが驚いていた。
「お前俺がこれができるようになるのにどんだけ…」
「にゃ?普通にできたにゃ」
「この天然天才が!」
「きっとリンちゃんもできるにゃ」
「え?私は…」
「えっとにゃー」
クレアちゃんが私に耳打ちして、私はクレアちゃんの言われたように『5-4=1』と式を立てた。
そして、手の上に火でできたウサギがつくれた。
「くっ…この天才どもが!」
私の火のウサギを見て、ゴウくんがじゃっかん目に涙を浮かべながら叫んでいた。
「うるっさいわね、この子たちはいつもこんな感じでしょ?」
「けどよぉ…」
「ま、クレアとリンちゃんは天才だからにゃぁ~」
「「あんた(お前)が言うな!」」
みんな仲いいなぁと思いながら闘技場を見ると、クロくんとヴェルくんが出てきていた。
「あ、そろそろみたいね」
「あいつがお前らが鍛えてたやつか?」
「うん…ヴェルくん」
「ふーん…つえーの?」
「少なくとも、あなたと違って的には当たりますよ」
「ぶふっ」
「いいかげんそれ忘れろよな!」
レインの言葉にハナちゃんがふきだして、ゴウくんがまたぎゃーぎゃーと騒ぎ出した。
「ヴェルくん…がんばって…」
・
・
・
・
・
・
・
・
観客席を見ると、よく見る奴らがいるな。
目の前には先生と対戦相手の2組のやつ…たしかヴェルとかいったか。
全属性が得意だとか…明らかに俺だけ前のやつらとレベルがおかしくないか?これは完全に先生が仕組んだな。
そういって先生をにらむとにこっと明るい笑顔が返ってきた。
…確定だ。
「よ、よろしくお願いします」
急にあいさつされて少し驚いてしまった。
「あ、あぁ」
「リンさんたちから話はいろいろ聞いてます。クラスの中でも戦闘センスがいいとか…お手柔らかにお願いします」
「そんなことはない。俺は…ハナやレインほど格闘センスはない。リンやクレアのような特殊な魔法は使えないし、ルナやゴウのように発想や工夫もない」
我ながら後ろ向きな発言に自分でも動揺したが、言ってることは本心だ。自分は多少魔法の応用を親から学んだだけで、あいつらのように自分の力では何もできていない。
俺の言葉を聞いてヴェルは首を横にふった。
「僕はそんな人たちに認められているクロさんを尊敬します」
「…そうか」
尊敬なんていわれて少しむずがゆくなって、顔をそらして適当に返事をした。
そらした先ににやにやした先生の顔が目に入って、ちょっとイラっとした。
「これより、戦闘部門最終試験を始めます!両者用意はいいですか?」
先生の掛け声に俺は魔筆を構えた。ヴェルも魔筆を取り出して構える。
「それでは、はじめ!」
開始の合図で俺は後ろに下がりながら式を立てる。
「なに!?」
普通は後ろに下がって距離をとりながら式を立てる時間を稼ぐ。しかし、ヴェルは前に踏み込んできた。
魔筆をしまって、一瞬で剣が作られ、胸に突き付けられる。
「くっ…」
本当は闇魔法を発動しようとしたが『3+4』まで書いたが=を書く前に『+1=8』と入れて、足の強化魔法に変更して一気に距離をとる。
5mほど距離をとったが、胸の防具の光が消えていた。
「なかなかやるな…その錬成速度でその剣はすごい」
「ありがとうございます!」
ヴェルがまた距離を詰めてくる。
「天を染め、地を覆う闇夜よきたれ…黒衣」
『3+4=7』と式を立て、闇魔法を発動した。
突っ込んでくるヴェルを闇で包み込んだ。
この魔法は半径3mほどのドーム状の闇を作り、中に入ると周囲は暗くなり、視界を奪う。
ヴェルの動きが鈍ったところで『3×6-11=7』と式を立てた。
「黒点」
ドームの中心に黒点を作ると、黒点に向かって吸い込むように風が吹く。
続けて『5-3=2』と式を立て、氷のつぶてを作って、黒点の風に乗せて飛ばす。
しばらくしてドームと黒点が消えて、剣を地面に立て、息の荒いヴェルの姿が見えた。
防具を見ると背中と腹の光が消えていた。
「はぁ…はぁ…」
「一つ残ったか…」
ヴェルはよろよろと立ち上がり、剣を両手に持った。
「まだまだ…」
「…なんでお前はそこまで必死になれる?そこまでの才能があるなら次でもいいんじゃないのか?」
「次じゃダメなんです…僕一人で…ここまで強くなれたんじゃない…いろんな人が僕に力を貸してくれた…こんな僕でも上を目指していいって…言ってくれた!」
ヴェルの左手の剣から突風が発生して、その風に乗って一気に距離を詰めてくる。
俺も氷で剣を生成して、ヴェルを迎え撃ち、互いの剣が当たると鍔迫り合いになる。
「負けるわけにはいかない…絶対に!」
「なに!?」
ヴェルの剣から炎が出て、俺の氷の剣が溶けていく。
「このっ!」
氷が溶け切る前にヴェルの剣を吹っ飛ばした。
しかし、ヴェルはすでに新しい剣を生成して俺の腹の防具を攻撃していた。
俺はその攻撃で後ろへ吹っ飛ばされた。
「……重いな」
こんなレベルのやつが2組にいたなんて…。
俺は腹を押さえながら思った。
どこかで1組以外の奴らのことを下に見ていた自分がいたから。
「はぁ…はぁ…」
ヴェルも左手の剣を杖がわりに立っている感じだった。
今の一撃で俺も限界が近い。
次で決めたいとお互いに思っているだろう。
「お前…強いな」
「え…?」
「だから…俺も本気の魔法を出す…」
俺は魔筆をもって式を立てる。
「……僕も負けません!」
ヴェルは持っている剣を捨て、先ほどよりも大きめの剣を作った。
「我が求めるは神の一撃、雲は空を覆い、降り注ぐは天罰の雷なり…天雷!」
「はぁぁぁぁ!!!」
俺の式とともにヴェルの上の空に魔法陣が浮かび、そこから雷鳴と共に雷が落ちた。
ヴェルは雷に向かって剣を振りかざした。
剣からは光の刃が出て、雷とぶつかる。
そして、激しい光に包まれた。
ゴウくんが観客席にあがってきて、のんきに言った。
「あんた、いつの間にあんな魔法覚えたのよ?」
「へっへっへ、すげーだろ?」
「さすがにクレアも初めて見たにゃーこんな感じにゃ?」
クレアちゃんが『5-4=1』と式を立てると、魔法陣がクレアちゃんの左手に展開した後、火でできた猫が出てきた。
「かわいい…」
「ダメよリン。やけどしちゃうわ」
私が触ろうとするとハナちゃんに止められた。
その横でゴウくんが驚いていた。
「お前俺がこれができるようになるのにどんだけ…」
「にゃ?普通にできたにゃ」
「この天然天才が!」
「きっとリンちゃんもできるにゃ」
「え?私は…」
「えっとにゃー」
クレアちゃんが私に耳打ちして、私はクレアちゃんの言われたように『5-4=1』と式を立てた。
そして、手の上に火でできたウサギがつくれた。
「くっ…この天才どもが!」
私の火のウサギを見て、ゴウくんがじゃっかん目に涙を浮かべながら叫んでいた。
「うるっさいわね、この子たちはいつもこんな感じでしょ?」
「けどよぉ…」
「ま、クレアとリンちゃんは天才だからにゃぁ~」
「「あんた(お前)が言うな!」」
みんな仲いいなぁと思いながら闘技場を見ると、クロくんとヴェルくんが出てきていた。
「あ、そろそろみたいね」
「あいつがお前らが鍛えてたやつか?」
「うん…ヴェルくん」
「ふーん…つえーの?」
「少なくとも、あなたと違って的には当たりますよ」
「ぶふっ」
「いいかげんそれ忘れろよな!」
レインの言葉にハナちゃんがふきだして、ゴウくんがまたぎゃーぎゃーと騒ぎ出した。
「ヴェルくん…がんばって…」
・
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観客席を見ると、よく見る奴らがいるな。
目の前には先生と対戦相手の2組のやつ…たしかヴェルとかいったか。
全属性が得意だとか…明らかに俺だけ前のやつらとレベルがおかしくないか?これは完全に先生が仕組んだな。
そういって先生をにらむとにこっと明るい笑顔が返ってきた。
…確定だ。
「よ、よろしくお願いします」
急にあいさつされて少し驚いてしまった。
「あ、あぁ」
「リンさんたちから話はいろいろ聞いてます。クラスの中でも戦闘センスがいいとか…お手柔らかにお願いします」
「そんなことはない。俺は…ハナやレインほど格闘センスはない。リンやクレアのような特殊な魔法は使えないし、ルナやゴウのように発想や工夫もない」
我ながら後ろ向きな発言に自分でも動揺したが、言ってることは本心だ。自分は多少魔法の応用を親から学んだだけで、あいつらのように自分の力では何もできていない。
俺の言葉を聞いてヴェルは首を横にふった。
「僕はそんな人たちに認められているクロさんを尊敬します」
「…そうか」
尊敬なんていわれて少しむずがゆくなって、顔をそらして適当に返事をした。
そらした先ににやにやした先生の顔が目に入って、ちょっとイラっとした。
「これより、戦闘部門最終試験を始めます!両者用意はいいですか?」
先生の掛け声に俺は魔筆を構えた。ヴェルも魔筆を取り出して構える。
「それでは、はじめ!」
開始の合図で俺は後ろに下がりながら式を立てる。
「なに!?」
普通は後ろに下がって距離をとりながら式を立てる時間を稼ぐ。しかし、ヴェルは前に踏み込んできた。
魔筆をしまって、一瞬で剣が作られ、胸に突き付けられる。
「くっ…」
本当は闇魔法を発動しようとしたが『3+4』まで書いたが=を書く前に『+1=8』と入れて、足の強化魔法に変更して一気に距離をとる。
5mほど距離をとったが、胸の防具の光が消えていた。
「なかなかやるな…その錬成速度でその剣はすごい」
「ありがとうございます!」
ヴェルがまた距離を詰めてくる。
「天を染め、地を覆う闇夜よきたれ…黒衣」
『3+4=7』と式を立て、闇魔法を発動した。
突っ込んでくるヴェルを闇で包み込んだ。
この魔法は半径3mほどのドーム状の闇を作り、中に入ると周囲は暗くなり、視界を奪う。
ヴェルの動きが鈍ったところで『3×6-11=7』と式を立てた。
「黒点」
ドームの中心に黒点を作ると、黒点に向かって吸い込むように風が吹く。
続けて『5-3=2』と式を立て、氷のつぶてを作って、黒点の風に乗せて飛ばす。
しばらくしてドームと黒点が消えて、剣を地面に立て、息の荒いヴェルの姿が見えた。
防具を見ると背中と腹の光が消えていた。
「はぁ…はぁ…」
「一つ残ったか…」
ヴェルはよろよろと立ち上がり、剣を両手に持った。
「まだまだ…」
「…なんでお前はそこまで必死になれる?そこまでの才能があるなら次でもいいんじゃないのか?」
「次じゃダメなんです…僕一人で…ここまで強くなれたんじゃない…いろんな人が僕に力を貸してくれた…こんな僕でも上を目指していいって…言ってくれた!」
ヴェルの左手の剣から突風が発生して、その風に乗って一気に距離を詰めてくる。
俺も氷で剣を生成して、ヴェルを迎え撃ち、互いの剣が当たると鍔迫り合いになる。
「負けるわけにはいかない…絶対に!」
「なに!?」
ヴェルの剣から炎が出て、俺の氷の剣が溶けていく。
「このっ!」
氷が溶け切る前にヴェルの剣を吹っ飛ばした。
しかし、ヴェルはすでに新しい剣を生成して俺の腹の防具を攻撃していた。
俺はその攻撃で後ろへ吹っ飛ばされた。
「……重いな」
こんなレベルのやつが2組にいたなんて…。
俺は腹を押さえながら思った。
どこかで1組以外の奴らのことを下に見ていた自分がいたから。
「はぁ…はぁ…」
ヴェルも左手の剣を杖がわりに立っている感じだった。
今の一撃で俺も限界が近い。
次で決めたいとお互いに思っているだろう。
「お前…強いな」
「え…?」
「だから…俺も本気の魔法を出す…」
俺は魔筆をもって式を立てる。
「……僕も負けません!」
ヴェルは持っている剣を捨て、先ほどよりも大きめの剣を作った。
「我が求めるは神の一撃、雲は空を覆い、降り注ぐは天罰の雷なり…天雷!」
「はぁぁぁぁ!!!」
俺の式とともにヴェルの上の空に魔法陣が浮かび、そこから雷鳴と共に雷が落ちた。
ヴェルは雷に向かって剣を振りかざした。
剣からは光の刃が出て、雷とぶつかる。
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