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2章:学園生活
クレアの事情
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「実は…クレアの家は…実はもともと一等貴族のお家だったらしいにゃ…」
貴族は一等から三等までランクがあり、一等の上に九花、王族という順に位が上がる。
たしかに、私がまだ学生のころ、キャンディハート家は一等貴族だったはずだ。
でも…。
「でも…クレアが3歳の時に…クレアの家が襲われて…クレアのパパとママは…死んじゃったらしいにゃ…。それで…キャンディハート家は実質…貴族の枠からいなくなったにゃ…助けがきて生き残ったクレアは親戚のお家を行ったりきたりしてたにゃ…その原因として…クレアの記憶が無くなってたんにゃ…」
「記憶が無くなる…?」
そんなことがありえるだろうか…。
ショックでということだろうか。
「クレアは襲われた時…特殊属性と一つの魔法に目覚めたんにゃ…」
「一つの魔法?それって…」
「そう…今のこの体が光る魔法…名前はたしか…『切取と貼付』って言うらしいにゃ…体が光る間に…見たことのある魔法を…式や魔力を使わず瞬時にその場に開く魔法…ほんとに無意識で…頭に響いた声に従って…地面に広がるパパとママの血で…式を書いたって聞いたにゃ…その式を聞いた時…固有魔法だって気がついたんにゃ…」
固有魔法…ということはクレアちゃんの記憶は…。
「先生は気がついてるかにゃ?クレアの記憶は…固有魔法の代償に無くなったんにゃ…そして、パパとママとの記憶のないクレアは…葬式でも…涙一つ出なかったにゃ…大切な人達が死んだのに…その娘は涙を流さない…特殊属性なんて危険なものまで持っている…キャンディハート家の娘は冷血の化物だ…そういう噂が広まって…親戚の家の中でも…クレアはひとりぼっちで…辛かったにゃ…怖かったにゃ…寂しかったにゃ…」
私があの村で住んでいる間に王都ではそんなことが起きていたなんて…。
何も知らなかった自分の情けなさを痛感した。
「でも…追い出されるように来たこの学園は…とっても楽しかったにゃあ…」
ボロボロの顔で、クレアちゃんは今までのことを懐かしむように微笑んだ。
「ゴウくんと一緒にバカしたり…ハナちゃんやルナちゃんやレインとお話したり…ヴェルくんとの練習も楽しかった…クロくんの勉強もちょっと眠かったけど…大切な思い出にゃ…」
そう言って、微笑みながらだけど、クレアちゃんはポロポロと泣き出した。
「そして…リンちゃん…クレアと一番遊んでくれたにゃ…優しくて…強くて…憧れて…それで…ぐす……もっともっと…一緒にいたかったにゃ…ぐす………もっと…もっとぉ…」
クレアちゃんはとうとう話せなくなるくらい泣き出してしまった。
その姿を見て、私はなんて声をかけていいかわからなかった。
まだ5歳で記憶を失うなんて…怖いでしょう…辛いでしょう…。
私はこの子になんて言ってあげたら…なにがしてあげられるのか…。
ここまで自分が役に立たない存在なんて思ったことはクランさんいらいだ…。
「泣いちゃってごめんにゃ…そろそろお別れみたいにゃ…この光が消えたら…クレアの記憶も…入学式の日まで忘れちゃうにゃ…使った魔法の日までの記憶がなくなるから…」
たしかに気がつけば光がだんだん薄くなっている。
クレアちゃんはまだ涙が出ているが、ニコッといつもの笑顔に戻る。
「みんな…ありがとう…新しいクレアとも…仲良くしてほしいにゃ…それから……リンちゃんのこと…よろしく頼んだにゃ…きっと自分を責めちゃうから…ごめんねって伝えておいてほしいにゃ」
「クレア…」
「クレアさん…」
みんながクレアちゃんを見つめる中、ハナちゃんだけは下を向いていた。
「……嫌よ」
「ハナ…ちゃん…?」
「絶対…思い出させてあげるから…絶対絶対!あんたの記憶を取り戻す方法を見つけてあげるんだから!それまでは…ちょっと…ちょっとお別れなだけなんだから!それで、自分でリンに謝りなさい!私がそんなこと伝えるなんて嫌なんだから!」
ハナちゃんは泣きながらそう叫ぶ。
それを聞いて、クレアちゃんは少し驚いた表情をしてから、優しく微笑んでいた。
そして、クレアちゃんは体の光が消え、気を失った。
貴族は一等から三等までランクがあり、一等の上に九花、王族という順に位が上がる。
たしかに、私がまだ学生のころ、キャンディハート家は一等貴族だったはずだ。
でも…。
「でも…クレアが3歳の時に…クレアの家が襲われて…クレアのパパとママは…死んじゃったらしいにゃ…。それで…キャンディハート家は実質…貴族の枠からいなくなったにゃ…助けがきて生き残ったクレアは親戚のお家を行ったりきたりしてたにゃ…その原因として…クレアの記憶が無くなってたんにゃ…」
「記憶が無くなる…?」
そんなことがありえるだろうか…。
ショックでということだろうか。
「クレアは襲われた時…特殊属性と一つの魔法に目覚めたんにゃ…」
「一つの魔法?それって…」
「そう…今のこの体が光る魔法…名前はたしか…『切取と貼付』って言うらしいにゃ…体が光る間に…見たことのある魔法を…式や魔力を使わず瞬時にその場に開く魔法…ほんとに無意識で…頭に響いた声に従って…地面に広がるパパとママの血で…式を書いたって聞いたにゃ…その式を聞いた時…固有魔法だって気がついたんにゃ…」
固有魔法…ということはクレアちゃんの記憶は…。
「先生は気がついてるかにゃ?クレアの記憶は…固有魔法の代償に無くなったんにゃ…そして、パパとママとの記憶のないクレアは…葬式でも…涙一つ出なかったにゃ…大切な人達が死んだのに…その娘は涙を流さない…特殊属性なんて危険なものまで持っている…キャンディハート家の娘は冷血の化物だ…そういう噂が広まって…親戚の家の中でも…クレアはひとりぼっちで…辛かったにゃ…怖かったにゃ…寂しかったにゃ…」
私があの村で住んでいる間に王都ではそんなことが起きていたなんて…。
何も知らなかった自分の情けなさを痛感した。
「でも…追い出されるように来たこの学園は…とっても楽しかったにゃあ…」
ボロボロの顔で、クレアちゃんは今までのことを懐かしむように微笑んだ。
「ゴウくんと一緒にバカしたり…ハナちゃんやルナちゃんやレインとお話したり…ヴェルくんとの練習も楽しかった…クロくんの勉強もちょっと眠かったけど…大切な思い出にゃ…」
そう言って、微笑みながらだけど、クレアちゃんはポロポロと泣き出した。
「そして…リンちゃん…クレアと一番遊んでくれたにゃ…優しくて…強くて…憧れて…それで…ぐす……もっともっと…一緒にいたかったにゃ…ぐす………もっと…もっとぉ…」
クレアちゃんはとうとう話せなくなるくらい泣き出してしまった。
その姿を見て、私はなんて声をかけていいかわからなかった。
まだ5歳で記憶を失うなんて…怖いでしょう…辛いでしょう…。
私はこの子になんて言ってあげたら…なにがしてあげられるのか…。
ここまで自分が役に立たない存在なんて思ったことはクランさんいらいだ…。
「泣いちゃってごめんにゃ…そろそろお別れみたいにゃ…この光が消えたら…クレアの記憶も…入学式の日まで忘れちゃうにゃ…使った魔法の日までの記憶がなくなるから…」
たしかに気がつけば光がだんだん薄くなっている。
クレアちゃんはまだ涙が出ているが、ニコッといつもの笑顔に戻る。
「みんな…ありがとう…新しいクレアとも…仲良くしてほしいにゃ…それから……リンちゃんのこと…よろしく頼んだにゃ…きっと自分を責めちゃうから…ごめんねって伝えておいてほしいにゃ」
「クレア…」
「クレアさん…」
みんながクレアちゃんを見つめる中、ハナちゃんだけは下を向いていた。
「……嫌よ」
「ハナ…ちゃん…?」
「絶対…思い出させてあげるから…絶対絶対!あんたの記憶を取り戻す方法を見つけてあげるんだから!それまでは…ちょっと…ちょっとお別れなだけなんだから!それで、自分でリンに謝りなさい!私がそんなこと伝えるなんて嫌なんだから!」
ハナちゃんは泣きながらそう叫ぶ。
それを聞いて、クレアちゃんは少し驚いた表情をしてから、優しく微笑んでいた。
そして、クレアちゃんは体の光が消え、気を失った。
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