魔法の数字

初昔 茶ノ介

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3章:中等部編

母の愛

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私の最愛の娘、クレアへ。

クレア、あなたがこれを読む時にママはいなくなってしまってるでしょう。
本当にごめんなさい。
ママがもっともっと強かったら、ずっとあなたと暮らしていたと思います。

ところで、あなたは今何歳になるのかしら。
しっかり勉強してる?ご飯は?毎日朝ちゃんと起きているかしら?
怪我はないかしら。元気でやっているかしら。
私はとても心配だわ。
だって、私とパパの子ですもの。
きっと朝は寝坊して、勉強も苦手、じっとしているのが苦手な子になっていそうで…。

この手紙を読む前に、クレアはきっとたくさん辛いことがあったと思うわ。
だから、それを乗り越えるためのコツを書くことにするわね。
それは、大切な友達を作ることです。そして、その友達は絶対に守りなさい。
その友達と競いなさい。その友達から教わりなさい。
そして、辛い時は頼りなさい。
相手が辛そうな時は助けてあげなさい。

そうすれば、あなたはきっと誰よりも優しく、幸せな子になるわ。
なんと言っても私とパパの子ですもの。

最後にクレア、あなたを愛しているわ。
それだけは忘れないで。
例え周りが冷たい目で見ても、私とパパはあなたを愛してる。
だから、強く、胸を張って生きなさい。
パパとママの分も頑張るにゃん。

クレアの最高のママより
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読み終えてクレアちゃんは静かに手紙をたたんで机に置いた。

「ここまでしてくれるママがいたのに…何も覚えてないなんて、クレアは親不孝者にゃ…」

「そんなこと…ない…」

「ふふふ…ありがとにゃ」

寂しそうに笑ってクレアちゃんは私の頭を撫でる。

「クレアちゃん、その手紙と一緒に入ってた物があるの」

そういえば表に『これを使って』とか書いてあった。
おばあちゃんは一つの封筒を出した。

「これは?」

「中に入っていたのは親族許可書っていう書類よ」

「しんぞくきょかしょ?」

私もクレアちゃんも初めて聞く言葉だった。
二人で首を傾げた。

「この国ではね、子供が養子に行ったり、学園をやめて働いたりする時なんかは親がそれを認めて国へ提出しなきゃダメっていう法律があるのよ。つまり、タリアはこれを使って新しい親を見つけてほしいって事なんじゃないかしら?」

「え…?」

「いくら学園の寮があるとはいえ、安心できる場所があるのとないのとじゃ全然違うと思うわ」

「でも…クレアなんかの親になる人なんて…」

「まぁ、そこはじっくりとね。今すぐ決めなきゃいけないことないから」

「……わかったにゃ」

「さて、暗い話はここまでにして、何か楽しいことをしましょう!そうだわ!クレアちゃんに合いそうな服も作らなきゃね!あっちで採寸しましょうか!」

「さ、採寸?」

あぁ…私もやったなぁ。
おばあちゃんの採寸長いからなぁ、スリーサイズ以外に腕、足、頭周りまで図り出すし…頑張れクレアちゃん。

「クレアちゃん…頑張って」

「採寸で頑張る!?何する気にゃ!?」

「あら、リンちゃんも大きくなったんだから一緒にするのよ?」

「え…?」

「さ、行きましょうか?」

「い、いやぁ…クレア、服とか興味ないしにゃあ…にゃはは」

「私もそんなに…変わってないから…」

私とクレアちゃんはじりじりと扉側へ下がる。

「逃がさないわよ!」

「クレアちゃん!こっち!」

「わかったにゃ!」

春休み最初の日は、おばあちゃんとの壮絶な鬼ごっこから始まったのだった。
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