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第1章:別れと出会い
10.森の過ごし方
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「まずは生きていける状態を作らなきゃ勉強どころじゃねぇ」
水はここにあるからひとまず大丈夫として、食いものをなんとかしないとな。
水をがぶ飲みしたおかげで空腹感は紛れたけど、これもいつまでも持たないからなぁ。
せっかくならお腹いっぱいなんかを食べたいし……。
そこからはとにかくがむしゃらに食べ物を探し回った。何か実がなっている木を見つけたり、川に水を飲みにいったときに魚をなんとか取れないかと頑張ったり、兎や鶏をとってみようかと走り回ったり……単純に追いかけ回すだけじゃダメだってことがよく分かった。
「くっそぉ……もうダメだ……」
走って疲れすぎた俺は川の近くで体力の限界を迎え気絶するように眠りについた。
3日目。俺は罠を仕掛けることにした。
スキルを使っても、獣たちはうまく逃げるし、俺一人じゃどうしても見つけるだけで手一杯になると思ったのだ。
それから、罠作りと体力作りを徹底的にやってみた。体力は毎日やらないと身につかないと思うし、罠を仕掛けて食べ物が手に入るなら、それに越したことはないと思ったからだ。
どっちも最初こそうまくいかなかったけど、だんだんと何をすればいいのかわかってきて、スキルを使えば自分で動物を捕まえられるし、罠もよりわかりにくく、動物を高確率でとれるようになった。
動物を捕っても、刃物も何もない俺は石と糸生成のスキルでなんとか捌いて、生で食べようとしたのは我ながら頭が悪かったと思う。
奇跡的に火を起こすスキルを何かの動物から盗っていたから助かった。
初めてお腹いっぱいに焼いた肉を食べた時は、感動で涙が出た。それと同時にセレにも食べさせてやりたいと少しだけ寂しさもあった。
安定して食べ物が手に入るようになるまでに二週間もかかった。
「よし、だいぶいい感じに生活感が出てきたぞ!」
初日に見つけた小さな洞窟を拠点にするため、動物の毛皮や落ちていた丸太なんかを昔見た職人の作業の見様見真似で家具を作ってみた。毛皮は床に敷いて柔らかくあったかいし、机は小さいけど俺が作業をするには充分だった。
食べ物に困らなくなってからは体力作りに加えて文字の勉強を始めた。
意味が理解できても、一から文字を覚えるのは骨が折れる作業だった。名前を表示している文字は発音と合わせればいいからわかりやすかった。
だが、もう一つの文字列は発音さえもわからないから、共通の文字と共通の意味を照らし合わせて、理解していく必要があった。例えば毒生成と糸生成では作り出すものは違うが、【生成】という部分が一致するなど、パターンを見つけていく作業に骨が折れた。
その文字列の理解に半年を費やしたが、完全理解にまでは至らず、まだわからない部分も多い。
だが、最初の時と比べればかなりできることが増えてきた。
いわばこれは、昔セレにあげたパズルと一緒なのだ。組み合わせ次第で、さまざまな効果を作り出せる。
半年を費やしたと言ったが、後半からは楽しくて没頭していた。
自分のできることが明確に増える感覚。ずっと生きるのに必死だった自分が勉強をしているという充実感。全てが新鮮で、自分のために何かを努力する楽しさを得られた。
体力作りも慣れれば罠のことを考えながら行うようになった。罠の仕掛け方も、単純なものからスキルを使った高度なものを思いついては試すを繰り返す。文字も新しいスキルを見つけては盗ってその日の夜に読むようにすることが日課になっていた。
そんな充実した生活を続けていくうちに、俺がこの世界に来てからついに一年の月日が経った。
水はここにあるからひとまず大丈夫として、食いものをなんとかしないとな。
水をがぶ飲みしたおかげで空腹感は紛れたけど、これもいつまでも持たないからなぁ。
せっかくならお腹いっぱいなんかを食べたいし……。
そこからはとにかくがむしゃらに食べ物を探し回った。何か実がなっている木を見つけたり、川に水を飲みにいったときに魚をなんとか取れないかと頑張ったり、兎や鶏をとってみようかと走り回ったり……単純に追いかけ回すだけじゃダメだってことがよく分かった。
「くっそぉ……もうダメだ……」
走って疲れすぎた俺は川の近くで体力の限界を迎え気絶するように眠りについた。
3日目。俺は罠を仕掛けることにした。
スキルを使っても、獣たちはうまく逃げるし、俺一人じゃどうしても見つけるだけで手一杯になると思ったのだ。
それから、罠作りと体力作りを徹底的にやってみた。体力は毎日やらないと身につかないと思うし、罠を仕掛けて食べ物が手に入るなら、それに越したことはないと思ったからだ。
どっちも最初こそうまくいかなかったけど、だんだんと何をすればいいのかわかってきて、スキルを使えば自分で動物を捕まえられるし、罠もよりわかりにくく、動物を高確率でとれるようになった。
動物を捕っても、刃物も何もない俺は石と糸生成のスキルでなんとか捌いて、生で食べようとしたのは我ながら頭が悪かったと思う。
奇跡的に火を起こすスキルを何かの動物から盗っていたから助かった。
初めてお腹いっぱいに焼いた肉を食べた時は、感動で涙が出た。それと同時にセレにも食べさせてやりたいと少しだけ寂しさもあった。
安定して食べ物が手に入るようになるまでに二週間もかかった。
「よし、だいぶいい感じに生活感が出てきたぞ!」
初日に見つけた小さな洞窟を拠点にするため、動物の毛皮や落ちていた丸太なんかを昔見た職人の作業の見様見真似で家具を作ってみた。毛皮は床に敷いて柔らかくあったかいし、机は小さいけど俺が作業をするには充分だった。
食べ物に困らなくなってからは体力作りに加えて文字の勉強を始めた。
意味が理解できても、一から文字を覚えるのは骨が折れる作業だった。名前を表示している文字は発音と合わせればいいからわかりやすかった。
だが、もう一つの文字列は発音さえもわからないから、共通の文字と共通の意味を照らし合わせて、理解していく必要があった。例えば毒生成と糸生成では作り出すものは違うが、【生成】という部分が一致するなど、パターンを見つけていく作業に骨が折れた。
その文字列の理解に半年を費やしたが、完全理解にまでは至らず、まだわからない部分も多い。
だが、最初の時と比べればかなりできることが増えてきた。
いわばこれは、昔セレにあげたパズルと一緒なのだ。組み合わせ次第で、さまざまな効果を作り出せる。
半年を費やしたと言ったが、後半からは楽しくて没頭していた。
自分のできることが明確に増える感覚。ずっと生きるのに必死だった自分が勉強をしているという充実感。全てが新鮮で、自分のために何かを努力する楽しさを得られた。
体力作りも慣れれば罠のことを考えながら行うようになった。罠の仕掛け方も、単純なものからスキルを使った高度なものを思いついては試すを繰り返す。文字も新しいスキルを見つけては盗ってその日の夜に読むようにすることが日課になっていた。
そんな充実した生活を続けていくうちに、俺がこの世界に来てからついに一年の月日が経った。
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