特技泥棒、異世界に行くと最強スキルになりまして

初昔 茶ノ介

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第1章:別れと出会い

15.リオネルと共に

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「改めて、シノ。助けてくれてありがとう」

「私からも、私たちの坊ちゃんを助けてくださってありがとうございます」

「いや、大したことはしてない。俺こそ街まで連れて来てくれてありがとう」

「それはお礼にもならないよ。それで、何か職が欲しいんだったっけ?」

「あぁ、何かあるか?」

「そういう情報はミラが詳しいんだけど、何かあるかな?」

「そうですねぇ、シノさんは読み書きはできますか?」

「あぁ、できる」

「計算は?」

「計算はちょっと自信がないな」

「ふむふむ、他に特技はありますか?」

「特技……」

 ここで泥棒が得意とも言えないし、何か特技……。

「シノにはすごい特技があるじゃないか」

「それって糸生成のことか?」

「糸生成?」

 俺はリオネルに見せたようにミラさんに糸生成のスキルをやって見せた。

「これはすごいですね……こんなスキルを使える人は初めて見ました」

「だよね。やっぱり服飾店とかかな?」

「うーん……それはちょっと私はお勧めできませんね」

「どうして?」

「糸生成は確かに服飾店にとっては喉から手が出るほど欲しいスキルだとは思いますが、シノさんを獲得した店があまりにも有利すぎます。業界のバランスを脅かすようなことを商会がするべきではないかと」

「確かに……」

「せっかく初めて街に来たんですから、案内がてらどんな職業があるか見て回ってきてはどうですか?」

「それはいいかもしれないね。僕が案内するよ」

 リオネルは嬉しそうにミラさんの意見に賛成する。

「どうかな、シノ」

「俺なんかが職を選べるのか……?」

 俺が心配そうに漏らすと、リオネルはバンっと机を叩いて立ち上がる。

「何をいってるんだよ! シノはすごい才能をたくさん持ってるんだから、自分のなりたい職に就くべきだよ!」

「そ、そうか……」

 興奮気味に語るリオネルに俺は顔をちょっと引き攣らせて返事をする。それを見てミラさんがくすくすと笑っているの見えた。

「そ、それじゃあ案内を頼んでもいいか……?」

「あぁ! もちろんだよ。すぐに行こう」

 リオネルは少しウキウキしながら部屋を出て行った。俺もそれについて行こうと立ち上がった時、ミラさんに声をかけられた。

「シノさん。うちの坊ちゃんをよろしくお願いします」

「いや、俺の方が案内してもらうんだ。申し訳ない」

「うふふふ……そこはお気になさらず。ガルドさんが今日の坊ちゃんのお仕事を済ませてくれましたし、それに……」

「それに?」

「坊ちゃんは旦那様……フェルネス商会の会長であるお父様から才能を見出されてからはずっと商売の教育をされて来ましたから、親しい友人があまりいないんです。ですから、シノさんと過ごす時間は坊ちゃんにとっても楽しい時間のはずです。あんなにはしゃぐ坊ちゃんも私は初めて見ましたから」

「おーい! シノ、何してるんだい」

「あぁ、今行くよ」

 ミラさんがいってらっしゃいというので、俺は部屋を出てリオネルの元に向かった。
 
 次は馬車ではなく二人で歩いて街を回る。
 さっき通ってきた市場をまずは案内してもらうことに。

「ここがさっきも言ったけど、店が多く並んでいる街の南側の市場。屋台や商人の出店、商会なんかが多く並んでるところだよ。ここを抜けた先にある住宅街を中心に東側に鍛治師や職人の店が並んでる工房通り。西側は宿や飲食店が多い宿屋街。他にも色々な店があるから歩いてみよう」

 リオネルに連れられて、市場を歩いて行く。
 このたくさんの店の中で働いている人たちはそれぞれの仕事のいわば職人な訳で、働くということに一種の憧れのようなものを抱く俺からすれば歩いていて話をかけてくる人たちにも尊敬に近い感情を抱いてしまう。
 市場の人たちに俺を紹介しながら、回るたびにいろんな荷物が増えていった。
 少し歩き疲れたので、二人で街の中心にある噴水広場で休憩をすることにした。

「たくさん買ったなぁ」

「はは、昔から商会の近くの店で買い食いするのが多くてね。みんな僕を見ると買わせる……というか、食べさせたくなるんだよ。さ、それよりもシノはどれを食べる? パンに肉串、とうもろこしなんてのもあるね」

 正直、どれもうまそうだ……。こんなもの前の世界でも森でも食べられないものばかりだし、できることなら全部食べたいところだが、せっかくできた知り合いの前で悪い印象を抱かせるわけには……。
 俺がぐぬぬと悩んでいると、リオネルはくすくすと笑った。

「そんなに真剣に悩まなくてもいいだろ?」

「何いってんだ。こんなうまそうなもんそうそう食べられないんだぞ。俺は食事の時が一番幸せな時間だと思ってるくらいだからな」

「まぁ、そうかもね」
「そうだよ。俺が森に来たばっかりの時なんて、食べ物どころか水すらなくてな」


 そんな他愛もない話をしながら俺とリオネルは笑い合った。
 こんな風にセレ以外の誰かとゆっくり話すことなんてなかったから、この穏やかな時間が心地いい。思えば俺も同じ歳くらいの知り合いはいなかった。

 話しながらリオネルはさっき買ってきた袋の中からパンを一つ取り出して食べた。
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