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第1章:別れと出会い
14.リオネル商会の人たち
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この世界にきてから初めての街は、賑やかの一言に尽きた。
たくさん行き来している人たち、見たことのない食べ物を売っている店に客を呼ぶ元気のいい声、活気に満ちた雰囲気が初めてきた俺でもわかるくらい感じ取れた。
「ここは街の南側。お店や飲食店なんかが多く並んでいるんだ。街の人たちは市場(マーケット)なんて呼んでるね。うちはもう少し奥に行ったところだよ」
「やぁ、お坊ちゃん。昨日帰るって言ってなかったかい?」
「やぁ。それがちょっとトラブルでね。でも、その分いい出会いもあったよ」
「ほう、そりゃ何よりだ」
「坊ちゃん、うちのパン屋に寄ってっておくれよ。ちょうど焼きたてだよ」
「あはは、ありがとう。でも、また今度寄らせてもらうよ」
その後も馬車で移動中に、お店の人たちから気さくに話しかけられるリオネルを見て、やっぱりこいつはいいやつなんだなと思いつつ、こんなやつに出会えたことが幸運だったと思えた。
しばらく馬車を進ませると、周りの建物よりも少しこじんまりとした店でリオネルが馬車を止めた。
「ここが僕の商会、リオネル商会の店舗だよ」
堂々と紹介するリオネルを見て、正直俺は反応に困った。
他の店と比べても大きさは小さめ。壁はところどころヒビが入って、苔や蔦らしき植物も生えている。お世辞にも綺麗とは言いづらい。
「あぁー……すげぇな!」
「……」
「……」
とりあえず感じたことを失礼にならないように一言で表す言葉を捻り出したが、俺の言わんとしていることが伝わったのかお互いに気まずくなりしばらくの沈黙。
「あ、坊ちゃんやっとお戻りになりましたかぁ。昨日のうちに戻るっていってたのにみんな心配してたんですよぉ」
俺たちの沈黙を破ったのは、リオネルの商会の中から出て来た二十代前半くらいの女性だった。
「ちょっとトラブルにあってね。後で詳しく話すよ。あ、ミラ。こちら僕を助けてくれたシノ。一緒に街に行きたいっていうから連れて来たんだ。丁重にもてなしてくれよ」
「まぁ、そうだったんですね。初めまして、リオネル商会で働いています。ミラ・エンデルです」
「えっと、シノだ。よろしく」
「坊ちゃんを助けてくれたようでありがとうございます。さ、中にどうぞ。今日は東の国から変わった茶葉が届いたので」
ミラさんに言われて俺たちは商会の中に入った。
中はたくさんの棚にいろんな道具が陳列されていた。その棚の奥にある台に男性が座っていた。
「坊ちゃん、戻ったか」
「ガルド、心配かけたみたいだね」
「あぁ、まったくだ。お前の仕事はあらかた片付けておいたから確認だけしておけ」
「ありがとう。いつも助かるよ。ガルド、こちら僕を助けてくれたシノ。よろしく頼むよ」
ガルドと呼ばれた男性が俺のことをジッと見る。睨んでいるわけではないのだが、気迫というか、謎の圧力を感じて気持ちが少しだけあとずさる。
「よ、よろしく」
「……ガルド・バレンだ」
ガルドさんはそれだけいうと、再び俺のことをジッと見た。
「ガルドさん、顔が怖いですよ。目が悪いならメガネをかけてください。それから、名前以外に何かないんですか?」
「まぁ、ゆっくりしていけ」
なんだ。目が悪いだけか……怖い人ではないかもしれない。
そのまま奥の部屋に通された。縦長の机に二人座りの柔らかそうな椅子が二つ向かい合うように置いてあった。
リオネルに椅子に座るように言われて座ると、リオネルは向かいの椅子に座って、その後ミラさんがお盆にカップを三つ乗せて一つずつ配ってリオネルの隣に座った。ちなみに俺には丸い何かが乗った皿も出された。
たくさん行き来している人たち、見たことのない食べ物を売っている店に客を呼ぶ元気のいい声、活気に満ちた雰囲気が初めてきた俺でもわかるくらい感じ取れた。
「ここは街の南側。お店や飲食店なんかが多く並んでいるんだ。街の人たちは市場(マーケット)なんて呼んでるね。うちはもう少し奥に行ったところだよ」
「やぁ、お坊ちゃん。昨日帰るって言ってなかったかい?」
「やぁ。それがちょっとトラブルでね。でも、その分いい出会いもあったよ」
「ほう、そりゃ何よりだ」
「坊ちゃん、うちのパン屋に寄ってっておくれよ。ちょうど焼きたてだよ」
「あはは、ありがとう。でも、また今度寄らせてもらうよ」
その後も馬車で移動中に、お店の人たちから気さくに話しかけられるリオネルを見て、やっぱりこいつはいいやつなんだなと思いつつ、こんなやつに出会えたことが幸運だったと思えた。
しばらく馬車を進ませると、周りの建物よりも少しこじんまりとした店でリオネルが馬車を止めた。
「ここが僕の商会、リオネル商会の店舗だよ」
堂々と紹介するリオネルを見て、正直俺は反応に困った。
他の店と比べても大きさは小さめ。壁はところどころヒビが入って、苔や蔦らしき植物も生えている。お世辞にも綺麗とは言いづらい。
「あぁー……すげぇな!」
「……」
「……」
とりあえず感じたことを失礼にならないように一言で表す言葉を捻り出したが、俺の言わんとしていることが伝わったのかお互いに気まずくなりしばらくの沈黙。
「あ、坊ちゃんやっとお戻りになりましたかぁ。昨日のうちに戻るっていってたのにみんな心配してたんですよぉ」
俺たちの沈黙を破ったのは、リオネルの商会の中から出て来た二十代前半くらいの女性だった。
「ちょっとトラブルにあってね。後で詳しく話すよ。あ、ミラ。こちら僕を助けてくれたシノ。一緒に街に行きたいっていうから連れて来たんだ。丁重にもてなしてくれよ」
「まぁ、そうだったんですね。初めまして、リオネル商会で働いています。ミラ・エンデルです」
「えっと、シノだ。よろしく」
「坊ちゃんを助けてくれたようでありがとうございます。さ、中にどうぞ。今日は東の国から変わった茶葉が届いたので」
ミラさんに言われて俺たちは商会の中に入った。
中はたくさんの棚にいろんな道具が陳列されていた。その棚の奥にある台に男性が座っていた。
「坊ちゃん、戻ったか」
「ガルド、心配かけたみたいだね」
「あぁ、まったくだ。お前の仕事はあらかた片付けておいたから確認だけしておけ」
「ありがとう。いつも助かるよ。ガルド、こちら僕を助けてくれたシノ。よろしく頼むよ」
ガルドと呼ばれた男性が俺のことをジッと見る。睨んでいるわけではないのだが、気迫というか、謎の圧力を感じて気持ちが少しだけあとずさる。
「よ、よろしく」
「……ガルド・バレンだ」
ガルドさんはそれだけいうと、再び俺のことをジッと見た。
「ガルドさん、顔が怖いですよ。目が悪いならメガネをかけてください。それから、名前以外に何かないんですか?」
「まぁ、ゆっくりしていけ」
なんだ。目が悪いだけか……怖い人ではないかもしれない。
そのまま奥の部屋に通された。縦長の机に二人座りの柔らかそうな椅子が二つ向かい合うように置いてあった。
リオネルに椅子に座るように言われて座ると、リオネルは向かいの椅子に座って、その後ミラさんがお盆にカップを三つ乗せて一つずつ配ってリオネルの隣に座った。ちなみに俺には丸い何かが乗った皿も出された。
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