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第1章:別れと出会い
28.光る地面
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「今回の薬草の成長変化を記録していきましょう」
「にしても、急に大きくなったなぁ」
俺に続いて、ロネットがルッテやトニーを起こしに行って、それに釣られて他の子供たちも起きてきて薬草をみんなで見ている時に薬草に関わる四人で記録をとった。
「でも、大きくはなったけど本数は増えていないな」
「確かに……本数は変化ないですね。やっぱり大きく育つのと増えるのとでは違いがあるんでしょうか」
「そうだなぁ。一旦あの薬草が生えているところをもう一度見に行ってみるか。何か違いがあるかもしれない」
「今度は私が行く!」
よほど前回行けなかったことが悔しかったのか、すぐさま手をあげるロネット。
それを見て俺もルッテもトニーも苦笑いを浮かべる。
「それじゃあ今日は俺が残るから、シノ兄とルッテとロネットで行ってきてくれ」
「え、でも私よりトニーの方が……」
「いや、いいんだ。ルッテの方が観察が鋭いし、また後で何かあったか教えてくれよ」
「わかったわ」
「ルッテ姉ちゃん、お腹すいたぁ」
薬草を見ることに飽きた子供たちがルッテに声をかけた。
「そうね。まずは朝ごはんを食べましょうか」
子供達は俺にも結構懐いてくれたが、やっぱり元々一緒にいたルッテやトニー、ロネットほどではない。
それに、小さな子達はルッテのことを半分母親のように見ている節もある。
まぁ、ルッテはおおらかで優しいからその気持ちもわからなくもないが。
朝食終えてから俺たちはもう一度洞窟の方へと向かう。
もう一度とは言ったが、ロネットは初めていくことになる。だからか、ロネットはとても上機嫌だ。
「わぁ、綺麗なところだね!」
薬草の生えている場所に着くと、花が咲いているところにロネットはトコトコと走っていって、クルクルと回っている。
「ロネットちゃんが楽しそうでよかった」
「いつもあんな感じじゃないのか?」
ルッテがポツリと呟いたことを不思議に思った俺が聞くと、ルッテが嬉しそうにこちらを向いた。
「ここに来て……いいえ、思えばシノお兄さんと出会ってから、ロネットちゃんは明るくなった気がしますよ。前までは、みんなのために無理に明るく振る舞っていたように感じましたから」
「そうなのか……」
俺自身は何かをしたって感覚はないのだが、ずっと一緒にいたルッテがいうのだからそうなのだろう。
「あ、お兄ちゃん、ルッテ! 薬草があったよ!」
ルッテが手を振って俺たちを呼ぶから、二人ともロネットの元へ向かった。
「前よりも増えていますね」
「あぁ、確かにここに薬草を植えて、薬草がなくなったことはないな。何が違うんだ?」
改めてその場を見ても何か違いがあるように見えない。強いていうなら水が近くを流れているくらいか?
「うーん、近くに川が流れているのがいいのかもしれませんね。常に水が近くにないとダメとか……」
「それか、地面が違うよね」
「……ん?」
「え?」
ロネットが言ったことに俺とルッテが反応した。
「地面が違う?」
「えっと、どう違うの?」
「え? 違うよ。地面も違うし、そこに生えてる薬草も全然違うもん」
ロネットに言われて指された二つの薬草と地面を見比べるが、俺とルッテには違いがわからない。
「俺にはわからないな……」
「私にもです」
「え~全然違うよ! こっちの薬草とか地面の方が光が強いし、動いてるもん!」
「光?」
ロネットに説明を受けても、ルッテや俺はその『光』というものが見えない。
もしかして……。
俺はロネットのことをじっと見つめて、窓を出した。
「……魔力視?」
もしかしてと思って窓を見たが、ロネットは人でスキルを持った状態だ。
初めて会った。スキルを持った人に。街を歩いていてもスキルがある人ってなかなかいなかったから、てっきりかなりの少数なんだと思っていたが……まさかこんな近くにいたなんて。
「いつっ……」
俺はその魔力視に触れようとしたが、なぜか弾かれた。
「なんだ?」
「どうかした? お兄ちゃん」
「あ、いや。なんでもない」
魔力視のスキルは盗ることができなかったが、説明を見ることはできた。
どうやら、ロネットの魔力視というスキルは人や物に宿る魔力を可視化することができるようだ。
もしかして、ロネットが途中からあの男に指名されて薬草を採ってこいと言ったのは、この魔力視のスキルに気がついていたからか……?
「ロネットにはこっちの地面と薬草が光って見えるんだな?」
「うん」
「……よし、こっちの光ってる薬草を持っていこう」
「え? でも私には光って見えませんが……」
「大丈夫だ。ロネット、この地面の光の状態を覚えておいてくれ」
「わかったよ」
ロネットは俺に返事をして、そこの薬草を大事しそうに採った。
もし、俺の仮説が正しいなら、ロネットの魔力視が薬草栽培のヒントになるかもしれない。
「にしても、急に大きくなったなぁ」
俺に続いて、ロネットがルッテやトニーを起こしに行って、それに釣られて他の子供たちも起きてきて薬草をみんなで見ている時に薬草に関わる四人で記録をとった。
「でも、大きくはなったけど本数は増えていないな」
「確かに……本数は変化ないですね。やっぱり大きく育つのと増えるのとでは違いがあるんでしょうか」
「そうだなぁ。一旦あの薬草が生えているところをもう一度見に行ってみるか。何か違いがあるかもしれない」
「今度は私が行く!」
よほど前回行けなかったことが悔しかったのか、すぐさま手をあげるロネット。
それを見て俺もルッテもトニーも苦笑いを浮かべる。
「それじゃあ今日は俺が残るから、シノ兄とルッテとロネットで行ってきてくれ」
「え、でも私よりトニーの方が……」
「いや、いいんだ。ルッテの方が観察が鋭いし、また後で何かあったか教えてくれよ」
「わかったわ」
「ルッテ姉ちゃん、お腹すいたぁ」
薬草を見ることに飽きた子供たちがルッテに声をかけた。
「そうね。まずは朝ごはんを食べましょうか」
子供達は俺にも結構懐いてくれたが、やっぱり元々一緒にいたルッテやトニー、ロネットほどではない。
それに、小さな子達はルッテのことを半分母親のように見ている節もある。
まぁ、ルッテはおおらかで優しいからその気持ちもわからなくもないが。
朝食終えてから俺たちはもう一度洞窟の方へと向かう。
もう一度とは言ったが、ロネットは初めていくことになる。だからか、ロネットはとても上機嫌だ。
「わぁ、綺麗なところだね!」
薬草の生えている場所に着くと、花が咲いているところにロネットはトコトコと走っていって、クルクルと回っている。
「ロネットちゃんが楽しそうでよかった」
「いつもあんな感じじゃないのか?」
ルッテがポツリと呟いたことを不思議に思った俺が聞くと、ルッテが嬉しそうにこちらを向いた。
「ここに来て……いいえ、思えばシノお兄さんと出会ってから、ロネットちゃんは明るくなった気がしますよ。前までは、みんなのために無理に明るく振る舞っていたように感じましたから」
「そうなのか……」
俺自身は何かをしたって感覚はないのだが、ずっと一緒にいたルッテがいうのだからそうなのだろう。
「あ、お兄ちゃん、ルッテ! 薬草があったよ!」
ルッテが手を振って俺たちを呼ぶから、二人ともロネットの元へ向かった。
「前よりも増えていますね」
「あぁ、確かにここに薬草を植えて、薬草がなくなったことはないな。何が違うんだ?」
改めてその場を見ても何か違いがあるように見えない。強いていうなら水が近くを流れているくらいか?
「うーん、近くに川が流れているのがいいのかもしれませんね。常に水が近くにないとダメとか……」
「それか、地面が違うよね」
「……ん?」
「え?」
ロネットが言ったことに俺とルッテが反応した。
「地面が違う?」
「えっと、どう違うの?」
「え? 違うよ。地面も違うし、そこに生えてる薬草も全然違うもん」
ロネットに言われて指された二つの薬草と地面を見比べるが、俺とルッテには違いがわからない。
「俺にはわからないな……」
「私にもです」
「え~全然違うよ! こっちの薬草とか地面の方が光が強いし、動いてるもん!」
「光?」
ロネットに説明を受けても、ルッテや俺はその『光』というものが見えない。
もしかして……。
俺はロネットのことをじっと見つめて、窓を出した。
「……魔力視?」
もしかしてと思って窓を見たが、ロネットは人でスキルを持った状態だ。
初めて会った。スキルを持った人に。街を歩いていてもスキルがある人ってなかなかいなかったから、てっきりかなりの少数なんだと思っていたが……まさかこんな近くにいたなんて。
「いつっ……」
俺はその魔力視に触れようとしたが、なぜか弾かれた。
「なんだ?」
「どうかした? お兄ちゃん」
「あ、いや。なんでもない」
魔力視のスキルは盗ることができなかったが、説明を見ることはできた。
どうやら、ロネットの魔力視というスキルは人や物に宿る魔力を可視化することができるようだ。
もしかして、ロネットが途中からあの男に指名されて薬草を採ってこいと言ったのは、この魔力視のスキルに気がついていたからか……?
「ロネットにはこっちの地面と薬草が光って見えるんだな?」
「うん」
「……よし、こっちの光ってる薬草を持っていこう」
「え? でも私には光って見えませんが……」
「大丈夫だ。ロネット、この地面の光の状態を覚えておいてくれ」
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