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八五話
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なんとなく読み返していたら、ソアラの首枷外す描写が何処にもないことに今更気付く低脳振り・・・
プロットの段階ではちゃんとあったんですよ。プロットの段階では(言い訳)
というわけで、四〇話の終わりの部分をちょっことだけ加筆修正しました。
大したことは書いてませんが、気になる方はどうぞ。
---------------------------------------------
ガチャ
女将さんから借りた鍵を使い、俺はソアラの部屋へズカズカと入って行く。と、そこに……
「すぴゅ~……ふるるるるる~……すぴゃ~……ふりゅりゅりゅりゅりゅ~……」
相変わらず、独特な寝息を立てて気持よさそうに寝ているソアラがいた。
流石に寝る時には変身リングは外しているのか、今はエルフ本来の姿に戻っている。
そんなことより、だ。
なんて寝相の悪いことか。掛け布団はあらぬところへ押しやられ、寝間着は開けて形の良い小さなオヘソが丸見えになっていた。
どうやら、寝間着の下に肌着の類は身に着けていないらしく、ややもすれば、下乳くらいは見えてしまいそうな捲れ具合だ。
てか、女の子が腹をまる出しで寝るとか、もうね?
今が暖かい時期ということもあり、夜になってもそこまで冷えることはないとはいえ、こんな寝方をしていればそのうち風邪をひくぞ?
寝る時は腹巻でもするように勧めるか?
しかし、上下がズボンとシャツに別れたウエアタイプの寝間着だからよかったものの、もしこれがワンピースタイプの寝間着だったら、大惨事になっていたところだったな。
ちなみに、この寝間着はアグリスタに到着したその夜に、日用雑貨と合わせて買ったものだ。
勿論、支払いは全額俺負担である。
「ふにゅ~、もっと食べられるからジャンジャン持ってきてください~、にゅふふふっ……」
微妙にベタなネタから外れた寝言を言いつつ、ソアラは露わになったお腹をポリポリと掻く。
夢の中でも何か食ってるのか、この食いしん坊は……
てか、これが年頃な娘の寝姿とはとても思えんな。こんなんじゃ、千年の恋だって一夜で消し飛びそうだ。
っと、そんなことはどうでもいいとして。
「お~い、ソアラ、朝だぞ。起きろ」
「う~、ん……もう少し……ムニュムニュ……おかわり……」
ソアラの肩を揺らし起こそうとするが、ソアラは俺の手から逃れるようにゴロリと寝返りを打つと、今度は尻を無造作にボリボリと掻きだした。
年頃の娘とは一体……そして、まだ何かを食うのか……
現在時刻は日の出少し前。
昨夜、起きられる自信がないから起こして欲しい、とソアラから頼まれていたので起こしに来てみればこの有様だ。
ちなみに俺は元々朝が強いタイプなうえ、オプション機能のアラームで寝過ごすこともなく時間通りにバッチリ起きていた。
最初はドアの外からノックや声掛けをしていたのだが、一向に起きて来る気配がなかったので、朝の仕込みをしていた女将さんに事情を説明し合鍵を借り、こうして直に起こしに来た、というわけだ。
こんな残念な娘ではあるが、ソアラも曲がりなりにもいい歳をした女性ということで無断で部屋に入るのはどうかと思ったのだが、かといって大声を出しては他のお客の迷惑になってしまう。
多くの宿泊客が、未だ就寝中の時間だからな。
そのため、こうして強行手段を取らざるを得なかった、というわけだ。
そう。これは仕方のないことなのである。
寝ているのをいいことに、ちょっとイヤらしいイタズラをしようとか、そんなやましい気持ちはこれっぽっちもない。
持っていないといったら、持っていない。
それに、セリカの見送りをすると言い出したのは他でもない、ソアラ自身だった。
俺は善意から起こしに来てあげたに過ぎないのだ。
はい、理論武装完了っと。これで何をしても俺の正当性は保証される……はずだ!
さて、んじゃ本格的に起こすとするか。
正直、そろそろマジで準備を始めないと、イオスとの待ち合わせにすら時間的に厳しい状況になっていた。
「ソアラ、いい加減起きろ。セリカの見送りに行くんだろ?」
そして、もう一度ソアラの肩を掴み、さっきより強めに揺すってみるのだが、
「行くぅ~……すぴゃ~……でも、食べりゅ~」
と、行くと言いながらまた寝るのか……てか、何を食う気だ?
それとも、これは何か? たまたま、寝言が返事をしているように聞こえているだけなのか?
まぁ、どちらにせよ随分と器用なことをするものだ。
よろしい、ならばこちらにも考えがる。
以前にもやった“お母さん”になって起こしてやろうかと思ったが、同じことをしては芸がない。
そこで、
「そろそろ時間的にギリギリだぞ? このままだと見送りに間に合わないから、俺が着替えさせてやろうか? そうすれば、もう少しは寝てられるぞ?」
と、お着替えを手伝うことを申し出た。
「……うん?」
よし。言質は取った。
どこかイントネーションが違うような気がしなくもないが、当方、了解を得たと認識しました。
これで何をしても許される……はずだ! 喩え、それが寝言だとしても!
着替えるための替えの服など全然用意していないが、まぁ、そんなものはひん剥いた後にでも考えれはいいことだ。
「はい。じゃあまずは体を起こすっ!」
「ふにゅ~……」
というわけで、無理やりソアラの手を取って上半身を起こす。
引っ張る力が強かったのか、勢い余ってソアラの首がカクンカクンしていたが、これでも本人に起きる気配は一切なし。
思った以上にこの子の神経は図太いようだ。
一応、体を起こしたはいいが、本人が寝ている所為で体に力が入っておらず、このまま手を放すせばまたすぐにクタっと倒れてしまう。
そこで、俺は亜空間倉庫からエテナイトを取り出すことにした。
こいつで後ろからソアラを支えもらおう、という考えだ。
てなわけで、エテナイトを解放。
ベッドの上に直接エテナイトを出した所為か、ベッドからミシミシミシミシっ! というとんでもない音が聞こえて来た。
なりは小さいが、これで重金属の塊だからな。コイツは見かけによらず結構な重量があるのだ。
だが、まぁ、ただちに影響はないだろう。……ないだろう。たぶん。
でも、後で壊れたとかは嫌なので、一応スキル【構造解析】でベッドの損傷度を確認しつつ、ヒビが入っていた部分をスキル【結合】でちゃちゃっと補修しておく。
これでよし。
ベッドの補修後、予定通りエテナイトにソアラの背中を支えてもらい、俺は早速ソアラの寝間着の裾へと手を伸ばす……が、このままでは脱がせられないな。
ソアラが着ている寝間着はボタン留めのシャツではなく、頭を通す貫頭衣タイプだ。手が下がっている状態では脱がすに脱がせられない。
なのでエテナイトを巧みに使い、ソアラの両手を万歳のように持ち上げさせる。
これでよしっ!
「ん……んん?」
「さぁ~て、ぬぎぬぎしましょうねぇ~」
そうして、俺は指をワキワキさせながら改めてソアラの寝間着の裾に手を伸ばすと、裾を掴み、ゆっくりと上げていく。
まず現れたのは肌理の細かい白い肌だった。次いで小さなオヘソが顔をだし、更に少し窪んだ鳩尾を通過。
少しばかり膨らんだ丘へと差し掛かった時……
「スグミ……さん……?」
眠たげな虚ろな目をしぱしぱさせたソアラと目が合った。
「……おはようさん」
「おはよう……ございまふ……ふぁ~……」
朝の挨拶を交わし、ソアラと暫し無言のまま見つめ合う。と、ソアラは何か違和感があったのか、視線を一度下に向けてから、俺へと戻す。
「……あの、えっと、スグミさんは一体何をしているのでしょうか?」
「見て分からんか? ソアラの服を脱がせようとしてんだよ」
「………………はぁ、そうですか………………っ!?!?
って、何、然も当たり前みたいに言ってるんですかっ!?」
「うぉっ! げふんっ!!」
ようやっと脳のスイッチが入ったらしいソアラに勢いよくもろ手で突き飛ばされ、俺はものの見事にベッドから転落させられた。
力自体は大したことはなかったのだが、俺のフィジカルはクソザコな上に、居た場所がベッドの淵だった所為もありバランスを崩し、敢え無く転倒し床の上に転がるはめになってしまった。
所謂、床ペロ状態だ。しかも、お陰で背中を床にぶつけ、痛いったらない。
「いててて、何んするんだよ。痛いじゃないか」
「痛いじゃないか、じゃないですよっ!! 女の子の部屋に忍び込んで、勝手にふ、ふっ、ふ、服を脱がそうとかっ! 何考えてるんですかっ!
スグミさんは変態なんですかっ!? 変態なんでしょ!! 変態だぁっ!!」
変な三段活用をするでない。
「衛兵さぁ~ん! ここに変態がっ! 変態が居ますっ!」
一人パニックに陥りギャーギャーと騒ぐソアラ。
流石にこのまま放置しておくと、他の宿泊客の迷惑にもなるので、俺はさっさと立ち上がると騒ぐソアラを一喝して黙らせた。
「黙れっ、小娘っ!」
「はうっ!?」
「あんまり騒ぐと他の客の迷惑だろうが。時間を考えろ時間を」
「うっ……で、でも、女の子の部屋に勝手に忍び込むような変態な人に、そんな正論言われたくないんですけど……」
「あのな? 人のことをヘンタイヘンタイと言うが、まずはそもそも俺がなんでここに居るのか、その理由を考えたらどうだ?」
「理由って……そ、そんなの私のことを襲いにゴニョゴニョ……」
自分で言ってて恥ずかしくなったのか、最後の方が尻すぼみに消えて行った。
「はぁ~、そう言う色気のある話は、その“ちっぱい”を少しは育ててから言え。この断崖絶壁娘が」
俺は薄っぺらいソアラの胸部に視線を向けると、憐れみ交じりにため息を吐いた。
俺は断然、巨乳派なのだっ! 大きいのは正義(“性戯”でも強ち間違いではない)なのであるっ!
更にいえば、俺の好みは包容力のある落ち着いた大人な女性だ。
流石にソアラのように十近くも歳が離れている上、キャピキャピした若い娘は守備範囲外である。
勿論、ソアラの容姿は十分に可愛いとは思う。が、それがつまり性欲の対象になるかといえば、まったくの別問題の話しだ。
「ひっどっ! 言うに事欠いてなんてことをっ!」
「酷いもクソもあるか。事実だろうが。
そんなことより、昨日の夜ソアラが俺に何を頼んだのかよ~く思い出してみ?」
「そんなことっ!? 私の胸はそんなことなんですかっ!」
何か、ソアラの心の中の禁足地にでも踏み入ってしったのか、鬼の様な形相で睨まれたのだが……
「大体、昨日私がスグミさんに何をお願……い……したっ……て………………あっ」
どうやら、話しているうちにいろいろと思い出して来たのだろう。
途端、背後から視認出来る程に吹き上がっていた怒りのオーラと、悪鬼羅刹の如き形相が、スンっと引っ込んでいった。
「さて、んじゃソアラに確認なんだが、昨日、早い時間に起きられる自信がないから起こして欲しいと頼んだのは誰だったか?」
「あっ、えっと……その……私、です。はい」
攻勢一転。さっきまでの威勢は何処へやら。ソアラは借りて来た猫よろしく急にしおしおと大人しくなってしまった。
「そうだな。セリカの見送りに行きたいといったのは?」
「私……です」
「その所為で宿を出るのが予定より早くなるけど構わないって言ったのは?」
「……私、です。
でっ、でもっ! 何も部屋に入って来る必要はないじゃないですかっ! ドアの外から声を掛けてくれれば……」
「んなもん、やったに決まってるだろ。何度呼びかけたと思ってるんだ?
それでも、全然起きなかったんだよ。
だから仕方なしに、仕込みしていた女将さんに事情を説明して合鍵を借りるはめになったんだろうが」
「うっ、うぅ……で、でもっでもっ! 服を脱がせるのはやり過ぎだと思いますっ!」
俺も、その意見には激しく同意する。俺自身、ちょっとやり過ぎたかなぁ~、とは思っていたのだ。
だがっ! ここでそれを認めてしまうとソアラがまた調子に乗ってしまうので、あくまで強気な姿勢を崩さず押し通す。
喩え間違った主義主張だとしいも、臆することなく声高に押し通せば、なんだか正論を言っているぽく聞こえるものだ。
「何を言ってんだ? “着替えさせるぞ”って聞いたら“うん”って答えたのはソアラだろ?」
「言ってませんよそんなことっ!」
「いいや、言った。確かに俺は聞いたからな」
まぁ、半分以上……という九分九厘寝言ではあったが、言ったことに違いはない。
「大体、さっきからソアラは俺のことを批難してばかりいるが、俺が本当に悪いのか?
そもそも、ソアラが俺の手を借りず、一人で起きることが出来ていたのなら、こんなことにはならなかったんじゃないのか?」
と、俺がソアラの服を脱がせようとしていたことと、ソアラが起きられなかったという論点をこっそり入れ替える。
どう考えても、寝ている女の子の服を脱がそうとしていた方が100パーセント悪いのだが、まぁ、そんなことはおくびにすら出さない。
「そっ、それは、その……確かにその通り、ですけど……でもっ!」
冷静になって考えれば、論点を逸らされたことに気づけたかもしれないが、回転数が上がっていない寝起きの頭ではそんな考えに至らなかったのか、一瞬自分の非を認めかけるソアラ。
だが、そこで一歩踏みとどまり、尚も食い下がろうと奮闘するが、それを俺は手で制した。
「言っておくが、俺がソアラを着替えさせようとしたのも、セリカの見送りに間に合うようにするためだからな?
ソアラの目が覚めた時に、すぐにでも宿を発てるよう、着替えだけでも先に終わらせておいてやろうという、俺の善意からだ。
そんな善意すら、ソアラは完全否定するのか?」
「うっ、うぐぐ、うぐぐぐぐ……」
善意、という言葉に少々たじろぐソアラ。
根が素直で良い子なだけに、人の言葉を完全否定出来ないんだろうな。
「もしかしたら、本当にそうなのかもしれない」なんて本気で思っていそうだ。
当然、ウソなんですけどね。ただちょっとエッチィイタズラをしてソアラが慌てふためくところを見て和もうと思っていただけです。はい。
「で、でもっ! でもですねっ!」
「でも、なんだ? 起こして欲しいと頼んだのは他でもないソアラ自身だし、セリカの見送りをしたいと言ったのもソアラなら、起こしに来ても起きなかったのもソアラだ。それはさっき自分で認めただろ?
俺は頼まれていたことをしただけだ。俺のどこに非があると言うのかね? ん?」
「それは……そうかもですけど、そうかもですけどっ!
その理論は何がおかしいですよっ! 絶対におかしいですっ!」
「おかしいって、どこがじゃ?」
「どこがって言われても……」
「なぜじゃ?」
「何故ってそれは、えっと……えっと……」
「どうしてじゃ?」
「ぐぬ、ぐぬぬぬっ……」
言葉が返せないソアラを、某お笑い芸人の往年のギャグ風に追い立てると、ついには震えた唸り声しか上げなくってしまった。
とはいえ、震えているのは声だけではなかったが。
よくよく見れば、声だけでなく何故か堅く握りしめた右の拳も一緒に震えていた。
うむ。これは間違いなく危険な兆候だな。
浅い経験ではあるが、これ以上追い詰めると口撃ならぬ物理的な攻撃が来そうなので、そろそろ引き上げることにしよう。そうしよう。痛いのはゴメンだ。
まぁ、俺としては見たいものは見られたので、大変に満足している。
「さて、ソアラで十分遊んだことだし、ソアラももう目は覚めただろ?
俺は下で待ってるから、さっさと着替えと荷物の纏めを済ませて降りて来いよ」
と、俺は何事なかったかのように部屋を出ようと扉へと向かう。
「ちょっ! でって、なんですかスグミさんっ! でって! もぉっ!! また私のことからかってたんですねっ!」
「ちなみにだが、セリカの見送りに行きたいなら、もう宿を出ないと時間がマジでギリギリだからな? 急いだほうがいいぞ?」
「~~~~~~~っ!」
後ろで何やらソアラが捲し立てていたが、俺はそんなことは気にせず後ろ手に手をヒラヒラと振ると、悠々と部屋を出て行った。
さて、今から着替えとなと多少の時間はかかるだろう。
それまで、コーヒーの一杯でも飲みながら待つとしますかね。
プロットの段階ではちゃんとあったんですよ。プロットの段階では(言い訳)
というわけで、四〇話の終わりの部分をちょっことだけ加筆修正しました。
大したことは書いてませんが、気になる方はどうぞ。
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ガチャ
女将さんから借りた鍵を使い、俺はソアラの部屋へズカズカと入って行く。と、そこに……
「すぴゅ~……ふるるるるる~……すぴゃ~……ふりゅりゅりゅりゅりゅ~……」
相変わらず、独特な寝息を立てて気持よさそうに寝ているソアラがいた。
流石に寝る時には変身リングは外しているのか、今はエルフ本来の姿に戻っている。
そんなことより、だ。
なんて寝相の悪いことか。掛け布団はあらぬところへ押しやられ、寝間着は開けて形の良い小さなオヘソが丸見えになっていた。
どうやら、寝間着の下に肌着の類は身に着けていないらしく、ややもすれば、下乳くらいは見えてしまいそうな捲れ具合だ。
てか、女の子が腹をまる出しで寝るとか、もうね?
今が暖かい時期ということもあり、夜になってもそこまで冷えることはないとはいえ、こんな寝方をしていればそのうち風邪をひくぞ?
寝る時は腹巻でもするように勧めるか?
しかし、上下がズボンとシャツに別れたウエアタイプの寝間着だからよかったものの、もしこれがワンピースタイプの寝間着だったら、大惨事になっていたところだったな。
ちなみに、この寝間着はアグリスタに到着したその夜に、日用雑貨と合わせて買ったものだ。
勿論、支払いは全額俺負担である。
「ふにゅ~、もっと食べられるからジャンジャン持ってきてください~、にゅふふふっ……」
微妙にベタなネタから外れた寝言を言いつつ、ソアラは露わになったお腹をポリポリと掻く。
夢の中でも何か食ってるのか、この食いしん坊は……
てか、これが年頃な娘の寝姿とはとても思えんな。こんなんじゃ、千年の恋だって一夜で消し飛びそうだ。
っと、そんなことはどうでもいいとして。
「お~い、ソアラ、朝だぞ。起きろ」
「う~、ん……もう少し……ムニュムニュ……おかわり……」
ソアラの肩を揺らし起こそうとするが、ソアラは俺の手から逃れるようにゴロリと寝返りを打つと、今度は尻を無造作にボリボリと掻きだした。
年頃の娘とは一体……そして、まだ何かを食うのか……
現在時刻は日の出少し前。
昨夜、起きられる自信がないから起こして欲しい、とソアラから頼まれていたので起こしに来てみればこの有様だ。
ちなみに俺は元々朝が強いタイプなうえ、オプション機能のアラームで寝過ごすこともなく時間通りにバッチリ起きていた。
最初はドアの外からノックや声掛けをしていたのだが、一向に起きて来る気配がなかったので、朝の仕込みをしていた女将さんに事情を説明し合鍵を借り、こうして直に起こしに来た、というわけだ。
こんな残念な娘ではあるが、ソアラも曲がりなりにもいい歳をした女性ということで無断で部屋に入るのはどうかと思ったのだが、かといって大声を出しては他のお客の迷惑になってしまう。
多くの宿泊客が、未だ就寝中の時間だからな。
そのため、こうして強行手段を取らざるを得なかった、というわけだ。
そう。これは仕方のないことなのである。
寝ているのをいいことに、ちょっとイヤらしいイタズラをしようとか、そんなやましい気持ちはこれっぽっちもない。
持っていないといったら、持っていない。
それに、セリカの見送りをすると言い出したのは他でもない、ソアラ自身だった。
俺は善意から起こしに来てあげたに過ぎないのだ。
はい、理論武装完了っと。これで何をしても俺の正当性は保証される……はずだ!
さて、んじゃ本格的に起こすとするか。
正直、そろそろマジで準備を始めないと、イオスとの待ち合わせにすら時間的に厳しい状況になっていた。
「ソアラ、いい加減起きろ。セリカの見送りに行くんだろ?」
そして、もう一度ソアラの肩を掴み、さっきより強めに揺すってみるのだが、
「行くぅ~……すぴゃ~……でも、食べりゅ~」
と、行くと言いながらまた寝るのか……てか、何を食う気だ?
それとも、これは何か? たまたま、寝言が返事をしているように聞こえているだけなのか?
まぁ、どちらにせよ随分と器用なことをするものだ。
よろしい、ならばこちらにも考えがる。
以前にもやった“お母さん”になって起こしてやろうかと思ったが、同じことをしては芸がない。
そこで、
「そろそろ時間的にギリギリだぞ? このままだと見送りに間に合わないから、俺が着替えさせてやろうか? そうすれば、もう少しは寝てられるぞ?」
と、お着替えを手伝うことを申し出た。
「……うん?」
よし。言質は取った。
どこかイントネーションが違うような気がしなくもないが、当方、了解を得たと認識しました。
これで何をしても許される……はずだ! 喩え、それが寝言だとしても!
着替えるための替えの服など全然用意していないが、まぁ、そんなものはひん剥いた後にでも考えれはいいことだ。
「はい。じゃあまずは体を起こすっ!」
「ふにゅ~……」
というわけで、無理やりソアラの手を取って上半身を起こす。
引っ張る力が強かったのか、勢い余ってソアラの首がカクンカクンしていたが、これでも本人に起きる気配は一切なし。
思った以上にこの子の神経は図太いようだ。
一応、体を起こしたはいいが、本人が寝ている所為で体に力が入っておらず、このまま手を放すせばまたすぐにクタっと倒れてしまう。
そこで、俺は亜空間倉庫からエテナイトを取り出すことにした。
こいつで後ろからソアラを支えもらおう、という考えだ。
てなわけで、エテナイトを解放。
ベッドの上に直接エテナイトを出した所為か、ベッドからミシミシミシミシっ! というとんでもない音が聞こえて来た。
なりは小さいが、これで重金属の塊だからな。コイツは見かけによらず結構な重量があるのだ。
だが、まぁ、ただちに影響はないだろう。……ないだろう。たぶん。
でも、後で壊れたとかは嫌なので、一応スキル【構造解析】でベッドの損傷度を確認しつつ、ヒビが入っていた部分をスキル【結合】でちゃちゃっと補修しておく。
これでよし。
ベッドの補修後、予定通りエテナイトにソアラの背中を支えてもらい、俺は早速ソアラの寝間着の裾へと手を伸ばす……が、このままでは脱がせられないな。
ソアラが着ている寝間着はボタン留めのシャツではなく、頭を通す貫頭衣タイプだ。手が下がっている状態では脱がすに脱がせられない。
なのでエテナイトを巧みに使い、ソアラの両手を万歳のように持ち上げさせる。
これでよしっ!
「ん……んん?」
「さぁ~て、ぬぎぬぎしましょうねぇ~」
そうして、俺は指をワキワキさせながら改めてソアラの寝間着の裾に手を伸ばすと、裾を掴み、ゆっくりと上げていく。
まず現れたのは肌理の細かい白い肌だった。次いで小さなオヘソが顔をだし、更に少し窪んだ鳩尾を通過。
少しばかり膨らんだ丘へと差し掛かった時……
「スグミ……さん……?」
眠たげな虚ろな目をしぱしぱさせたソアラと目が合った。
「……おはようさん」
「おはよう……ございまふ……ふぁ~……」
朝の挨拶を交わし、ソアラと暫し無言のまま見つめ合う。と、ソアラは何か違和感があったのか、視線を一度下に向けてから、俺へと戻す。
「……あの、えっと、スグミさんは一体何をしているのでしょうか?」
「見て分からんか? ソアラの服を脱がせようとしてんだよ」
「………………はぁ、そうですか………………っ!?!?
って、何、然も当たり前みたいに言ってるんですかっ!?」
「うぉっ! げふんっ!!」
ようやっと脳のスイッチが入ったらしいソアラに勢いよくもろ手で突き飛ばされ、俺はものの見事にベッドから転落させられた。
力自体は大したことはなかったのだが、俺のフィジカルはクソザコな上に、居た場所がベッドの淵だった所為もありバランスを崩し、敢え無く転倒し床の上に転がるはめになってしまった。
所謂、床ペロ状態だ。しかも、お陰で背中を床にぶつけ、痛いったらない。
「いててて、何んするんだよ。痛いじゃないか」
「痛いじゃないか、じゃないですよっ!! 女の子の部屋に忍び込んで、勝手にふ、ふっ、ふ、服を脱がそうとかっ! 何考えてるんですかっ!
スグミさんは変態なんですかっ!? 変態なんでしょ!! 変態だぁっ!!」
変な三段活用をするでない。
「衛兵さぁ~ん! ここに変態がっ! 変態が居ますっ!」
一人パニックに陥りギャーギャーと騒ぐソアラ。
流石にこのまま放置しておくと、他の宿泊客の迷惑にもなるので、俺はさっさと立ち上がると騒ぐソアラを一喝して黙らせた。
「黙れっ、小娘っ!」
「はうっ!?」
「あんまり騒ぐと他の客の迷惑だろうが。時間を考えろ時間を」
「うっ……で、でも、女の子の部屋に勝手に忍び込むような変態な人に、そんな正論言われたくないんですけど……」
「あのな? 人のことをヘンタイヘンタイと言うが、まずはそもそも俺がなんでここに居るのか、その理由を考えたらどうだ?」
「理由って……そ、そんなの私のことを襲いにゴニョゴニョ……」
自分で言ってて恥ずかしくなったのか、最後の方が尻すぼみに消えて行った。
「はぁ~、そう言う色気のある話は、その“ちっぱい”を少しは育ててから言え。この断崖絶壁娘が」
俺は薄っぺらいソアラの胸部に視線を向けると、憐れみ交じりにため息を吐いた。
俺は断然、巨乳派なのだっ! 大きいのは正義(“性戯”でも強ち間違いではない)なのであるっ!
更にいえば、俺の好みは包容力のある落ち着いた大人な女性だ。
流石にソアラのように十近くも歳が離れている上、キャピキャピした若い娘は守備範囲外である。
勿論、ソアラの容姿は十分に可愛いとは思う。が、それがつまり性欲の対象になるかといえば、まったくの別問題の話しだ。
「ひっどっ! 言うに事欠いてなんてことをっ!」
「酷いもクソもあるか。事実だろうが。
そんなことより、昨日の夜ソアラが俺に何を頼んだのかよ~く思い出してみ?」
「そんなことっ!? 私の胸はそんなことなんですかっ!」
何か、ソアラの心の中の禁足地にでも踏み入ってしったのか、鬼の様な形相で睨まれたのだが……
「大体、昨日私がスグミさんに何をお願……い……したっ……て………………あっ」
どうやら、話しているうちにいろいろと思い出して来たのだろう。
途端、背後から視認出来る程に吹き上がっていた怒りのオーラと、悪鬼羅刹の如き形相が、スンっと引っ込んでいった。
「さて、んじゃソアラに確認なんだが、昨日、早い時間に起きられる自信がないから起こして欲しいと頼んだのは誰だったか?」
「あっ、えっと……その……私、です。はい」
攻勢一転。さっきまでの威勢は何処へやら。ソアラは借りて来た猫よろしく急にしおしおと大人しくなってしまった。
「そうだな。セリカの見送りに行きたいといったのは?」
「私……です」
「その所為で宿を出るのが予定より早くなるけど構わないって言ったのは?」
「……私、です。
でっ、でもっ! 何も部屋に入って来る必要はないじゃないですかっ! ドアの外から声を掛けてくれれば……」
「んなもん、やったに決まってるだろ。何度呼びかけたと思ってるんだ?
それでも、全然起きなかったんだよ。
だから仕方なしに、仕込みしていた女将さんに事情を説明して合鍵を借りるはめになったんだろうが」
「うっ、うぅ……で、でもっでもっ! 服を脱がせるのはやり過ぎだと思いますっ!」
俺も、その意見には激しく同意する。俺自身、ちょっとやり過ぎたかなぁ~、とは思っていたのだ。
だがっ! ここでそれを認めてしまうとソアラがまた調子に乗ってしまうので、あくまで強気な姿勢を崩さず押し通す。
喩え間違った主義主張だとしいも、臆することなく声高に押し通せば、なんだか正論を言っているぽく聞こえるものだ。
「何を言ってんだ? “着替えさせるぞ”って聞いたら“うん”って答えたのはソアラだろ?」
「言ってませんよそんなことっ!」
「いいや、言った。確かに俺は聞いたからな」
まぁ、半分以上……という九分九厘寝言ではあったが、言ったことに違いはない。
「大体、さっきからソアラは俺のことを批難してばかりいるが、俺が本当に悪いのか?
そもそも、ソアラが俺の手を借りず、一人で起きることが出来ていたのなら、こんなことにはならなかったんじゃないのか?」
と、俺がソアラの服を脱がせようとしていたことと、ソアラが起きられなかったという論点をこっそり入れ替える。
どう考えても、寝ている女の子の服を脱がそうとしていた方が100パーセント悪いのだが、まぁ、そんなことはおくびにすら出さない。
「そっ、それは、その……確かにその通り、ですけど……でもっ!」
冷静になって考えれば、論点を逸らされたことに気づけたかもしれないが、回転数が上がっていない寝起きの頭ではそんな考えに至らなかったのか、一瞬自分の非を認めかけるソアラ。
だが、そこで一歩踏みとどまり、尚も食い下がろうと奮闘するが、それを俺は手で制した。
「言っておくが、俺がソアラを着替えさせようとしたのも、セリカの見送りに間に合うようにするためだからな?
ソアラの目が覚めた時に、すぐにでも宿を発てるよう、着替えだけでも先に終わらせておいてやろうという、俺の善意からだ。
そんな善意すら、ソアラは完全否定するのか?」
「うっ、うぐぐ、うぐぐぐぐ……」
善意、という言葉に少々たじろぐソアラ。
根が素直で良い子なだけに、人の言葉を完全否定出来ないんだろうな。
「もしかしたら、本当にそうなのかもしれない」なんて本気で思っていそうだ。
当然、ウソなんですけどね。ただちょっとエッチィイタズラをしてソアラが慌てふためくところを見て和もうと思っていただけです。はい。
「で、でもっ! でもですねっ!」
「でも、なんだ? 起こして欲しいと頼んだのは他でもないソアラ自身だし、セリカの見送りをしたいと言ったのもソアラなら、起こしに来ても起きなかったのもソアラだ。それはさっき自分で認めただろ?
俺は頼まれていたことをしただけだ。俺のどこに非があると言うのかね? ん?」
「それは……そうかもですけど、そうかもですけどっ!
その理論は何がおかしいですよっ! 絶対におかしいですっ!」
「おかしいって、どこがじゃ?」
「どこがって言われても……」
「なぜじゃ?」
「何故ってそれは、えっと……えっと……」
「どうしてじゃ?」
「ぐぬ、ぐぬぬぬっ……」
言葉が返せないソアラを、某お笑い芸人の往年のギャグ風に追い立てると、ついには震えた唸り声しか上げなくってしまった。
とはいえ、震えているのは声だけではなかったが。
よくよく見れば、声だけでなく何故か堅く握りしめた右の拳も一緒に震えていた。
うむ。これは間違いなく危険な兆候だな。
浅い経験ではあるが、これ以上追い詰めると口撃ならぬ物理的な攻撃が来そうなので、そろそろ引き上げることにしよう。そうしよう。痛いのはゴメンだ。
まぁ、俺としては見たいものは見られたので、大変に満足している。
「さて、ソアラで十分遊んだことだし、ソアラももう目は覚めただろ?
俺は下で待ってるから、さっさと着替えと荷物の纏めを済ませて降りて来いよ」
と、俺は何事なかったかのように部屋を出ようと扉へと向かう。
「ちょっ! でって、なんですかスグミさんっ! でって! もぉっ!! また私のことからかってたんですねっ!」
「ちなみにだが、セリカの見送りに行きたいなら、もう宿を出ないと時間がマジでギリギリだからな? 急いだほうがいいぞ?」
「~~~~~~~っ!」
後ろで何やらソアラが捲し立てていたが、俺はそんなことは気にせず後ろ手に手をヒラヒラと振ると、悠々と部屋を出て行った。
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