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第1章 二人の出会い
決着
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長い銃身から火花が放たれる。
ベルテは思わず身を丸める。その弾は間違いなく自分の体を貫通する――はずであった。
マルカムの銃口は下を向き、地面が大きく削られていた。
「......!」
右手を見つめるマルカム。うっすらと血がにじんでいた。
「危なかった」
頭上から聞こえる声。それは――
「静!」
ベルテがそう叫ぶ。
すっと地面に降り立つ静。
手には小さな細い串のようなものを持ち構えながら、マルカムを威圧する。
「......ふうん?サムライの飛び道具か」
「手裏剣ではない。小柄《こづか》である」
小柄《こづか》。それは刀に付属している小さな装飾具である。刃がついており、極めたものであれば武器として使うことができた。
じりじりと距離をはかる二人。
ベルテはそばのくぼみに身を隠す。
「分が悪くはありませんかね。そっちはちゃちな串。こっちは四五口径ロング・コルト弾があと四発。それともこの間のバーベキューに使うような細いナイフを持っているのですかね」
「ナイフにあらず。小太刀なり」
「いずれにせよ、レンジがなさすぎる。すばしっこいようだが、私の懐に飛び込むまで二発はお見舞いできる。どうです、ここで取引しませんか」
そっと銃口を下ろすマルカム。
油断せずにそれを静は見つめる。
「私が欲しいのは『武器』だ。金や食料は必要ありません。今から三〇分時間を差し上げます。その間に必要なものを持っていくがいいでしょう。『武器』以外ね。ああ、身に着けている『武器』はかまいませんよ。騎士道というやつです」
「武士の情けか、どうする」
静はベルテを見つめる。
ぱちぱちと瞬きをするベルテ。少し驚いた顔をしたが、静は|静かにうなずく。
ベルテは鍵を放り投げる。放物線を描いて、鍵の束はマルカムの前に落ちる。
その瞬間――マルカムは抜き撃つ。
最初から、二人を生かしておく気はなかったらしい。ピースメーカーから何発もの銃弾が乱れ飛ぶ。
しかし――
「うぎゃぁ!」
悲鳴をあげるマルカム。拳銃を落とし、両手で顔を抑える。指の合間から、血がどくどくと流れ出ていく。
それを見下ろしているのは――静。片手には長い刀を構えて。その刃にはマルカムの血をまといながら。
血をぬぐい、刀を背中の鞘に納める静。
「長さは四尺五寸。会津兼定が銘を刻んだ、大太刀『羚羊雪雫《れいようゆきのしずく》』の切れ味身をもって知ったであろう」
背中に隠していた大太刀。かつて祖父より賜った逸品である。
「武士の情けだ。それほど傷は深くはない」
ベルテは静の姿を見つめる。まるで戦場の天使のような静の姿を――
ベルテは思わず身を丸める。その弾は間違いなく自分の体を貫通する――はずであった。
マルカムの銃口は下を向き、地面が大きく削られていた。
「......!」
右手を見つめるマルカム。うっすらと血がにじんでいた。
「危なかった」
頭上から聞こえる声。それは――
「静!」
ベルテがそう叫ぶ。
すっと地面に降り立つ静。
手には小さな細い串のようなものを持ち構えながら、マルカムを威圧する。
「......ふうん?サムライの飛び道具か」
「手裏剣ではない。小柄《こづか》である」
小柄《こづか》。それは刀に付属している小さな装飾具である。刃がついており、極めたものであれば武器として使うことができた。
じりじりと距離をはかる二人。
ベルテはそばのくぼみに身を隠す。
「分が悪くはありませんかね。そっちはちゃちな串。こっちは四五口径ロング・コルト弾があと四発。それともこの間のバーベキューに使うような細いナイフを持っているのですかね」
「ナイフにあらず。小太刀なり」
「いずれにせよ、レンジがなさすぎる。すばしっこいようだが、私の懐に飛び込むまで二発はお見舞いできる。どうです、ここで取引しませんか」
そっと銃口を下ろすマルカム。
油断せずにそれを静は見つめる。
「私が欲しいのは『武器』だ。金や食料は必要ありません。今から三〇分時間を差し上げます。その間に必要なものを持っていくがいいでしょう。『武器』以外ね。ああ、身に着けている『武器』はかまいませんよ。騎士道というやつです」
「武士の情けか、どうする」
静はベルテを見つめる。
ぱちぱちと瞬きをするベルテ。少し驚いた顔をしたが、静は|静かにうなずく。
ベルテは鍵を放り投げる。放物線を描いて、鍵の束はマルカムの前に落ちる。
その瞬間――マルカムは抜き撃つ。
最初から、二人を生かしておく気はなかったらしい。ピースメーカーから何発もの銃弾が乱れ飛ぶ。
しかし――
「うぎゃぁ!」
悲鳴をあげるマルカム。拳銃を落とし、両手で顔を抑える。指の合間から、血がどくどくと流れ出ていく。
それを見下ろしているのは――静。片手には長い刀を構えて。その刃にはマルカムの血をまといながら。
血をぬぐい、刀を背中の鞘に納める静。
「長さは四尺五寸。会津兼定が銘を刻んだ、大太刀『羚羊雪雫《れいようゆきのしずく》』の切れ味身をもって知ったであろう」
背中に隠していた大太刀。かつて祖父より賜った逸品である。
「武士の情けだ。それほど傷は深くはない」
ベルテは静の姿を見つめる。まるで戦場の天使のような静の姿を――
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