マカロニ・オブ・バックウィード

八島唯

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第1章 二人の出会い

新たなる旅立ち

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「飛び道具は結局、接近戦では役に立たん。多勢であれば、勝ち目もあるが一対一の戦いであれば刀が勝つのが当然だ。拳銃の弾丸は線、それに対して刀の身は面を貫く」
 背中の大太刀の位置を正しながら、リズはマルカムを見下ろす。
「くそ......鍵束などに木をとられなければ......私の腕なら......」
「気づかなかったのか?」
 きょとんとした表情でリズはマルカムを見つめる。
 呆然とするマルカム。何に気づかなかったというのか。
「モールス信号だ」
 マルカムは思い出す。何でも最新式の通信方法――
「まばたきでリズに送ったのさ。『throw the key』とね」
 ほこりを払いながらベルテが立ち上がる。
「上院議員を目指そうというものが、無学では困ってしまうね。まったく」
 ベルテの皮肉めいた言葉にマルカムは打ちのめされる。
「なぜ......東の小国の野蛮人が......そんな......」
「居敬窮理、東洋にも科学の精神はござる」
 なんでもリズは祖父に手ほどきを受けたらしい。
「わが藩は常に新しいものを導入してきたのだ。しかし――なぜ薩長どもに――」
「話が変な方向に行きそうだからやめようか」
 そういいながら、ぽんとマルカムの前に袋を投げ出す。
「二日分の食料と水。それと薬だ。運が良ければ助かるかもね」
「武士の情け、情けは人の為ならず。巡り巡ってわが身なるかな。マルカムどのわかるかの?
?」
「なぜ、見逃す。とどめをささない」
 まあ、とベルテは遠くを見つめる。
「私たちもあんたの手下にひどいことしてしまったし。これでお互いちゃら、ということで」
 マルカムが何やら呪いのつぶやきを放つと、その場にばたんと倒れこむ。
「行こうか、リズ
 振り返りそう促すベルテ。
「もう馬が一頭しか残ってないな」
 それにひょいと乗るベルテ。そして手をリズに差し伸べる。
「一緒に行こうよ。リズ
 首をかしげるリズ
「――リズの家族を探しに。私の責任はもう果たしたようだし」
 そういいながら、燃えてしまった家を見つめるベルテ。
 無言でリズは馬に飛び乗る。そしてぎゅっとベルテを抱きしめた。
 「よかったのか?」
 |静(リズ)が馬をいなしながら背中のベルテにそう問う。
 うん、と頷くベルテ。
「武器商人として――まだ再興できるのでは」
 手綱を握りながら、そっと横にベルテは首を振る。
「大丈夫。武器を売る以外の生き方を教えてもらえそうだから。|静(リズ)に」
 そういいながらリズに背中を寄せる。
「路銀は十分にあるし、リズの家族を探すこともできる。新しい旅としては最高だね。これでパスタがあれば更に最高なんだけど」
「我が国には――」
 リズがそう答える。
「そば粉《バックウィード》で作ったパスタがある」
「そば粉《バックウィード)?そんなんでパスタが作れるの?」
「私は父に教えてもらった。次の街で手に入ったら、早速打ってやろう」
 ニコッとベルテが微笑む。

 乾燥した風が吹く。
 有刺鉄線が荒野を分断し、かつて西部劇の時代は終わろうとしていた――
 十九世紀末の、アメリカ西部の物語である。 

第1章完 
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