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第2章 クリューガー公国との戦い
ラディムとの関係
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「これは一年は戦えそうなくらいの、ストックですな」
小さな体を、羊皮紙の書類の山に埋まらせてそうイェルドはつぶやく。
「食料、武器、そのほか......最近実用化されたばかりの新型火薬もあります。クリューガー公はよっぽどお金持ちと見える。それとも、ただ単に放置していたのか。いずれにせよ、我々にとってはラッキーなことです」
短時間のうちに分析を済ませてしまうイェルドをじっと、ハルトウィンは見つめる。
先ほど大広間で『宮中クーデタ』ともいえる出来事を済ませていたのと同じく、城外でも戦闘が繰り広げられていた。その指揮をしていたのがこのイェルドである。切り札である『魔弾』を一切使用せず、そして全く被害もなく敵を鎮圧したその手並み。
信用して軍の指揮を任せたハルトウィンであったが、ここまでの実力とは正直思っていなかった。
正直、自分になぜ肩入れしてくれるのかが疑問なところもあったが、信用しても問題なさそうだなとハルトウィンは結論付けていた。
資料室がノックされる。年老いた男性が、茶を運んでくれたようだ。
「これは、レムケ卿。わざわざ申し訳ない」
「いえいえ、このようなことの方がおいぼれには似合っていますので。何か気になる部分はないですかな?」
レムケ卿。初老の騎士である。騎士とはいっても、この都市で若いころから参事官的な仕事をしてきたらしい。性格も穏やかで、かねてからラディム公太子と父であるアロイジウス公爵、そしてお目付け役であるフンメル準男爵のとの関係を心配していたらしい。立場としては当然公太子派で、今回のクーデタ後も一番ハルトウィンらに協力的であった。
「信用してよろしいかと思います。それ以外の兵士たちも、ほぼ公太子側に忠誠を誓うことを確約しました。この都市の一千近くの兵と、数十人の騎士は間違いなく動くでしょう。公太子ラディム=フォン=クリューガーのためならば」
イェルドの言。それをかみしめながら、ハルトウィンはラディムの部屋へと向かう。
ノックをして名を名乗るハルトウィン。扉に手をかけた段階でラディムが飛びだしてくる。
「辺境伯様......」
すがるようなラディムの視線。まだ少年問うこともあり、ハルトウィンの方が一まわり大きい。
『いいですか。絶対公太子の歓心と好意を失わないように。我々の唯一の権力基盤ですからね。まあ、公太子のほうがハルトウィン様をはなしてくれなさそうですが。変な意味ではなく――そう『親代わり』みたいな感じなのでしょうな』
うんざりするようなイェルドの助言。
手を引くようにハルトウィンを部屋に引き入れるラディム。
(むしろ男女の間の感情だったら、むしろ楽だったかもな......)
ラディムがハルトウィンに向けているその感情。それは明らかに『親愛』の感情に思われた。
生徒が教師に、子供が親に向けるようなその感情。
多分ラディム自身も初めてなのかもしれない。親からは対して相手にされず、また公太子という立場上、誰にも甘えることのできない日々。
「辺境伯様、この間は命を助けていただきありがとうございました!」
会うたびに出るその謝辞。今のところ多分それだけが、話題のすべてなのかもしれない。
「ハルトウィンでよろしい。皇太子殿下」
長い銀の髪をかき分け、そうつぶやく。
「では私もラディムと呼んでいただけないでしょうか」
「爵位が上の方をそのように」
首を振るラディム。
「私はハルトウィン様に恩のある身。ましてやハルトウィン様は年長であるのですから、ぜひ」
有無を言わさぬラディムの言葉に、押し切られるハルトウィン。
「では、ラディム......殿......でよろしいか」
満面の笑みでうなずくラディム。
ハルトウィンの頭の中にイェルドの意地の悪そうな笑みが浮かぶ。あわせてカレルの不機嫌そうな顔も――
小さな体を、羊皮紙の書類の山に埋まらせてそうイェルドはつぶやく。
「食料、武器、そのほか......最近実用化されたばかりの新型火薬もあります。クリューガー公はよっぽどお金持ちと見える。それとも、ただ単に放置していたのか。いずれにせよ、我々にとってはラッキーなことです」
短時間のうちに分析を済ませてしまうイェルドをじっと、ハルトウィンは見つめる。
先ほど大広間で『宮中クーデタ』ともいえる出来事を済ませていたのと同じく、城外でも戦闘が繰り広げられていた。その指揮をしていたのがこのイェルドである。切り札である『魔弾』を一切使用せず、そして全く被害もなく敵を鎮圧したその手並み。
信用して軍の指揮を任せたハルトウィンであったが、ここまでの実力とは正直思っていなかった。
正直、自分になぜ肩入れしてくれるのかが疑問なところもあったが、信用しても問題なさそうだなとハルトウィンは結論付けていた。
資料室がノックされる。年老いた男性が、茶を運んでくれたようだ。
「これは、レムケ卿。わざわざ申し訳ない」
「いえいえ、このようなことの方がおいぼれには似合っていますので。何か気になる部分はないですかな?」
レムケ卿。初老の騎士である。騎士とはいっても、この都市で若いころから参事官的な仕事をしてきたらしい。性格も穏やかで、かねてからラディム公太子と父であるアロイジウス公爵、そしてお目付け役であるフンメル準男爵のとの関係を心配していたらしい。立場としては当然公太子派で、今回のクーデタ後も一番ハルトウィンらに協力的であった。
「信用してよろしいかと思います。それ以外の兵士たちも、ほぼ公太子側に忠誠を誓うことを確約しました。この都市の一千近くの兵と、数十人の騎士は間違いなく動くでしょう。公太子ラディム=フォン=クリューガーのためならば」
イェルドの言。それをかみしめながら、ハルトウィンはラディムの部屋へと向かう。
ノックをして名を名乗るハルトウィン。扉に手をかけた段階でラディムが飛びだしてくる。
「辺境伯様......」
すがるようなラディムの視線。まだ少年問うこともあり、ハルトウィンの方が一まわり大きい。
『いいですか。絶対公太子の歓心と好意を失わないように。我々の唯一の権力基盤ですからね。まあ、公太子のほうがハルトウィン様をはなしてくれなさそうですが。変な意味ではなく――そう『親代わり』みたいな感じなのでしょうな』
うんざりするようなイェルドの助言。
手を引くようにハルトウィンを部屋に引き入れるラディム。
(むしろ男女の間の感情だったら、むしろ楽だったかもな......)
ラディムがハルトウィンに向けているその感情。それは明らかに『親愛』の感情に思われた。
生徒が教師に、子供が親に向けるようなその感情。
多分ラディム自身も初めてなのかもしれない。親からは対して相手にされず、また公太子という立場上、誰にも甘えることのできない日々。
「辺境伯様、この間は命を助けていただきありがとうございました!」
会うたびに出るその謝辞。今のところ多分それだけが、話題のすべてなのかもしれない。
「ハルトウィンでよろしい。皇太子殿下」
長い銀の髪をかき分け、そうつぶやく。
「では私もラディムと呼んでいただけないでしょうか」
「爵位が上の方をそのように」
首を振るラディム。
「私はハルトウィン様に恩のある身。ましてやハルトウィン様は年長であるのですから、ぜひ」
有無を言わさぬラディムの言葉に、押し切られるハルトウィン。
「では、ラディム......殿......でよろしいか」
満面の笑みでうなずくラディム。
ハルトウィンの頭の中にイェルドの意地の悪そうな笑みが浮かぶ。あわせてカレルの不機嫌そうな顔も――
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