13 / 35
第2章 クリューガー公国との戦い
ハレンスブルクへの行進
しおりを挟む
街道をゆく、部隊。先頭はクリューガー公太子の重歩兵部隊。高々と掲げれられるのは『クリューガーの薔薇と槍』の軍旗。
当初は、公太子の旗印を使おうと思っていたハルトウィンだったが、イェルドがそれを否定する。
『あくまでも、我々の行軍は正統な『クリューガー』家の当主がラディム様であるということを誇示することが重要です』
行軍の中央を行くのは、公太子ラディム=フォン=クリューガーの親衛部隊。城にあったありったけの豪華な鎧や、雄々しい馬を中心に百騎程度の部隊が行く。ラディムも葦毛の体格のいい馬にまたがって。
『民衆が同情するのは、領民に重税を課してころころと奥方を変える脂ぎった領主よりも、悲劇の王子様と相場が決まっています。ラディム公太子殿のカリスマが不明な以上、なるべく劇場的に民衆には印象付けた方がよいと思います』
これも、イェルドの進言に従い、公太子を前面に押し出す作戦。レムケ卿が軍列の指揮を行い、そうそうたる行軍である。
しかし、当のラディムはなぜかあたりをきょろきょろと見まわす。
『ハルトウィン様は申し訳ありませんが、しんがりをつとめていただきたい。この状況において、ゼーバルト辺境伯の軍が目立つのは、まったくもってマイナスです』
一番後方を行く、ハルトウィンの辺境伯軍。騎兵と銃歩兵の一団である。当初、ラディムがハルトウィンと一緒の行進を望んだのだが、それはかなわずこのような陣容となった。そのせいか、ハルトウィンのそばに控えるカレルの機嫌が、すこぶる良い。
クリューガー公太子軍がおおよそ五百、それに百のゼーバルト軍あわせて千もいかない部隊である。城塞都市ドレスタンの総兵力を動員すれば二千以上の兵を集めることは可能であった。しかし、これもイェルドの策である。
『兵は拙速をたっとびます。今のところ、公太子のクーデタは公爵の耳には入っていないようです。フンメル準男爵をはじめとした、公爵派のものは地下牢に閉じ込めたままですし。さしあたり、即応できる部隊を動かすことが肝要かと。目標は当然――商業都市ハレンスブルク!』
ハレンスブルクに駐在している軍の数はさして多くない。五百の公太子軍のみで攻略は十分であるだろう。最もその瞬間に、公太子が公爵に反旗を翻したことが明らかになるのだが。
『しかし、一つ尋ねたい』
『どうぞ』
『なぜあなたは、私にそこまで肩入れしてくださるのですか。そのあたりをお教え願いたい』
ふうん、を息をもらすイェルド。
『ハルトウィン様は、正直であられる』
イェルドはそう言ってから、逆に質問する。
『ハルトウィン様がなぜそれほどまで領主としての勤めに励まれるのか。単に功名心や単なる物欲というわけではあるまい』
声こそ少女のものであるが、口調は明らかに初老の男子のものであった。
『そうですね......自分でもそれははっきりしていませんが、政治の実権を持つ者の義務感でしょうか。自分の支配権下においては民に平穏な生活を保障してあげたい......といったところです』
少しの間の後、イェルドはうんとうなずく。
『それが答えですね。私があなたさまに仕える理由も』
行軍はすでにハレンスブルクの街道入り口に近づいていた。
それはハルトウィンにとって本格的な戦闘の初めての経験となるものだった。
当初は、公太子の旗印を使おうと思っていたハルトウィンだったが、イェルドがそれを否定する。
『あくまでも、我々の行軍は正統な『クリューガー』家の当主がラディム様であるということを誇示することが重要です』
行軍の中央を行くのは、公太子ラディム=フォン=クリューガーの親衛部隊。城にあったありったけの豪華な鎧や、雄々しい馬を中心に百騎程度の部隊が行く。ラディムも葦毛の体格のいい馬にまたがって。
『民衆が同情するのは、領民に重税を課してころころと奥方を変える脂ぎった領主よりも、悲劇の王子様と相場が決まっています。ラディム公太子殿のカリスマが不明な以上、なるべく劇場的に民衆には印象付けた方がよいと思います』
これも、イェルドの進言に従い、公太子を前面に押し出す作戦。レムケ卿が軍列の指揮を行い、そうそうたる行軍である。
しかし、当のラディムはなぜかあたりをきょろきょろと見まわす。
『ハルトウィン様は申し訳ありませんが、しんがりをつとめていただきたい。この状況において、ゼーバルト辺境伯の軍が目立つのは、まったくもってマイナスです』
一番後方を行く、ハルトウィンの辺境伯軍。騎兵と銃歩兵の一団である。当初、ラディムがハルトウィンと一緒の行進を望んだのだが、それはかなわずこのような陣容となった。そのせいか、ハルトウィンのそばに控えるカレルの機嫌が、すこぶる良い。
クリューガー公太子軍がおおよそ五百、それに百のゼーバルト軍あわせて千もいかない部隊である。城塞都市ドレスタンの総兵力を動員すれば二千以上の兵を集めることは可能であった。しかし、これもイェルドの策である。
『兵は拙速をたっとびます。今のところ、公太子のクーデタは公爵の耳には入っていないようです。フンメル準男爵をはじめとした、公爵派のものは地下牢に閉じ込めたままですし。さしあたり、即応できる部隊を動かすことが肝要かと。目標は当然――商業都市ハレンスブルク!』
ハレンスブルクに駐在している軍の数はさして多くない。五百の公太子軍のみで攻略は十分であるだろう。最もその瞬間に、公太子が公爵に反旗を翻したことが明らかになるのだが。
『しかし、一つ尋ねたい』
『どうぞ』
『なぜあなたは、私にそこまで肩入れしてくださるのですか。そのあたりをお教え願いたい』
ふうん、を息をもらすイェルド。
『ハルトウィン様は、正直であられる』
イェルドはそう言ってから、逆に質問する。
『ハルトウィン様がなぜそれほどまで領主としての勤めに励まれるのか。単に功名心や単なる物欲というわけではあるまい』
声こそ少女のものであるが、口調は明らかに初老の男子のものであった。
『そうですね......自分でもそれははっきりしていませんが、政治の実権を持つ者の義務感でしょうか。自分の支配権下においては民に平穏な生活を保障してあげたい......といったところです』
少しの間の後、イェルドはうんとうなずく。
『それが答えですね。私があなたさまに仕える理由も』
行軍はすでにハレンスブルクの街道入り口に近づいていた。
それはハルトウィンにとって本格的な戦闘の初めての経験となるものだった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる