この手がおひさまに届くまで

風庭 はなな

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なみだのおへんじ

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 きょうは空の青い日。
 だけど、紫苑しおんはベッドでねこんでいました。

 ごほごほ。
 くるしそうなせきが部屋へやにひびきます。

 「くるしいなあ……」

 紫苑しおんはもぐるおふとんの中で、自分のむねをつかみます。
 くるしくてたまりません。
 紫苑しおんの目から、なみだがながれました。

 もうすぐ半月はんつき
 おいしゃさんが言ったおわりの日。
 その日がちかくなっているのです。

 「くるしい、なあ……」

 つぶやいて、紫苑しおんはまた、なみだをながしました。

 「……とどくかなあ、おひさま」

 くるしくてたまらない中で、紫苑しおんは空に手をのばしました。
 

 
 
 ────紫苑しおんちゃん。




 ふと、どこからかそんな声がしました。
 ほんものなのか、げんちょうなのか、紫苑しおんにはわかりません。

 わからないけど、紫苑しおんは手をのばしたままへんじをしました。

 「なあ、に…?」

 だれがよんだのかわからないのに。
 それでも紫苑しおんはへんじをしました。

 「なあに……?」

 よわよわしくわらって、そうかえしました。
 その、すぐあとのことでした。

 「あれ……」

 ふしぎなことに、とつぜん、晴れていた空がくもりはじめたのです。
 ザアザアと、音をたてて雨がふりそそぎました。
 あのときとは、くらべものにならないくらい、大きな音で、おおつぶの雨でした。

 
 「…………泣いてくれるの?」


 とつぜんふりだしたたくさんの雨。
 紫苑しおんは空を見あげて、そうたずねました。
 すると、さらに雨がつよくふりそそぎました。

 まるで、へんじをするように。

 そうだよ、というかのように。

 
 いままでへんじのなかった空が、はじめてこたえてくれたと思い、紫苑しおんはうれしくなりました。


 「ありがとう」

 
 ゆっくり、よわよわしく、かのじょは空に手をのばします。



 「……わたしのために、泣いてくれて、ありがとう」



 空を見ながら、手をのばしながら。

 紫苑しおんは、目からなみだをながしてわらいました。

 うれしそうに。
 
 とても、うれしそうに。
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