列車に宿る女の子

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オアシス

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今日も勉強をしている。

列車に揺られて3時間。

目の前には海が広がっている。

乗客は珍しく2人。

僕と女の子。

ピンクのワンピースが映える。

お話ししてみたいな……。

きっと100回目の初恋だ。

僕とでは……年が釣り合わない。

ちらっと目配せする。

女の子はその度にニコッと微笑む。

海を見る。

この美しさは……小さな頃の思い出だ。

歳をとると……人肌が恋しくなる。

ああっ……このまま海にダイブしたいな。

「こんにちは!」

女の子の方から声をかけてきた。

チャンスだ!

でも……上手く喋ることができない。

「……何かな?」

そんなぶっきらぼうだったら、逃げちゃうぞ?

しっかりしなきゃ!

話題……話題は……?

「お兄ちゃん、あそぼっ?」

お兄ちゃん、だって?

嘘だ……。

こんな女の子のお兄ちゃんになれるんだったら……。

このまま流浪の民になってもいいや。

遊ぶって何をするの?

「どこまで旅するの?」

そうだ、 僕は旅人だ。

よく知ってるじゃないか?

まあ、珍しいよね。

地元の人でない限り、平日の昼間だから。

「どこか遠い世界かな?」

まるで文学者だ。薄っぺらな三文小説ってところか?

「私を連れて行ってくれる?」

「君はこの世界の方がいいはずだよ?」

なんか、普通の会話になっている。

「そんなことないよ?私なんか、誰にも好かれないから……」

可愛さゆえの僻みなのだろうか?子供のほうがかえって複雑だ。

「お兄ちゃんの方がよっぽど好かれそうだけど……」

そういえば、昔はそうだったかもしれない。

今は象牙の塔にこもっているだけなのだけど。

「ねえ、お兄ちゃん?」

女の子は僕の小さな手を握った。

何が何だか分からない。

そうだ、列車はどこを走っているんだろう?

「もうすぐ終わるよ。私の旅、そして、お兄ちゃんの旅」

そうか、もう終わりか……?

早かったな……。

「私のこと、好きですか?」

「ああっ、大好きだ」

「よかった。好きになってくれる人がいて」

不思議な女の子だ。

まるで夢のよう。

僕にとっては初めての告白だ。

これが本当の好きなのか?

「ありがとう、お兄ちゃん。さようなら……」

「さようなら。お元気で……」

僕は更なる高みを目指す。

女の子は終着地に住むらしい。

お互い一人ぼっちだ。

最後にぎゅっと抱きしめて。

まだ透き通った涙を拭ってあげて。


「さようなら」

「さようなら」

列車がゆっくりと動き出す。

もう一度ここに戻れるだろうか?

それもいいだろう。

彼女がそのままの女の子でいたのなら

僕はもう一度彼女を抱きしめるだろう。

大空を見上げて

透き通った涙を天に返そう。









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