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その1
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私が魔王という存在に注目を示し始めたのは、随分と昔のことである。小学生の頃、図書館にあった古びた伝記に、魔王と戦った人間のことが記載されていた。彼は勇敢にも、世界を脅かす強敵を一人で成敗し、最高の勇者として後の世に語り継がれることになった。
彼の名前はアルビノーニと言った。私もアルビノーニのようになりたいと心の底から思っていた。いつか、この世界に魔王が現れた時、この私が成敗して、第二のアルビノーニになりたいと思っていた。
それが今、現実になろうとしている。しかしながら、僕はアルビノーニほど勇敢ではない。だから、一人で戦うわけではない。私には同志がいた。皆それぞれ、幼い頃からアルビノーニ伝説を崇拝してきた、新時代の勇者の卵というわけだった。
「オーケー、みんな揃ったね。それじゃ、行くとしようか!」
私はグループの先頭に立って、みんなを鼓舞した。
「ザイザル、随分と様になってきたじゃないか。昔は憶病だったのに……」
私の古くからの友人で同志の一人でもあるメコンもまた、亢奮していた。
「これで明日から世界が平和になるんだな……」
私は天から授かった剣を高々と上げた。
「神様のご加護の元に、魔王討伐の成功を祈願いたします……」
私はこう言い終えて、魔王の住まう地への旅を始めた。
神様の統治する平和世界トロイツに魔王が現れたのは、一カ月前のことだった。世界に天変地異が起こり、国中の民は恐怖におびえた。神様を凌駕する魔王の誕生は、記録によると10世紀ぶりのことだったそうだ。神様の名のもとに集まった義勇兵たちが先んじて、魔王討伐に向かったが、誰一人帰ってくることはなかった。それ以降、誇りと命を懸けて魔王と戦う者は現れなかった。
私たちも最初は戦う気なんてなかった。世界最強と言われた義勇兵ですら勝ち目がない戦いに、素人が参加しても勝ち目がないことは明らかだった。アルビノーニに対する憧れは、所詮、憧れで終わってしまうはずだった。
そんな私の元に、旧友のメコンがやって来た。
「久しぶりだな、ザイザル」
「ああっ、何年ぶりだろうか……」
本来ならば、旧友との再会はもっと感動的であるはずだった。しかしながら、魔王の暴れ狂う世界で、そんな理想を唱えている余裕はなかった。
「この世界は、間もなく終わるのだろうか?」
メコンは悲しそうだった。
「何か未練でもあるのか?」
私はメコンに尋ねた。
「君はないのかい?」
「人はいつか死ぬんだ。それが多少早いくらいじゃないか……」
私はもはや、投げやりだった。そりゃ、生きられるものなら、もっと体を鍛えて、軍人よりもタフなフィジカルを身につけて、それこそ、魔王なんて簡単に倒せる勇者になりたいと思った。でも、魔王はそれを赦してくれないみたいだった。ひょっとして、本当にもう少し魔王の出現が遅かったら、私はアルビノーニのような勇者になれたのだろうか?魔王はそれを恐れて、私が成長する前に、この世界に現れたというのか……?
「そんなバカな……」
私はつい独り言を言ってしまった。メコンは、私の独り言については何も尋ねなかった。
「私は……せめて、恋と言う物をしてみたかった」
「……恋だって?」
私は思わず聞き返した。
「ああっ、子供を大人にしてくれるという、恋だ。私は未だかつて、人に恋をしたことがない。恋をしないまま、人生を終えるというのは、少し寂しいんじゃないかって思ってさ……」
メコンは苦笑した。
「恋……恋か」
そんな答え、私は想定外だった。
雲の色が突然赤黒くなり始めた。いよいよ魔王の侵攻が始まったのか、と思った。
「迷える二人の若者よ、私の声が聞こえるか?」
天から声が直接聞こえた。私とメコンは、歪みきった空を見つめた。
「私は……魔王の手によって闇に葬られた神の化身だ。そなたたちは、勇者に憧れるのか?」
ひょっとして……神様が私たちに何か力を授けてくださるのではないか、と思った。
「私たちは、嘗てのアルビノーニに憧れ、魔王を倒す勇者を一度は志した者です!」
私は叫べるだけ叫んだ。
「よろしい!ならば、そなたたちは、この戦いに命を捧げる覚悟があるか?」
私は自然に、
「あります!」
と答えた。
「そうか、それならば、そなたたちに力を授けよう!」
そう言って、天から一本の剣が落ちてきた。
「それを使いなさい。君たちが新時代の勇者になれることを、遥か遠くから祈っているぞ……」
天の声は、より一層黒ずんだ空の中に消えていった。
「すまない、メコン……」
私はメコンを巻き込んだことを謝った。これはあくまで私の仕事……そう思ったら、メコンが私の手を取った。
「このまま死ぬのを待っているくらいなら、私だって戦うよ。それに……私だって、敬虔なるアルビノーニ伝説の信者なのだから」
「ありがとう、メコン……」
こうして、私ザイザル、メコン、加えて、三人の若者による魔王討伐同盟が結ばれることになった。
彼の名前はアルビノーニと言った。私もアルビノーニのようになりたいと心の底から思っていた。いつか、この世界に魔王が現れた時、この私が成敗して、第二のアルビノーニになりたいと思っていた。
それが今、現実になろうとしている。しかしながら、僕はアルビノーニほど勇敢ではない。だから、一人で戦うわけではない。私には同志がいた。皆それぞれ、幼い頃からアルビノーニ伝説を崇拝してきた、新時代の勇者の卵というわけだった。
「オーケー、みんな揃ったね。それじゃ、行くとしようか!」
私はグループの先頭に立って、みんなを鼓舞した。
「ザイザル、随分と様になってきたじゃないか。昔は憶病だったのに……」
私の古くからの友人で同志の一人でもあるメコンもまた、亢奮していた。
「これで明日から世界が平和になるんだな……」
私は天から授かった剣を高々と上げた。
「神様のご加護の元に、魔王討伐の成功を祈願いたします……」
私はこう言い終えて、魔王の住まう地への旅を始めた。
神様の統治する平和世界トロイツに魔王が現れたのは、一カ月前のことだった。世界に天変地異が起こり、国中の民は恐怖におびえた。神様を凌駕する魔王の誕生は、記録によると10世紀ぶりのことだったそうだ。神様の名のもとに集まった義勇兵たちが先んじて、魔王討伐に向かったが、誰一人帰ってくることはなかった。それ以降、誇りと命を懸けて魔王と戦う者は現れなかった。
私たちも最初は戦う気なんてなかった。世界最強と言われた義勇兵ですら勝ち目がない戦いに、素人が参加しても勝ち目がないことは明らかだった。アルビノーニに対する憧れは、所詮、憧れで終わってしまうはずだった。
そんな私の元に、旧友のメコンがやって来た。
「久しぶりだな、ザイザル」
「ああっ、何年ぶりだろうか……」
本来ならば、旧友との再会はもっと感動的であるはずだった。しかしながら、魔王の暴れ狂う世界で、そんな理想を唱えている余裕はなかった。
「この世界は、間もなく終わるのだろうか?」
メコンは悲しそうだった。
「何か未練でもあるのか?」
私はメコンに尋ねた。
「君はないのかい?」
「人はいつか死ぬんだ。それが多少早いくらいじゃないか……」
私はもはや、投げやりだった。そりゃ、生きられるものなら、もっと体を鍛えて、軍人よりもタフなフィジカルを身につけて、それこそ、魔王なんて簡単に倒せる勇者になりたいと思った。でも、魔王はそれを赦してくれないみたいだった。ひょっとして、本当にもう少し魔王の出現が遅かったら、私はアルビノーニのような勇者になれたのだろうか?魔王はそれを恐れて、私が成長する前に、この世界に現れたというのか……?
「そんなバカな……」
私はつい独り言を言ってしまった。メコンは、私の独り言については何も尋ねなかった。
「私は……せめて、恋と言う物をしてみたかった」
「……恋だって?」
私は思わず聞き返した。
「ああっ、子供を大人にしてくれるという、恋だ。私は未だかつて、人に恋をしたことがない。恋をしないまま、人生を終えるというのは、少し寂しいんじゃないかって思ってさ……」
メコンは苦笑した。
「恋……恋か」
そんな答え、私は想定外だった。
雲の色が突然赤黒くなり始めた。いよいよ魔王の侵攻が始まったのか、と思った。
「迷える二人の若者よ、私の声が聞こえるか?」
天から声が直接聞こえた。私とメコンは、歪みきった空を見つめた。
「私は……魔王の手によって闇に葬られた神の化身だ。そなたたちは、勇者に憧れるのか?」
ひょっとして……神様が私たちに何か力を授けてくださるのではないか、と思った。
「私たちは、嘗てのアルビノーニに憧れ、魔王を倒す勇者を一度は志した者です!」
私は叫べるだけ叫んだ。
「よろしい!ならば、そなたたちは、この戦いに命を捧げる覚悟があるか?」
私は自然に、
「あります!」
と答えた。
「そうか、それならば、そなたたちに力を授けよう!」
そう言って、天から一本の剣が落ちてきた。
「それを使いなさい。君たちが新時代の勇者になれることを、遥か遠くから祈っているぞ……」
天の声は、より一層黒ずんだ空の中に消えていった。
「すまない、メコン……」
私はメコンを巻き込んだことを謝った。これはあくまで私の仕事……そう思ったら、メコンが私の手を取った。
「このまま死ぬのを待っているくらいなら、私だって戦うよ。それに……私だって、敬虔なるアルビノーニ伝説の信者なのだから」
「ありがとう、メコン……」
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