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その62
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あの男は……ひょっとすると、いや、ひょっとしなくても皇帝なのでは?
私はそう思った。王宮から車に乗ってやって来たのか?すると……どこかへ逃げるのか?
お父様たち、そして、メリーさんが皇帝を葬ろうと画策している……皇帝はそれに気が付いたのだろうか?
だとすると……。
私は一度宿に戻った。頼りになるのはリチャードだけだった。あの男が皇帝であることを確認するためには。
「クリス……そんなに血相を変えて……一体どうしたのですか?」
ああ、そうだ。急いでいたのかもしれない。だって、このままあの男を見失ったら、私は一生後悔することになると思ったから。
「あなたのお父様についさっき会ったのよ!」
「なんですって!そんなバカな!」
「とにかくついてきてよ!確認したいの!」
「ちょっと待ってください!お父様がこの町にいるってことは……ひょっとして、逃げてきたんですか?」
「ええっ、そういうことになるわね……」
リチャードは渋柿を食べたような頬で、舌打ちをした。
「へえっ、それが本当だとしたら、やっぱりお父様は死んだほうがいいですね!」
「……どうしてよ?」
私はリチャードが父親を見捨てようとしているのを感じ取った。
「だって、そうでしょう?お父様は昔から厳格だった。何かイタズラをすると、直ぐに怒られました。子供のちょっとしたイタズラに一々拳を振り上げる親がいますか?でもね、お父様は時に優しかった。私の成長を見守ってくれた。それを知っているから、お父様は正義の信奉者だから!私は一度ダークサイドに堕ちた人間だから!私がお父様の地位を継ぐことはできないと思ったんですよ!」
「ダークサイド?それは何よ?」
「私は昔、小さな町の統治権をお父様から頂いたことがあるんです。そこは非常に治安の悪い町でしてね、まあっ、いちいち説明する必要はないと思いますが、私はそこで色々なことを学びました。ですから……私はもうお父様のような人にはなれないと思いました……。でも、お父様も所詮は弱い人間だということです。逃げてきたのでしょう?皇帝が逃げてどうするんですか?潔く死ぬ覚悟を持たない者が皇帝の資格を持つわけがありません!」
「なるほど……あなたの過去がどんなものか、そんなことはとりあえず置いておいて、まずは皇帝を見つけないと!」
「ですから、どうしてあなたはお父様に拘るのですか?」
「私は真相が知りたいだけよ!」
「それを知ってどうするんですか!?」
「運命を変えるのよ!」
「ああっ、あなたは立派なお人です……。私にはまるで理解できない……」
言い争いをしている場合ではなかった。私はリチャードを連れて、夜の街に繰り出した。
繁華街だけあって、人々の様々な想いが縦横無尽に交差していた。少しばかり顔のいい小娘は、金を握った男たちに取り囲まれて処女を奪われていた。ひ弱な冒険者の青年は、成熟した女たちのハーレムに吸い込まれていった。
「こういう血の気の多い街……これもまた、私の大好物です」
私はリチャードの飼い主だった。どこかに行こうとすると、無理やり腕を引っ張って歩き続ける。それにしても、人が多すぎて、あの男を探し出すのは困難だった。
「そこのお嬢さん……人探しですかい?」
一人の老人が、私たちに声をかけてきた。
「どうしてそうだと思うの?」
「お二人さんの目を見れば分かりますよ。あなたは男を探していない。お連れさんは女を探しているが、あなたはそれを止めている……しかしながら、足取りからすると、この街の出口を探しているようには見えない。そうすると、誰かを探しているというわけです」
この老人、頼りになるかもしれない。私はそう思った。
「背の高い男を探しているんです。どちらに行ったか分かりますか?」
「…………お嬢さん?背の高い男なんか、この世界にいかほどいるとお思いで?他に特徴はないんですかい?」
「そうね……白い帽子をかぶって、パンツもジャケットも全て白だったわ!」
「…………あなた、ひょっとして、フランツ様をお探しで?」
フランツ様……繋がった!私はそう思った。
私はそう思った。王宮から車に乗ってやって来たのか?すると……どこかへ逃げるのか?
お父様たち、そして、メリーさんが皇帝を葬ろうと画策している……皇帝はそれに気が付いたのだろうか?
だとすると……。
私は一度宿に戻った。頼りになるのはリチャードだけだった。あの男が皇帝であることを確認するためには。
「クリス……そんなに血相を変えて……一体どうしたのですか?」
ああ、そうだ。急いでいたのかもしれない。だって、このままあの男を見失ったら、私は一生後悔することになると思ったから。
「あなたのお父様についさっき会ったのよ!」
「なんですって!そんなバカな!」
「とにかくついてきてよ!確認したいの!」
「ちょっと待ってください!お父様がこの町にいるってことは……ひょっとして、逃げてきたんですか?」
「ええっ、そういうことになるわね……」
リチャードは渋柿を食べたような頬で、舌打ちをした。
「へえっ、それが本当だとしたら、やっぱりお父様は死んだほうがいいですね!」
「……どうしてよ?」
私はリチャードが父親を見捨てようとしているのを感じ取った。
「だって、そうでしょう?お父様は昔から厳格だった。何かイタズラをすると、直ぐに怒られました。子供のちょっとしたイタズラに一々拳を振り上げる親がいますか?でもね、お父様は時に優しかった。私の成長を見守ってくれた。それを知っているから、お父様は正義の信奉者だから!私は一度ダークサイドに堕ちた人間だから!私がお父様の地位を継ぐことはできないと思ったんですよ!」
「ダークサイド?それは何よ?」
「私は昔、小さな町の統治権をお父様から頂いたことがあるんです。そこは非常に治安の悪い町でしてね、まあっ、いちいち説明する必要はないと思いますが、私はそこで色々なことを学びました。ですから……私はもうお父様のような人にはなれないと思いました……。でも、お父様も所詮は弱い人間だということです。逃げてきたのでしょう?皇帝が逃げてどうするんですか?潔く死ぬ覚悟を持たない者が皇帝の資格を持つわけがありません!」
「なるほど……あなたの過去がどんなものか、そんなことはとりあえず置いておいて、まずは皇帝を見つけないと!」
「ですから、どうしてあなたはお父様に拘るのですか?」
「私は真相が知りたいだけよ!」
「それを知ってどうするんですか!?」
「運命を変えるのよ!」
「ああっ、あなたは立派なお人です……。私にはまるで理解できない……」
言い争いをしている場合ではなかった。私はリチャードを連れて、夜の街に繰り出した。
繁華街だけあって、人々の様々な想いが縦横無尽に交差していた。少しばかり顔のいい小娘は、金を握った男たちに取り囲まれて処女を奪われていた。ひ弱な冒険者の青年は、成熟した女たちのハーレムに吸い込まれていった。
「こういう血の気の多い街……これもまた、私の大好物です」
私はリチャードの飼い主だった。どこかに行こうとすると、無理やり腕を引っ張って歩き続ける。それにしても、人が多すぎて、あの男を探し出すのは困難だった。
「そこのお嬢さん……人探しですかい?」
一人の老人が、私たちに声をかけてきた。
「どうしてそうだと思うの?」
「お二人さんの目を見れば分かりますよ。あなたは男を探していない。お連れさんは女を探しているが、あなたはそれを止めている……しかしながら、足取りからすると、この街の出口を探しているようには見えない。そうすると、誰かを探しているというわけです」
この老人、頼りになるかもしれない。私はそう思った。
「背の高い男を探しているんです。どちらに行ったか分かりますか?」
「…………お嬢さん?背の高い男なんか、この世界にいかほどいるとお思いで?他に特徴はないんですかい?」
「そうね……白い帽子をかぶって、パンツもジャケットも全て白だったわ!」
「…………あなた、ひょっとして、フランツ様をお探しで?」
フランツ様……繋がった!私はそう思った。
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