婚約破棄 A事案

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被害者A

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「ごめん」

婚約者の令息の傍には、少女と赤ちゃんが可愛らしく座っていた。私よりも早く?

憎しみが増すばかりであった。しかしながら、赤ちゃんは私のことを見て、

「マーマ、マーマ!」

と言った。ダメだ、その幼気な瞳を見てしまったら、私は何もできなくなってしまう。


「おしあわせに」

少なからず、私の人生がこんがらがった。さて、どうしてくれようか?

こんな私がこんな私にならないよう、令息に嫁げるように教育を受けてきた。正直言って死んだ方がマシだと思った日々の方が長かったが、なんとか耐えてきた。

神様、どうにかしてくださいまし。

私が令息に復讐するタイミングは意外に早くやってきた。というのも、令息は現王国の中枢にいるのだが、私の新しい婚約者が政治変革を起こし、王国ごと破滅させようとしているのである。

婚約者は後3日後に処刑されるはずだったのだが、たまたま私の目に止まったのが幸いした。私は彼の情熱に突き動かされた。人が国を憎む理由は様々である。彼の場合は、戦いに敗れた責任だった。最も不条理な仕打ちと迫害をずっと我慢し続けたようだった。

私はしがない令嬢であるが、命がけになれば、兵を率いて牢獄を襲撃するくらいの力がある。仲間を率いて彼を救出した。私はすぐさま彼と婚約した。彼と私の行動原理はおおよそ共通だった。



「君が全て仕組んだのか?」

気がつけば、私は元婚約者を牢獄に閉じ込めていた。

「私は未だかつてあなたを憎んだことがありません」

「そんなことはないだろう!」

「まあ、そんなに怒らないでくださいよ」

「ああっ、情けない……」

元婚約者は要するに命乞いをしたかったのだ。

「あなたが正義を貫いていれば、このような悲劇は生まれなかったでしょう。彼女たちから聞きましたよ。一夜の過ちですって?あなたは、女心を弄ぶのが上手い」

「仕方がないだろう!」

「いいえ、あなたの不正義がもたらした結果です!あなたが、いや、あなたたちがこれ以上国を統治する資格なんてありません!」

私は元婚約者を寝取った(と思っていた)少女と娘を連れてきた。

「おう、アーニャ!」

元婚約者は少女に助けを求めた。

「さあ、今すぐここから出してくれ!愛しているよ!」

少女は涙を流しながら、首を横に振った。

「どうして……」

私は少女の娘を抱きかかえた。娘は、

「マーマ!」

と可愛いらしく微笑んだ。

「私も、人並みに生きようとしました。でも、あなたでは無理なんです……」

「どうしてだ!」

「この国が滅んだら、娘が死んでしまうからです」

「私がどうしてこの国を滅ぼすんだ?」

「王国を恨む市民たちが、不正義なあなたがたを殺すからです」

「おのれ、保身に走ったか!」


これ以上何を言っても仕方がない。私は滅びゆく運命を一望できる丘に立った。

「さようなら……」

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