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その16

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王宮では、第一王子ツァイスを擁護する者ばかりでなく、この度の誤解と、それに伴う婚約破棄に不信感を抱く貴族たちが少しずつ増えてきた。

「ツァイス様の主張はまるでわからん。一度決めたことを訂正できないのは、それこそ王家の力の濫用ということになるだろう」

エリーナを擁護するムーブメントも、貴族の令嬢を中心に少しずつ起こり始めた。

「確かに、エリーナ様というのは少し高慢ちきかもしれません。しかしながら、一度交わされた婚約をないがしろにされることほど、女の不幸せというのはないわけでございますから……」


「というわけでございまして、ツァイス様に対する意見書が数多く寄せられております……」

侍従さえ、ツァイスに近寄りたくなかった。ツァイスもまた、かなりの癇癪持ちであり、余計なことを言って首でもはねられたら大変だと思ったのだ。

「みんなして何を言っているんだ!私に過ちがあったとでも言うのか!!!」

先日までは、ツァイスに正義を唱えていた侍従や学者たちも、みな口をそろえて、

「ツァイス様に過ちなどございません!!!」

と言った。

「それならばよい。ああ、そうだ。エリーナの方はどうなっている?」

「エリーナ様の方は、目だった動きはございません……」

「そうか……先手を打つことにしよう……」

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