Melting Dead 最弱の科学者が紡ぐ世界

tartan321

文字の大きさ
11 / 16

2082年 1月10日 その3

しおりを挟む
 「僕が早すぎるのか、それとも周りのレベルが低いのか……」

 その時、正は合格を確信していた。すぐさま携帯電話を取り出し、晴海の電話番号を探し始めた。真っ先に伝えたかった。
「もしもし。お兄ちゃん?」
「うん、僕だ。多分大丈夫だ。満点合格じゃないか?」
「ほんと?やった!やっぱりお兄ちゃんすごいね!」 
 正は晴海を、晴海は正を、互いに気遣った。どちらにしても、これ以上の喜びはない、という具合に。

 家に着くと、晴海は今までの中で一番早く、正の元へ歩み寄った。普段は、勢い余って正に倒れかかるのだが、この時は、正の手をしっかりと握り、元気よく、お帰りなさい、と言った。
「ただいま。寒いだろう。早く部屋に入ろう」

 正は晴海の手からゆっくりと離れた。トレンチコートを脱ぐと、廊下が寒いことを実感した。正は晴海の手を再び握りしめ、暖房の効いた部屋に入った。
「あの……、少し暑いんじゃないか」
 リモコンに目を通すと、設定温度は、28度だった。どうりで、晴海の頬が、血の巡りの良い少女のように紅いわけだった。
「どうしてこんなに高い温度なんだ?寒いのか?いや、そんな訳はないだろう。なぁ、晴海。外で遊んでいたわけじゃないだろう」
 晴海は、えっ、と口角を緩めた。何かまずいことを隠そうとしているようだった。
「晴海。何かあったのか?怒らないから言ってみな。兄弟に隠しごとはなしだって、晴海が言ったんだろう。さあ、こっちにおいで。どうしたんだ。まるで何かを怖がっているような目つき……」

 正は、三秒間の長い沈黙を過ごした。
 一体、外で何をしていたのだろう?怖気づいた目、そして、僕には言えないこと……。

「そんなことよりさ、お兄ちゃん。早く食事をしようよ」
 晴海は間違いなく動揺していた。関心事をそらそうとしていた。正は、これだけの断片的な情報から推測することは不可能だと考えた。暫く、晴海の様子をうかがうことにした。
「分かった。すごく腹が減ってるんだ。晴海、頼むよ」
 正は晴海の頭を撫でてやった。
「もう、お兄ちゃんってば……。そんなことしても、大盛りくらいしか出来ないよ」

 大盛りしか?
 ほかの選択肢もあるのか?

 晴海は茶碗いっぱいにご飯を盛った。


「ねえ、何か隠しているんじゃないか?」
「別に。何もないよ。そんなことより、おめどとう。お兄ちゃん」


 食事を終えると直ぐに、自室へ向かった。晴海は何も言わずについてきた。いつもの椅子にいつもの机、そして、いつもの電灯。唯一違うことと言えば、これ以上勉強する必要がないということだった。正は、ベッドにもたれかかった。親の目をぬすんで、何か楽しいことをする子供のように笑っていた。

「お兄ちゃん。少し起きているほうが良いよ。身体に悪いよ」
「心配することはない。今日で全てが終わったんだ。少し羽目を外したくらいで、ばちは当たらないさ」
 正は、窓から差し込む光を見つめた。

「ほら、おいで」
 正は晴海のために腕を大きく広げた。
「うん!」
 晴海は満面の笑みで飛び込んできた。
「久しぶりに一緒に寝るか?」
「……いいの?」
「あぁ……。ほら、お星さまも僕たちを祝ってるようだよ……」
「お兄ちゃん……えへへ……嬉しいな……」
 正は晴海を全身で包み込んだ。夜は未だ長くかかりそうだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

 神典日月神示 真実の物語

蔵屋
歴史・時代
 私は二人の方々の神憑りについて、今から25年前にその真実を知りました。 この方たちのお名前は 大本開祖•出口なお(でぐちなお)、 神典研究家で画家でもあった岡本天明(おかもとてんめい)です。  この日月神示(ひつきしんじ)または日尽神示(ひつくしんじ)は、神典研究家で画家でもあった岡本天明(おかもとてんめい)に「国常立尊(国之常立神)という高級神霊からの神示を自動書記によって記述したとされる書物のことです。  昭和19年から27年(昭和23・26年も無し)に一連の神示が降り、6年後の昭和33、34年に補巻とする1巻、さらに2年後に8巻の神示が降りたとされています。 その神示を纏めた書類です。  私はこの日月神示(ひつきしんじ)に出会い、研究し始めてもう25年になります。  日月神示が降ろされた場所は麻賀多神社(まかたじんじゃ)です。日月神示の最初の第一帖と第二帖は第二次世界大戦中の昭和19年6月10日に、この神社の社務所で岡本天明が神憑りに合い自動書記さされたのです。 殆どが漢数字、独特の記号、若干のかな文字が混じった文体で構成され、抽象的な絵のみで書記されている「巻」もあります。 本巻38巻と補巻1巻の計39巻が既に発表されているが、他にも、神霊より発表を禁じられている「巻」が13巻あり、天明はこの未発表のものについて昭和36年に「或る時期が来れば発表を許されるものか、許されないのか、現在の所では不明であります」と語っています。 日月神示は、その難解さから、書記した天明自身も当初は、ほとんど読むことが出来なかったが、仲間の神典研究家や霊能者達の協力などで少しずつ解読が進み、天明亡き後も妻である岡本三典(1917年〈大正6年〉11月9日 ~2009年〈平成21年〉6月23日)の努力により、現在では一部を除きかなりの部分が解読されたと言われているます。しかし、一方では神示の中に「この筆示は8通りに読めるのであるぞ」と書かれていることもあり、解読法の一つに成功したという認識が関係者の間では一般的です。 そのために、仮訳という副題を添えての発表もありました。 なお、原文を解読して漢字仮名交じり文に書き直されたものは、特に「ひふみ神示」または「一二三神示」と呼ばれています。 縄文人の祝詞に「ひふみ祝詞(のりと)」という祝詞の歌があります。 日月神示はその登場以来、関係者や一部専門家を除きほとんど知られていなかったが、1990年代の初め頃より神典研究家で翻訳家の中矢伸一の著作などにより広く一般にも知られるようになってきたと言われています。 この小説は真実の物語です。 「神典日月神示(しんてんひつきしんじ)真実の物語」 どうぞ、お楽しみ下さい。 『神知りて 人の幸せ 願うのみ 神のつたへし 愛善の道』  歌人 蔵屋日唱

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...