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その4

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「そもそも……お母様も私と同意見なのだ……」

シャルコー様はこう言いました。

「どうしてだろうなあ……。アマネ殿。君は確かにものすごく努力しているらしいが……だが、いくら努力しても、高等学院で主席になったことは一度もないんだろう????」

確かにそうです。まあ、戦う相手が妹のイザベルでは、かなうはずがありません。

「ええ、その通りでございます……」

「やっぱりそうか。ああ、そんなバカ者が、私の婚約者になると言うのは……ああ、非常に情けない話でございますなあ…………」

シャルコー様はこう言いました。

「情けないですって????この私がですか????」

私は思わず身を投げだしそうになってしまいました。

「ええ、そうですよ、本当に情けない。だって……自分でもそう思いませんか???だって、どれほど努力しても、何も報われない……そんなのは単なるバカじゃないですか。一番出なきゃ意味がないんですよ。そりゃ、世間のゴミカスどもに比べれば、少しは魔法やら科学やらに精通しているのかもしれない……でもね、あなたの上にもう一人いるわけでしょう????そんな人間と、完璧主義者であるこの私が、釣り合うかどうか、そう言う問題なのですよ……」

お父様の予想は思わぬ形で当たってしまいました。なるほど、やはり、シャルコー様は私が一番優秀な人間でないことに納得がいかないようでございました。これは非常に困った話でした。

「まあ、何度も言います通り、この婚約はもう決まってしまったこと……私が何か騒ぎ立てたところで変わることはありませんからね。まあ、仕方のないこと……ええ、もう諦めますよ……」

シャルコー様がこのように言いますと、私はもはや怒りを隠すことができなくなりました。そして、無意識に魔法を発動していたのかもしれません。文字通り、火がついてしまいました。

「おい……何をしているんだ!!!!」

それに気が付いたのは、お父様でした。私は懐に小さな火を灯していました。それが少しずつ大きくなって、やがては、皇帝陛下やシャルコー様に見える大きさになりました。

「何をしているんですか????」

シャルコー様も叫びました。ただ一人、皇帝陛下だけは冷静でした。

「何をしているか……ではありません。いくら王子様だからと言っても、人として言っていいことと悪いことがあること……あなた様はそんなことも分からないのですか????」

どんどん、炎が大きくなって、次第に私の身体全体を包み込むほどになりました。ああ、久しぶりに本気で怒っているんだ……私はそう思いました。


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