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その2

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ハル様から追いやられた私には、3つの選択肢が与えられました。1つ目は、私の人生をやり直して、もう一度ハル様と婚約するという選択肢です。ハル様と婚約する前日までさかのぼって、その後は順次修正していくという感じです。

なぜ、ここまでハル様との婚約にこだわるのでしょうか?もう一度申し上げますが、私は最初、心のそこからハル様をお慕い申し上げておりました。そして、ハル様と一緒に人生を歩みたいと、本気で考えておりました。ですから、私は人生をやり直すことを選択しました。一回で修正できるとは思っていませんでした。何度も何度も失敗を繰り返し、その中から学ぶことによって、ハル様が理想とする女性になろうと思ったのです。

しかしながら、現実は異なりました。ハル様はことあるごとに難癖をつけました。私に言わせれば、昔だったら全く気にも止めなかったようなことに、いちいち文句を言うようになったり、前回の失敗を生かそうとしたら、余計な事はしなくていいと言われてしまったり、前途多難でした。

自分ではいくら満足しても、ハル様はちっとも満足しませんでした。私は自分の何がいけないのかいろいろ考えてみましたが、結局その答えは見つかりませんでした。そして、今日もまた、

「君との婚約を破棄させてもらう」

と言われてしまいました。

さてさて、ただハル様という非常に堅物な男に愛されるためだけに、ここまで人生を何度繰り返したかわかりません。そんな私を、ときにはバカだと思いました。しかしだから、いつか私のことを愛していると言ってくれる日が来るかもしれません。ですから、その日までは努力するつもりでした。どれだけの時間がかかったとしても。

一つだけ下世話な話をいたしましょう。私が生まれ育った環境は、お世辞にも貴族的とは言えませんでした。私の父はもともと農民だったのですが、先の大戦で華々しい戦績を残したことにより、貴族の称号をもらいました。そして、とある有名な貴族の隠し子であった母と婚約することになったのです。これだけ聞いただけでも、とてもまともな家族だとは思わないでしょう。

私の父は、非常に出世欲の強い人間でした。ですから、ものすごい低い確率ではあったのですが、私と王子であるハル様の出会いを画策して、何とか婚約までこぎつけることができたのです。実を言うと、皇帝は私の父を贔屓にしていました。ですから、自分の息子を私の婚約相手にすることを快く引き受けてくれました。

「あなたの娘さんだったら、相当心強いな。良い子孫を生んでくれるだろう」

皇帝は私のことを期待していました。しかしながら、肝心のハル様は婚約に消極的でした。

「私は女と言う生き物嫌いなのです」

ハル様は皇帝にこういったそうです。

「しかしながら、私の皇位を継承する以上、それではいけないと思うけどね」

結局のところ、ハル様はしぶしぶ婚約を認めたわけです。一度婚約だけ交わせば、その後は何か理由をつけて婚約破棄することができます。最初から婚約する気なんて、ハル様にはなかったのです。
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