悪魔の恋

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悪魔

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 死を悟った。

 死ぬ前にしたいことって何だろう?

 令嬢と結婚するんだっけ?

 悪役でもいいや……。

 隣村のフラン……。

 あいつは金にしか目のない女だ……。

 それでも……。

 一度婚約でもしてみたいなあっ……。

「アーガイル様……」

 見え透いた涙だ。

 その瞳には金が映っている。

 いいんだ。僕が決めたことなんだから。

 そのうち笑い声が聞こえてくるのだろう。

「フラン……」

「お気を確かに持ってください……」

 もうそろそろ私の手元から去るがいい。

 一度味わっただけで十分だ。

 金はもう十分だろう?

「アーガイル様……」

「フラン……世界はかくも美しいのだなあっ……」

 死に際に支えてくれる人。

 悪役なんだろう、きっと。

 そういう人生を歩んできたのだから仕方がない。

 私に比べたら大部マシなはず。 

 私の意識が無くなってフランが一人生きる世界。さっさと遺産相続だけ済ませて、後は何処か静かなところへ引っ越すのだろう……。

 私も悪役だから。

 嘘をつき続ける。

 私はフランを愛し続ける……。

 決して交わることのない運命。 

「フラン……愛してる……」

 私は静かに瞼を閉じた。


 
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