Girl Quake ~令嬢様は婚約破棄の腹いせに暴れ出す~

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その3 婚約破棄の予兆

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「これはこれは……ようこそおいで下さいました……」

王子の侍従が私の到着を待っていた。

それにしても、凄く大きな屋敷である。王子は普段、科学院というそれはそれは由緒ある教育機関の地下研究室に籠っていた。だから、というわけではないが、王子の住まいがこれほど大きいのは驚きだった。

「私が王子の元へ案内いたします」

侍従が先導する形で、屋敷の中へ入った。私も一応令嬢ではあるが、これほど煌びやかな空間が家にはないし、歩いたことはない。私の家の場合、貴族ならば必ずと言っていいほど大切にする肖像画がない。また、普段用いるお茶の道具は全て安物である。調度品に関しては、庶民が使うレベルで、高価なものは何もない。宝石などの装飾品や衣装に関しても、必要最低限に留めている。

考えてみれば、いくら気が合うとはいえ、王子と婚約するのは不可能に近いと思った。ようやく幻想から目が覚めた心地だった。後は……王子の口から婚約破棄が告げられるのだろうか?そんな予感で頭の中がいっぱいだった。

王子がやってきたのは、私が広間に通されてすぐのことだった。いつものように、感情のない表情で私のことをじっと見つめた。

「久しぶり……とは言ってもそんなに経っていないか」

「そうですね」

王子はすぐに口をつぐみ始めた。どうして?王子が何も語らないと、話が前に進まない。
 

「今日は大事な話があるんだ。心して聞いてくれ……」

遂に話し始めた瞬間、王子の後ろにあるドアが開き、ニコニコと笑顔を振りまいている女が入ってきた。

はいはい……これで全て分かりましたよ。この女が、あなたの新しい婚約者なのですね?それでもって、私との婚約を破棄すると……ああっ、もう帰ろうかしら?要件は済んだでしょう。

それとも?

私に新しい婚約者を見せびらかして自慢するとかいう新種のイジメ?

最後まで付き合わないといけないの?めんどくさー。

ちなみに、あの女、どこかで見かけたことがあるような……。

次に王子がしゃべり始めるまで、私は記憶を探り出し、せめて女が誰なのか予想することにした。 

 
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