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その3

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クロイツ様は、私が嘘を認めようとしないので、段々と苛立つ様子でございました。まあ、無理もないでしょう。でも、私とて、この時はまだ、譲るつもりはありませんでした。我が由緒あるアントニー公爵家の明暗がかかっているわけでございます。万が一、私の不手際で、婚約破棄が成立してしまいたら、それはもう、私はこの世に生きること自体が難しくなってしまうわけでございます。

ですから、何としてでも、私は負けるわけにはいかなかったのです。

他方、クロイツ様も少し焦っているご様子でした。嘘をでっち上げたのはいいものの、会場にいる全員を説得するに足るだけの証拠がなかったのです。当たり前です。これは全てウソなのですから。ですが、クロイツ様は何としてでも、婚約破棄を成立させようと躍起になっていらっしゃいました。私にはよく分かりました。まるで、私のことを食い殺そうとしているライオンのようにも見えました。


とはいうものの、やはり、王子様が言うことを、人々は信じるしかありませんでした。勿論、証拠なんてものはありませんが、後々、カレン様が適当に証言をすれば、それはもはや、真実になってしまうのでした。
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