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覚悟と葛藤
03_コープスマン
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ーー僕が半獣たちに頼んだお願い。
それは、家族が僕をいなくなった後、探さないようにできないかというお願いだった。
親のことが心に残っていた。突然、僕が、いなくなれば、親は間違いなく探そうとするはずだ。おそらく、僕が見つかるまで、探すことを諦めないだろう。ずっと親に心配をかけることになるし、親との関係を完全に断つことができないと考えた。
そんな親の話をしたところ、意外にも狼男アウルフからある提案が出た。
「それで人間関係をたつというのならば、手伝ってやらなくもない。いい伝があるぜ。奴等ならば、なんとかしてくれるだろう」
狼男アウルフの声には、いつもの威圧感や苛立ちがなかった。アウルフもまた、半獣になる前は、そばに親がいたのだろうけれど、親に対する僕の気持ちに共感できるところが何かあったのかもしれない。
「コープスマンの奴等か。日々、お世話になっているが、裏で何をやっているのかよく分からない奴等だ」
象男ファントムは、狼男の言葉に反応して言った。
コープスマンとは一体、何者なのだろうか。お世話になっているということは、日頃から半獣の人たちと関わりがある人たちなのかもしれない。あまり、いい印象は持たれていない気がするけれど。
「コープスマンとは、何者なんですか?」
「それはだな......」
狼男アウルフが、言い出そうとすると、蛇女ムグリの声が割って入った。アウルフは舌打ちをする。
「コープスマンは、死体屋よ。日頃は、食用の人肉を提供してくれてるの。彼らなら、あなたの悩みを解決してくれると思うわ。私も、彼らの力を借りて、今までの人間関係をたつことができたの」
「死体屋、なんだか怪しげな響きですね。本当に、上手く行くんでしょうか」
蛇女ムグリもまた、コープスマンという人たちの手を借りていた。さらに、詳細を聞きたいところではある。
「彼らなら大丈夫よ。その道のプロだから。詳しいことは、彼らに会った時のお楽しみよ。きっと、驚くと思うわ」
結局、蛇女ムグリは、コープスマンに関する詳細を教えてはくれなかった。
その後、蛇女ムグリは、手紙に依頼文を書いて、それを伝書鳩の足に繋げる。勢いよく鳩が両翼を羽ばたかせて大空に向かって飛び立つ音が響いた。
(コープスマン、どんな人たちなのだろうか)
少し不安な気持ちを抱きつつ、彼らに会うことが楽しみでもあった。
※※※
一週間後。
日が沈み、辺りが闇に包まれた頃、タイムベルの門が音をたてて開いた。
フードで顔を隠し、黒ずくめの人たちが、二人がかりで鎖を持ってなにやら棺を引きずりながら、現れた。二人とも、2メートルを超す高身長で、細身ながらも、筋肉質で強靭な体つきをしていた。
そんな二人とは対照的に低身長で太った一人の男性が、後ろを汗を拭いながら歩いていた。
「コープスマンのご登場か」
ライオン男ライアンは、腕組みをしながら、彼らを見て言った。
コープスマンの人たちは、僕たちの目の前に来ると、立ち止まった。
太った男性が、満面の笑みを浮かべながら、前に出て来て、僕たちに話し始めた。
「これはこれは、タイムベルのみなさん、日頃、ご贔屓くださり誠にありがとうございます!いいですね。みなさん、ご元気な様子でなりよりでございますよ、はい」
饒舌にしゃべる男に、狼男アウルフは毒を吐く。
「相変わらず、うるさい奴だ」
それに対して、コープスマンの男性は笑顔を浮かべ返事を返した。
「アウルフさんは相変わらず、毒舌がお上手で」
「な、なんだと!?」
「ふふっ」
その様子を見て、蛇女ムグリは、笑いだした。笑い出した蛇女ムグリに対して、狼男は、叫ぶ。
「ちっ、笑うんじゃねーよ!」
「相変わらずの様子で結構でございます。おやおや、あなたは、会うのは初めてですね」
コープスマンの男性は、僕の目の前まで、来ると、顔を近づけて来てじろじろと見ながら言った。
「えぇ、ええ。僕は、鬼山聖といいます。よろしくお願いします」
やたらと、顔を近付けてくるので、後ろに下がって困惑しながら自己紹介した。
「鬼山さんですね、名前は事前に聞いておりますよ、はい。私は、ポッチャリンといいます。以後、お見知りおきよ」
ポッチャリンは、そう言うと、頭を下げた。
「ところで、あの棺。注文した品は、あの中に入っているのか?」
ライオン男ライアンが、棺を指差し言った。
「ええ。その通りでございます。ご安心ください。今回も非常によい出来となっていますよ」
ポッチャリンは、なぜか僕の方を見つめながら、不気味な笑みを浮かべ言った。最初から、気になって仕方なかったが、彼らが運んできた棺のなかに依頼の品があるということらしい。
(何が入ってるんだ、あの棺に......)
異様な雰囲気を放つ棺を見て、僕は、唾を飲み込んだ。
それは、家族が僕をいなくなった後、探さないようにできないかというお願いだった。
親のことが心に残っていた。突然、僕が、いなくなれば、親は間違いなく探そうとするはずだ。おそらく、僕が見つかるまで、探すことを諦めないだろう。ずっと親に心配をかけることになるし、親との関係を完全に断つことができないと考えた。
そんな親の話をしたところ、意外にも狼男アウルフからある提案が出た。
「それで人間関係をたつというのならば、手伝ってやらなくもない。いい伝があるぜ。奴等ならば、なんとかしてくれるだろう」
狼男アウルフの声には、いつもの威圧感や苛立ちがなかった。アウルフもまた、半獣になる前は、そばに親がいたのだろうけれど、親に対する僕の気持ちに共感できるところが何かあったのかもしれない。
「コープスマンの奴等か。日々、お世話になっているが、裏で何をやっているのかよく分からない奴等だ」
象男ファントムは、狼男の言葉に反応して言った。
コープスマンとは一体、何者なのだろうか。お世話になっているということは、日頃から半獣の人たちと関わりがある人たちなのかもしれない。あまり、いい印象は持たれていない気がするけれど。
「コープスマンとは、何者なんですか?」
「それはだな......」
狼男アウルフが、言い出そうとすると、蛇女ムグリの声が割って入った。アウルフは舌打ちをする。
「コープスマンは、死体屋よ。日頃は、食用の人肉を提供してくれてるの。彼らなら、あなたの悩みを解決してくれると思うわ。私も、彼らの力を借りて、今までの人間関係をたつことができたの」
「死体屋、なんだか怪しげな響きですね。本当に、上手く行くんでしょうか」
蛇女ムグリもまた、コープスマンという人たちの手を借りていた。さらに、詳細を聞きたいところではある。
「彼らなら大丈夫よ。その道のプロだから。詳しいことは、彼らに会った時のお楽しみよ。きっと、驚くと思うわ」
結局、蛇女ムグリは、コープスマンに関する詳細を教えてはくれなかった。
その後、蛇女ムグリは、手紙に依頼文を書いて、それを伝書鳩の足に繋げる。勢いよく鳩が両翼を羽ばたかせて大空に向かって飛び立つ音が響いた。
(コープスマン、どんな人たちなのだろうか)
少し不安な気持ちを抱きつつ、彼らに会うことが楽しみでもあった。
※※※
一週間後。
日が沈み、辺りが闇に包まれた頃、タイムベルの門が音をたてて開いた。
フードで顔を隠し、黒ずくめの人たちが、二人がかりで鎖を持ってなにやら棺を引きずりながら、現れた。二人とも、2メートルを超す高身長で、細身ながらも、筋肉質で強靭な体つきをしていた。
そんな二人とは対照的に低身長で太った一人の男性が、後ろを汗を拭いながら歩いていた。
「コープスマンのご登場か」
ライオン男ライアンは、腕組みをしながら、彼らを見て言った。
コープスマンの人たちは、僕たちの目の前に来ると、立ち止まった。
太った男性が、満面の笑みを浮かべながら、前に出て来て、僕たちに話し始めた。
「これはこれは、タイムベルのみなさん、日頃、ご贔屓くださり誠にありがとうございます!いいですね。みなさん、ご元気な様子でなりよりでございますよ、はい」
饒舌にしゃべる男に、狼男アウルフは毒を吐く。
「相変わらず、うるさい奴だ」
それに対して、コープスマンの男性は笑顔を浮かべ返事を返した。
「アウルフさんは相変わらず、毒舌がお上手で」
「な、なんだと!?」
「ふふっ」
その様子を見て、蛇女ムグリは、笑いだした。笑い出した蛇女ムグリに対して、狼男は、叫ぶ。
「ちっ、笑うんじゃねーよ!」
「相変わらずの様子で結構でございます。おやおや、あなたは、会うのは初めてですね」
コープスマンの男性は、僕の目の前まで、来ると、顔を近づけて来てじろじろと見ながら言った。
「えぇ、ええ。僕は、鬼山聖といいます。よろしくお願いします」
やたらと、顔を近付けてくるので、後ろに下がって困惑しながら自己紹介した。
「鬼山さんですね、名前は事前に聞いておりますよ、はい。私は、ポッチャリンといいます。以後、お見知りおきよ」
ポッチャリンは、そう言うと、頭を下げた。
「ところで、あの棺。注文した品は、あの中に入っているのか?」
ライオン男ライアンが、棺を指差し言った。
「ええ。その通りでございます。ご安心ください。今回も非常によい出来となっていますよ」
ポッチャリンは、なぜか僕の方を見つめながら、不気味な笑みを浮かべ言った。最初から、気になって仕方なかったが、彼らが運んできた棺のなかに依頼の品があるということらしい。
(何が入ってるんだ、あの棺に......)
異様な雰囲気を放つ棺を見て、僕は、唾を飲み込んだ。
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