殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央

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エピローグ

第45話 作戦開始(あやふやかも)

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「聖騎士様、ですか」
「そうだ。あれは王族の係累。同じ神殿の者同士、信じたいが信用できないところもある。それなら、王国や他の分神殿から、民を守れと命じるほうがよほど、あいつのやる気を鼓舞することになる。やれるか」
「多分。民の転送を見守り、装置を安全に運行するというだけなら……多分」
「それだけでいい。よし、決まりだ」
「何も決まってないでしょ、お父様?」

 カトリーナの呼びかけを無視して、大神官は食べ終わった皿を、壁際に等間隔に立つ衛士の一人に押し付けて、足早に去っていく。

「私は忙しい。お前はとにかく信徒に接して、転送することを広く知らしめてこい。その方が信徒も安心するってもんだ」
「でも、向かう先にはどこにも安全なんてありませんよ? 私達の連れてきた騎士団とこの城塞都市ラクールの兵をどう分散するの? そろそろ王国からだって……」

 父親を追いかけてやってきて見れば、そこは分神殿の広間になっていて、上を見上げれば天井はなく、蒼穹が果てしなく広がっている。
 その青みが増しているのを見て、カトリーナは顔を曇らせた。

「まだいたんですねー、教皇様」

 そう言われて東の方角に目をやると、そこには、これから南の分神殿にもどるだろう教皇の巨大な飛行船が、係留から解きはなたれて船首を行き先方向に向けようとしていた。

「飛行船だもの。機敏には動けないわよ」

 そして、離れていく隣には、このラクールが所有する神殿の紋様が入った、別の飛行船もある。それ以外にも、尖塔の街と称されるだけあって、大小、数十の飛行船がさまざまな場所に係留されていた。

「あれって‥‥‥」
「はい、姫様。どうなさいましたか」
「かなりの高度を飛ぶのよね?」
「多分。雲より上にはいくはずですね。あの山脈も超えると聞きますし」
 と、エミリーは北部の大陸最大とされる高さを誇るその山脈を指さした。
「……どうやって結界を抜けたり、入ったりしているのかしら。地上だと、結界そのものが壁になって、勝手には出入りできないはずなのに」
「空には空の神がいらしておりますから、治外法権かも」
「でも、竜とかは入ってこれないわよ?」
「ですから、この王国のものだ、と証明できれば‥‥‥良いのでは?」

 ふうん。
 なるほど、とカトリーナはとりあえず、納得する。
 大神官はそうこうしているうちに、神殿騎士だの、城塞都市の役員だの、聖騎士だのを呼び出して会議をする、と息巻いて消えてしまった。

「聖女は聖女の役割を果たしますか」

 ここは城塞都市の第二の壁の中だ。
 信徒たちは第二、第三の壁の間にある農閑期で使われていない土地にそれぞれ、テントを張ったりして、ひとときの安息を得ているはずだ。
 王都からの旅も、ほとんど休みなしでここまでやってきた。
 その疲れをまずは癒してもらわないと、次に進むことも難しい。

「ところで、姫様。あの場では言わなかったのですが」
「え?」

 エミリーが至極残念そうな顔をして、カトリーナに告げた内容は、驚きの内容だった。

「奪われたのは地方諸侯からの品々だけではないのです」
「というと」
「知ってやったのか、知らずにやったのかは謎ですが。王太子殿下から頂いておりました、数々の品々も、宝石や調度品の類も‥‥‥その」
「持って行かれた、と。なるほどねえ、で、誰が消えたの?」
「ミエラ、シャルディ、その他数名。姫様のお側で宝物の管理をしていた侍女たちも、同時にいなくなっております」
「計画犯、かな? まあ、いいわ。殿下の思い出なんてどうでもいいものだし。売れなかったのが残念ねー……少しは税の足しになったのに」
「税? なんですか、それは」
「そうね、どこから話したものかなー」

 カトリーナは今日一日あったできごとを要約しながら、どうやっても作れない出国税については口外しないことを第一に、信徒たちの複数あるキャンプを巡回することにした。

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