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43 本当の思い出の場所
ビルの前に横付けされたトラックの荷台からリフトで舗道に降ろされたコンテナ三台をスズキさんと二人で貨物用エレベータまで押した。
汗かきのレナはすぐに顔や脇を濡らした。
事務所のドアを開け、コンテナを引き入れて、さっそくメモを取り出し、金庫の組み合わせ番号を試す。右へいくつ、左へいくつという旧式の奴だ。
中には何もなかった。
コンテナに移したモノを全て中に入れ終わるのにニ十分ほどかかった。金庫の扉を閉め、ダイヤルをぐるっと回した。
「あ、」
ポーチから折りたたんだプリントを取り出した。そして、メモ。
レナがここに来るようになってから、そして恐らくはここに置かれてから一度も使われたことの無さそうなゴミ箱。その中で燃やした。
「終わりました」とレナは言った。
その言葉が、天井の排気口から微かな煙と共に吸い込まれて消えて行った。
時計は三時を回った。なんとか、間に合った。でも、スミレさんは、まだ来ない。
「あの・・・、待ち合わせしてるんです。彼女が来るまで、居ていただいて、いいですか」
向かいの机に座って煙を見ていたスズキさんは黙ってレナを見つめていたが、おもむろに口を開き、こう言った。
「・・・お言葉ですが、そのご要望には承服致しかねます」
彼が「かしこまりました」以外の言葉を発したのを初めて聞いた。
「大変僭越ですが、もう一度、ササキ様がこの一日でなさったことをよくお考えになってはいかがでしょうか」
スズキさんは自分の言葉がレナの胸に浸透するのを待って、こう続けた。
「何のために車を処分したか、何のために、二十四時間以上もかけて、何をここに集めたのか。あなたのスマートフォンはどうされたのか。サキ様やタチバナ様のはどうなのか。
そこを考えれば、あなたがするべきことは、たった一つだと思われます。一刻も早く、ここを立ち去ることです。そして、今日までのことは、全て忘れることです。
わたくしが申し上げたいことは、以上です」
そう言ってスズキさんは席を立ち、ドアに向かった。
「トラックを処分してまいります。ですので、ここで失礼させていただきます」
「連絡先、スズキさんの番号、教えてください!」
「スマートフォンはタチバナ様にお預けしました。車内にあったものは、車ごとプレス機で潰されました。わたくしは他に電話を持っておりません。
先ほども申しました。今日までのことは、全てお忘れになる方が、あなたのためです」
「そんな・・・」
「では、失礼いたします。短い間でしたが、あなたにお仕え出来て光栄に存じます。・・・お元気で」
あまりにも素っ気なく、スズキさんはレナから去って行った。
彼が出て行った後のドアを、レナはいつまでも見つめていた。
「・・・くっ、・・・は、はうっ!・・・い、いい、・・・あくっ・・・」
まだ昼間なのに、というより、午前中なのに。
ヨウジを送り出し、洗濯をし、部屋の掃除をし、朝食の食器を洗い、やることが無くなてしまうと、全裸になり、赤い首輪を着け、机に向かい浅く腰を掛け、両足を大きく広げ、爪先を机の縁にかけ、オナニーしてしまう。
あれから一週間になる。
誰からも連絡がない。不安と焦りで押しつぶされそうになるが、ヨウジの前では気丈に振舞わねばならない。夜もあまり熟睡できず、半覚半睡がずっと続き、そんなときに必ずイメージが湧く。
机の上のパソコンは開いている。が、サキさんのブログはもう閉鎖されていた。スミレさんはきちんと仕事をしていた。開かれているウィンドウは一番のお気に入りのスミレさんのプレイ写真だ。閉鎖される前に画像を保存しておいてよかったと思うが、こんなことなら自分もUPしてもらえばよかったと小さな後悔をした。誰かに見られたいという欲求が次第に理解できるようになっていたからだ。しかし事態の進行が速すぎ、レナのその欲求は叶えられる前に閉ざされてしまった。
今レナの脳裏に浮かぶ、つまりオカズになっているイメージは、しかし、スミレさんのモノでもなかった。
「は、はあっ、はああっ!・・・い、イク、イっちゃうっ!・・・く、・・・ふうう・・・」
何度イッても飽くことがない。一応、椅子にバスタオルは敷いたが、すでに尻の下は流れ出した多量の愛液で湿っている。左手は両の乳首を交代に、右手は中指と薬指を深くヴァギナに突っ込み、親指でクリトリスを転がしている。おとがいを仰け反らせ、白い喉に唾液を流れさせながら、まるで麻薬中毒患者のように、絶頂しても、そのイメージがレナを捉えて離さず、またすぐ目の前の快感を追い求め、指を動かし続けている。
レナの熟睡を妨げ、今も自らを弄らせているイメージは、サキさんの姿だ。
夢か妄想か。
サキさんは全裸で天井から釣られ、勃起して天を突く巨大な肉棒を曝していた。レナはその口を淫らに吸った。現実なら釣られた長身のサキさんの口を見下ろし、唾を飲み込ませることなどはできない。そのイメージの中ではレナの身体はサキさんよりはるかに大きく、伝説のアマゾンの奥地の女族の酋長のように、サキさんの身体をいいように弄んでいる。
レナの突き出した舌をサキさんが咥える。舌はぬらぬらとくねりながら舌を求めて絡みつく。唇を舐めまわし、口を犯す。鼻や目や耳の穴。顔中のあらゆる皮膚を舐めまわし、再び口を犯す。舌を絡ませながら、乳首を擦り、強く摘まむ。堪らず喘ぐサキさんの口を、また犯す。乳首を嬲りながら、男根を握り、撫で上げ、ぎゅうぎゅうに擦り込む。喜悦の声を上げるサキさんの口を、またまた、犯す。
体中の逞しい筋肉が硬直し、痙攣する。それを何度も撫で、舌を這わせ、歯を立てて行く。
肉棒を力一杯握り、扱きながら割れた腹筋を舐め、尻を舐め、肛門をこじ開けて舌を這わせ、指を差し入れる。肉棒がひくつく。それでも構わずにさらに指を奥へ。
竿を扱く手が濡れて来る。亀頭の先から透明な涙が流れて来てそれを潤滑にし、皿に揉み込みながら、舌を筋肉に添って太腿に、ふくらはぎに這わせ、足指を含み、また上に昇って睾丸を包む袋を弄り、なおも竿を扱きながら、亀頭を捩じ切るように扱う。
舌で亀頭を舐めまわす。口に含み、裏筋を舌でくすぐる。小便と精液が出てくる穴を舌でこじ開け、こじ入れる。眉根を寄せて快感に耐える表情を見上げ、楽しみながら、舌を竿に這わせ唾液を塗す。そして大きく口を開け、喉奥深く、咥え込む。
それから再び口を犯す。もう一度、しつこく舌を求め、弄る。身体を密着させ、片足をサキさんの背中に絡め、引き寄せ、股間を肉棒の上に乗せ、ヴァギナにあてがい、腰を落とす。思い切り、腰を振る。クリトリスを擦りつけ、ヴァギナをぎゅうぎゅうに、締める。えもいわれぬ快感が立ち昇り、昂奮し、苦し気なサキさんの顔を舐めまわしてゆく。もう片方の脚もあげ、両足で、股間でサキさんを締め上げる。二人の体重が彼の手首の縄をキリキリと絞る。肉棒がレナの体内で膨張し、子宮を潰す。
「ぐあああーっ!」
どちらの口からともなく吹き上がった野獣のような咆哮と共に、熱湯のような樹液がレナの子宮の奥に噴出し、そこを満たし、強烈なエクスタシーをもたらして、レナは滑り落ち、床に這い、ぴくぴくと身体を痙攣させ、絶えた。
以前の失敗をまた繰り返した。
レナは椅子ごと後ろに倒れ、全裸で床に仰向けになった。前の部屋は木の床だったが、今はカーペットが敷かれている。しかし、痛いことは痛い。
大きく乳房を上下させながら、荒い息が整うまで、しばし、頭をさすりながら自慰の余韻に浸る。愛する男に、たとえ妄想にせよ、あんな乱暴なことをして満足するなんて・・・。
自己嫌悪を引きずりながら、スミレさんの言葉を反芻する。
「どうしよう。わたし、あの刺激なしでいつまで耐えられるかなあ・・・」
あれはレナの心を代弁してくれたのだと思う。レナこそ、この先、サキさんなしでいつまで耐えられるか、まったく自信がなかった。
サキさんに会ってからのこの半年。レナの世界は激変した。
どちらかというと引っ込み思案な、ごく普通の地味な高校二年生に過ぎなかったレナが、いつの間にやらSMの世界に入り浸り、M女となって卑猥な言葉を平気で吐くようになり、あまり深い人付き合いもなく、二三のバイバイ仲間がいる程度だったのに、急にハードな調教を受けるマゾヒストの横顔を垣間見、男勝りのサディスティックな女性と深いつながりができ、運転手付きの超のつく高級車を乗り回し、挙句、自分をここまで導いた悪魔を凌辱するほどの妄想を持つに至っている。
親も失った。サキさんとは直接関係はないけれど、運命的なタイミングが、レナをそれまでの世界と断ち切った。
しかし、今。レナは孤独だった。
振り返れば、レナの十七年間は誰かに縋り守られるよりも、いつも頼られてばかりだった。
父は、もうお姉ちゃんなんだからヨウジを頼むぞと言って去り、母は二人を見捨てて男に走り、唯一頼れそうだったトオルは最初から欺いていて自ら橋を焼き、スミレさんや、一番頼りたいサキさんとは連絡もつかない。
夢中で踊りまくっている間に、観客も舞台もなくなり、一人取り残されていた。カエデさんもスミレさんも、スズキさんも消えた。誰かに狙われているという、どうしようもない不安を拗らせ、レナは誰かに縋りたくてたまらなくなっていた。
スマートフォンは、もう、ない。仕方なく再度契約したのは番号を変えた。登録したのはヨウジに関連する学校などの番号と弁護士事務所のものだけだ。
レナを察し、不安げに見つめるヨウジも、もうあと少しで独りで生きて行けるのではないだろうか。万が一を考え、すでに証券や金は現金化して一本の通帳にまとめてあった。たった二か月だけだったが、受け取った給料だけで、このさき数年のここの家賃とヨウジの学費は賄えそうだ。
もし、ヨウジが手を離れたら、何を目途に生きればいいのだろう。
会いたい。また思い切り責められたい。もう一度、死ぬほど犯されたい・・・。
漠然と、死、を考える。
不思議なことに、一度それを思うと急速に全ての不安や心配やもどかしさや絶望から解放された。ある種の、麻薬のような魅力が、死、にはあった。
じゃあ現実に、今すぐこの五階から飛び降りるか、包丁で頸動脈を掻き切るか、睡眠薬をたらふく飲むか、部屋を密封して七輪を焚くかと言われれば、まだそれは出来ない。まだ、出来ない。
そうした種々の事どもが、日がな一日、レナを自慰に向かわせていた。
指を、激しいオナニーで爛れ切った股間に再び伸ばそうかというところで、ドアホンが鳴った。
ガウンを羽織って応対に出ると、電報局の配達人だった。
電報なんて、結婚式とか入学式で他人が読み上げるものだと思っていた。実物が、しかも自分に届いて、驚いた。
「受領印、お願いします」
配達人のイヤらしい目線がガウンの胸元に注がれるのを知りながら、受け取りにサインし、ドアを閉めてキッチンのテーブルで封を開いた。
(お前との本当の思い出の場所で待ってる。 悪魔)
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