【改訂版】 戦艦ミカサを奪還せよ! 【『軍神マルスの娘と呼ばれた女』 2】 - ネイビーの裏切り者 -

take

文字の大きさ
20 / 60
第一章 潜伏

18 ヨードル、陰謀を暴く!

しおりを挟む

 昼間、午前と午後に2時間ずつ対艦射撃演習を行い、かつ敵の沿岸に沿って、まるで凄まじい演習をチナの民に見せびらかすようにしながら、艦隊は西へ進んだ。


 

 そのようにして迎えた、演習4日目。

 第一艦隊はチナ領であるハイナン半島に続くハイナン諸島を南からぐるっと迂回するようにしながら、チナ第二の都市アルムにほど近い海岸を目指す航路に乗った。

 明らかに、チナへの威嚇をより効果的に演出するための行動だった。

 全ての海は、わが帝国のもの。

 海軍は、そして海軍の至宝ともいうべき第一艦隊は、その帝国の強い意思を具現化するべく、西へ、敵チナ王国の沿岸深く、進んでいった。


 

 だが。

 一人だけ、艦隊が西へ進めば進むほど焦りを募らせている者がいた。

 それは、いうまでもなく、ルメイだった。

「一体、チナの策謀とやらはいつ起こるのだ!

 彼は搭載燃料を既定の6割にし、かつ、チナ沿岸から3海里のルートを航行するように、としか要求されていなかった。

 搭載燃料はクリアした。小賢しいヨードルもなんとか黙らせた。

 だが、何の予兆もない。

 艦隊の航行ルートは艦隊司令部の処決事項であり、いかに旗艦の艦長と言えどもそれに容喙することなどできるわけがない。要は、キッカケが欲しいのだ。

 それなのに、艦隊はあくまでも予定通りに、着々と演習メニューをこなして行く。

 彼が無事チナ王国への亡命を、それも、この最新鋭の戦艦一隻を手土産にして実施できる時間は着実に減って行く。

 もし。

 何の予兆もなく艦隊が演習メニューを全てこなし、予定通りにターラント帰港の航路に乗り、さらにチナとの国境を越えてしまえば、万事休す、だ。

 その時搭載燃料寡少が露見しても、何の意味もない。

 むしろ、今。

 それを自然な形で発覚されるように動くべきではないのか?

 追い詰められたネズミはネコでも噛むという。

 ルメイという、帝国を裏切ったネズミは、疑心暗鬼の窮鼠(きゅうそ)と化しつつあった。

「ブリッジより幹部士官に達する。対艦実弾射撃演習30分前。幹部士官はブリッジに集合の事。以上」

 艦内放送が流れた。

 ルメイは重い腰を上げ、艦長室を出た。


 


 

 そして、ここにももう一人。

 艦隊が西へ進むにつれ、ある感情を募らせている者がいた。

 ヤヨイである。

 ただし、彼女の場合はルメイのとはちょっと違った。それは、焦りではなかった。

「やあ! おはよう少尉。ごくろうさん!」

 ブリッジで夜間当直を務めていたヤヨイに、湯気の立つコーヒーを注いでくれたのはデービス大尉だった。

「・・・おはようございます、大尉」

「なんだよ、機嫌悪そうだな。当直、イヤかい?」

「いいえ、別に」

「でも、なんか怒ってるよな」

「いいえ、別に」

「なんなら、個室で休むかい? きょうも訓練だから、午前中はぼくが代わってあ・・・」

「いいえ、別に大丈夫ですっ! お気遣いなくっ!」

「お~・・・、怖・・・」

 ヤヨイは、イライラを募らせていたのだ。

 艦隊がターラントを出港してからもう7日。演習が始まってから4日になる。忍耐も限界に近付きつつあった。

 いったい、いつなのだ?

 いつ、それが起こるのだ?

 もう、なんとかしてくれ・・・。

 ヤヨイは、熱すぎるコーヒーに思わず、顔をしかめた。

 でも、自重せねば。

 その時が来るまで、正体は明かせないのだ。


 

 

「艦長! 所定の通り、射撃演習と並行してダメージ・コントロール演習を行います。よろしいですね?」

 通常の演習と並行して艦内の被害対応訓練を行うよう、チェン少佐がルメイ大佐に進言した。

「よかろう! 適宜被害を想定し、実施したまえ」

 ルメイが下令した。

「アイ、サー。ダメージ・コントロール演習。適宜被害を想定します」

「リュッツオー標的ブイまで距離1万2000!」

「艦隊はこれより追撃戦に移る」

 カストロ中佐が宣言した。

「単縦陣のまま距離4000で左舷転舵。4000を保ちつつ右舷砲撃戦を行い目標と並航。その後増速して回避行動をとるリュッツオーを追い目標を捕捉せんとする。リュッツオーに連絡! 適宜離脱を試み、艦隊の追撃戦を誘導せよ」

 要するに捕捉されるのを嫌って逃げる敵艦を演じろということだ。

 現在、帝国海軍に比肩できる海上勢力は存在しない。だが将来的にはそうした存在が出現するかもしれないという想定でミカサ級戦艦が計画、建造され就役し、今艦隊演習を行っている。

 だが、現行は敵性船舶の拿捕臨検が主な任務であるために戦艦部隊といえどもその訓練をしておく必要があるのだった。

 司令部の指示のもと、ミカサの幹部たちは艦内に命令を伝達していった。

 ミカサからの指示に対し、リュッツオーにアンサー旗が上がった。同時に、彼女の後部単装砲塔辺りから火と黒煙が吐かれた。すぐに70ミリ単装砲の可愛い発射音がポン、と一発だけ伝わってきたが、もちろん砲弾などは飛んでこないのはわかっている。弾頭を外した空砲を発射し健気にも敵艦役のリアリティーを演出しているのだ。

 それを見た司令部の面々は皆ニヤリと相好を崩した。

 リュッツオーのヘイグ艦長も退屈凌ぎをしたいのだろう、と。毎回演習のたびに標的ブイを引っ張らされている身では無理もなかろう・・・。

 副長のチェン少佐がこの機を逃さず応じ、艦内放送と伝声管とに叫んだ。

「演習、演習、演習! ブリッジより全艦に達する。敵艦隊より反撃。右舷中央に被弾の模様。被害状況を知らせ。ダメージ・コントロールは直ちに対応せよ!」

「ダメージ・コントロールよりブリッジ。直ちに対応します! 」

 ヨードルの声が伝声管から伝わってきた。

「機関室より、ブリッジ及びダメージ・コントロール。右舷第二煙突付近に被弾の模様。右舷石炭庫及び第五第六ボイラーに被害。機能停止。機関員2名負傷。なお、現在出力には影響なし」

 これは誰だろう。新機関長のノビレ少佐か、それとも機関員か。

 ブリッジの後ろに立つヤヨイは、伝声管から漏れてくる声に耳をそばだてた。

「消火班は上甲板へ! 救護班はエンジンルームに急行せよ!」

 ダメージ・コントロールと被害を受けた想定の機関室とのやりとりがスピーカーや伝声管を通じて刻々ブリッジに伝えられる。

 と、左舷側艦長席のルメイの横顔がにわかにソワソワし始めたのが察せられた。

 なんだろう・・・。

 それまで無表情に淡々と操艦に徹していたのに。彼の首筋にうっすらとテカリが見え始めたのをハッキリと認めた。ルメイは、汗をかいていた。

 ・・・そうか。石炭だ。

 今までの情報を顧みて、ヤヨイはそう見当をつけた。彼は残炭が少ないことが露見するのを恐れている。きっと、そうだ。そうに違いない。

 だが、何故だろう。

 残炭が少ないのが露見するのを恐れているのだとすればどうも腑に落ちない。正規の量を積んでいる僚艦と共に艦隊行動をしていれば、石炭の積載量が少ないことは遅かれ早かれいずれ発覚することだ。そんなことは承知の上のはず。それなのに、なぜ今、彼はそれを恐れるのだろう・・・。


 


 

「ミゲル、ここを頼む。オレは機関室に行く」

 ヨードルは、同じくダメージ・コントロールに詰めていた伍長に後を託し、立ち上がった。

「なんで先任が行くんスか? 」

 伍長は怪訝そうな顔で先任士官を質した。本来ならこのダメージ・コントロールで被害対応の総指揮を執る先任士官。それが演習とはいえ自ら被害対応に当たろうというのは異例だった。

「今説明してる暇はない! 頼んだぞ、ミゲル!

 ケリー、リュッケ、マック! お前たちはついてこい! ハリー、消火班とその辺りの機銃担当のやつらに協力してもらって石炭庫のハッチを全て全開しろ!」

「え、全部ですか? 左舷もスか? 攻撃されたのは右舷でしょ?」

「やかましいなつべこべ言うんじゃないっ! 全部と言ったら、全部だっ!」

 有無を言わさず、ヨードルはそう言い捨てて飛び出し、3人の甲板員が彼に続いた。

 通路の天井に頭が閊えるほどの大男なのに、ヨードルは、彼の息子のような歳の若い水兵たちが追いつけないほどの機敏さで狭い艦内通路を突っ走った。


 

 タツロー、よくやったぞっ!


 

 勝手を熟知した狭い艦内通路やタラップを、機関室に向かって小走りしながら、ヨードルは同室の機関主任を褒めたたえ、ほくそ笑んだ。

 どうしてもこの目で石炭の残量を確認しなければ気が済まなかった。

 自分の家とも思うミカサが大海原のどまん中で燃料切れで立ち往生なんて絶対に許せない!

 何の理由もなしに石炭庫をチェックしたりすれば水兵たちに無用な動揺を起こすが、被害対応訓練中に偶然発覚した風を装えば自然だ。

 そう考えて、事前に機関主任に手を打っておいたのだ。

 対艦戦闘演習では必ず被害想定訓練が伴う。いざという時のために下士官や水兵たちを慣らしておくためだ。それを逆用し、機関室と石炭庫に被害を受けた設定にすれば自分が石炭庫を確認する名分が通る。もし心配が杞憂であり、十分な石炭を積んでいたとしても言い訳が立つ。艦長の指示に反して行動したのではないと主張できる。

「ケリー。お前はリュッケと第一第二石炭庫に行け。庫内の内側に目盛りがあるはずだ。その数値を読んで残量を確認! マックは俺と第三第四を確認する。だがいいか、くれぐれもカンテラなんか灯すなよ」

「え、なんでスか? 真っ暗じゃわかんないスよ」

 ケリーと呼ばれた一等水兵は怪訝な顔をして尋ねた。

「お前はバカか! この、スットコドッコイが!」

 大男は艦に来たばかりの水兵に超特大のカミナリを落とした。

「石炭の粉塵がモウモウしてるとこに急に火の気と酸素があってみろ。粉塵爆発を起こしてお前だけじゃない。石炭庫全部が吹き飛ぶぞ。死にたいのか! あん? 何のためにハッチを開けさせた。ハッチが開いて外光が入ってきたらその明かりで読めるだろうが!」

「あ、アイ、サー・・・」


 

 ミカサの心臓部にあたるバイタルパートを輪切りにする。

 まず艦の中央に大きな蒸気レシプロエンジンが左右2基並んだエンジンルームがある。その両外側にボイラー。これはエンジンルーム左右にそれぞれ6基、計12基ある。

 さらにエンジンルームの外側に石炭庫があり、上に行くほど漏斗のように広がって下の石炭が各ボイラーに運ばれて行く。石炭が消費されると徐々に嵩が下がる。

 さらにその外側にはバラストタンクがある。これは石炭庫とは逆に下に行くほど大きな容積になっていて、石炭庫の左右の重量の差をこのタンクに注水して釣り合いを取る仕組みになっていた。

 ちなみにバラストタンクの外側にはあの標的ブイに使われているのと同じ、頑丈な装甲が張られている。ミカサ級程度の主砲弾ならこの装甲が跳ね返すし、仮に将来より口径の大きな砲弾が撃ち込まれたり、より破壊力の大きな水雷を撃ち込まれたとしても、装甲、バラストタンク、そして石炭庫の3重の防御壁で重要な機関室と弾薬庫とを守っている。

 石炭庫の上は艦の上甲板に開けた搬入口に繋がっていて、ここから補給された石炭がガラガラと庫内へ転がり落ちる構造になっている。常は真っ暗だが左右両舷の甲板ハッチを開ければ外の光が中に差し込む。それをボイラーの真上にある石炭庫の確認窓から覗けるのだ。

 くそ喧しくてうだるような熱気が籠る広大なエンジンルーム。

 それをはるか下に見下ろすキャットウォークのような狭い通路。その床板の鉄板を踵でカンカン鳴らしながら、ヨードルは最初の第三石炭庫の確認窓の前に駆けつけた。弾んだ息を整え、汗びっしょりの顔を払った。

「マック、開けてみろ」

 マックと呼ばれたまだ若い一等水兵はミカサの主の命令を受け小窓の扉のノブに手をかけて回した。扉が開くや黒い粉塵がモワッと湧き出てきた。

 顔をしかめつつその粉塵を扇いで晴らし、ミカサの主は中に首を突っ込んだ。

「早くそのいまいましいハッチを開けろ! この、くそったれめが!」

 暗い庫内の天井を見上げて毒づいた。

 石炭庫の天井から一条の光が差し込んだ。

 すぐにエンジンルームの熱い空気が小さな監視窓から石炭庫に流れ込み、上に向かって噴き上げていった。薄暗いながらも次第に粉塵が晴れて行く石炭庫の壁の目盛りが見えた。

 目盛りを追って目線を下ろしてゆく。

 それはずーっと下の方まで続いていた。見下ろして行くに従い、自分の汗がスーッと引いてゆくのがわかった。はるか下の方で給炭機にゴロゴロと落ちて行くコークスの鈍い肌が小さく光っていた。

 窓から首を抜いたヨードルの顔は煤で真っ黒になっていた。

 すぐに隣の第四石炭庫も確認した。結果は似たようなものだった。

「おい、ケリー! そっちはどうだ!」

 広大なエンジンルームの天井近く。ヨードルは反対側のキャットウォークに向かって声を張り上げた。

 ヨードルと同じように首を突っ込んで目盛りを読んだのだろう、向かい側のキャットウォークから煤だらけで真っ黒になったの上等水兵の顔が叫んだ。

「第一第二とも、石炭の残量は10パーセントから15パーセントほどしかありません! そっちはどうスか!」

 ヨードルは自分に続いて顔を突っ込み真っ黒になったマックの顔を見下ろして呟いた。

「・・・大変だ。えらいことになっちまったぞ・・・」

「どうしたんだ、先任士官」

 振り向くとそこに鋭い目つきの真っ青な顔をした機関長、ノビレ少佐が立っていた。


 


⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐

 




 帝国の特務機関の長ウリル少将の密命により、帝国海軍第一艦隊の旗艦に潜入し仮想敵国チナ王国のディープ・スロート、海軍の裏切り者を探し出そうとするエージェント、ヤヨイ。

 そのヤヨイが追う、旗艦ミカサとともにチナへ亡命を図ろうとする艦長のルメイ。そして、顔のない共謀者。

 疑惑と憶測が交錯し疲弊するヤヨイを助けるのは、大男で初対面の人間には極めて不愛想だが、気は優しくてしぶとくて打たれ強い。ミカサを我が家とも思い、それを害そうとする者を憎む、海を愛する男、ヨードル。

 この三人に刻々と迫る、その時。

 物語はいよいよ、盛り上がってまいります!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【時代小説】 黄昏夫婦

蔵屋
歴史・時代
 江戸時代、東北地方の秋田藩は貧かった。  そんな中、真面目なひとりの武士がいた。同僚からは馬鹿にされていたが真面目な男であった。俸禄は低く貧しい。娘二人と実母との4人暮らし。  秋田藩での仕事は勘定方である。  仕事が終わると真っ直ぐ帰宅する。 ただひたすら日中は城中では勘定方の仕事をまじめにして、帰宅すれば論語を読んで知識を習得する。   そんな毎日であった。彼の名前は立花清左衛門。年齢は35歳。  娘は二人いて、一人はとめ15歳。もう一人は梅、8歳。  さて|黄昏《たそがれ》は、一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のことを言う。「|黄昏時《たそがれどき)」。 「黄昏れる《たそがれる》」という動詞形もある。    「たそがれ」は、江戸時代になるまでは「たそかれ」といい、「たそかれどき」の略でよく知られていた。夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると誰かれとなく、「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味で日常会話でよく使われた。  今回の私の小説のテーマはこの黄昏である。  この風習は広く日本で行われている。  「おはようさんです」「これからですか」「お晩でございます。いまお帰りですか」と尋ねられれば相手も答えざるを得ず、互いに誰であるかチェックすることでヨソ者を排除する意図があったとされている。  「たそかれ」という言葉は『万葉集』に 誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ」 — 『万葉集』第10巻2240番 と登場するが、これは文字通り「誰ですかあなたは」という意味である。  「平安時代には『うつほ物語』に「たそかれどき」の用例が現れ、さらに『源氏物語』に 「寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 夕顔の花」 — 『源氏物語』「夕顔」光源氏 と、現在のように「たそかれ」で時間帯を表す用例が現れる。  なおこの歌は、帖と登場人物の名「夕顔」の由来になった夕顔の歌への返歌である。  またこの言葉の比喩として、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」をという語句の用い方をする。 漢語「|黄昏《コウコン》」は日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指す。「初昏」とも呼んでいた。十二時辰では「戌時」(午後7時から9時)に相当する。  「たそがれ」の動詞化の用法。日暮れの薄暗くなり始めるころを指して「空が黄昏れる」や、人生の盛りを過ぎ衰えるさまを表現して「黄昏た人」などのように使用されることがある。  この物語はフィクションです。登場人物、団体等実際に同じであっても一切関係ありません。  それでは、小説「黄昏夫婦」をお楽しみ下さい。  読者の皆様の何かにお役に立てれば幸いです。  作家 蔵屋日唱    

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

豊臣徳川両家政務会議録
〜天下のことをだいたい決める会〜

cozy0802
歴史・時代
会議系、歴史回避コメディ。 豊臣と徳川が“なぜか共存している”少し不思議な戦国時代。 そこでは定期的に、「天下のことをだいたい決める会」という政務会議が開かれている。 議長は淀殿。補佐は徳川秀忠殿。参考意見は豊臣秀次様。 そして私は――記録係、小早川秀秋。 議題はいつも重大。 しかし結論はだいたい、 「高度な政治的判断により現状維持」。 関ヶ原の到着時期の差異も、言いにくい史実も、 すべて会議の議事録として“やさしく処理”されていく。 これは、歴史が動きそうで動かない、 両家政務会議の史実回避コメディである。 だが―― この均衡がいつまで続くのかは、誰も知らない。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

処理中です...