【改訂版】 戦艦ミカサを奪還せよ! 【『軍神マルスの娘と呼ばれた女』 2】 - ネイビーの裏切り者 -

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第二章 対決

36 機関室と弾薬庫を死守せよ!

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 ミカサは再び停船した。艦内外の全てのスピーカーからデービス大尉の声が流れ出た。

「ブリッジより全艦に達する。全ての攻撃を中止せよ。総員艦内に撤収し、指示を待て。繰り返す。総員、全ての攻撃を中止し、艦内に撤収せよ」

 チェン少佐はブリッジを見回し、砲術長! と叫んだ。エンジンルームへの伝声管に寄り、そこにハンター少佐も並んだ。

「ノビレ少佐はいるか?」

 伝声管に叫んだ。すぐに機関長が出た。

「機関長。現在の状況はわかるな」

「うむ」

「本艦はこの敵の包囲からの脱出を試みたが、果たせなかった。子供を盾にした敵の肉薄攻撃をこれ以上防ぐ手段がない。

 武装した水兵を先任士官に率いらせてそちらに向かわせる。貴官は以後別命あるまで武装兵を指揮しエンジンルームに立て籠もれ。あと2時間以内に増援が来る。絶対に敵を機関室に入れるな」

「了解した」

 機関長は端的に応えた。

 そしてチェン少佐は砲術長を顧みて言った。

「君ももう一人選任して前部と後部の弾薬庫に立て籠もってくれ」

「・・・わかった」

「頼んだぞ」

 ハンター少佐は長官と参謀長に敬礼するとブリッジを出ていった。副長は最後に前部砲塔の伝声管に叫んだ。

「甲板にいる先任士官を呼んでくれ!」

 すぐにヨードルが出た。

「ハイ、副長!」

「知っての通り、この海域からの脱出は失敗した。

 だが、あと2時間足らずで援軍が来る。それまでの時間稼ぎをする。

 反撃は中止し兵は全員艦内に撤収させたが、子供たちの救助を再開、続行することを名目にし、そのため、敵との交渉を行うことになった。だが、交渉が決裂し敵兵が大挙して乗りこんできた場合、本艦の乗員たちではこれを撃退出来ずブリッジも占拠される恐れがある。

 そこで、貴官に命ずる。

 それぞれ数名による武装兵の小隊を3つ組織しろ。各小隊を前後部の弾薬庫とエンジンルームに派遣し機関長と砲術長の指揮下に入れ立て籠もらせろ。貴官も立て籠もり兵に加わり、以降機関長の指揮下に入れ。内側から厳重に施錠し絶対にチナ兵の侵入を許すな。・・・わかったか?」

「・・・アイ、副長」

「是が非でもバイタルパートを死守するんだ。たとえブリッジが占拠されても釜を炊かなければ船は動かん。弾薬庫とエンジンルームが自由にならなければ戦闘艦の奪取は出来ん。

 一つを残して全ての窯の火を消せ。艦内照明と放送、通信機の電源を確保するため発電機が回せればいい。

 あと2時間だ。それまでの間、持ちこたえるんだぞ!」

「・・・アイ、サー! 微力を尽くします!」

「微力じゃない! 」


 

 ヨードルは伝声管から伝わってくるチェン少佐の切実な肉声に耳を澄ませた。

「微力なんかじゃない。ミカサの主は君だ。頼りにしてるぞ、フレッド・・・」

 頼りにされているという誇りと責任の重大さに、震えた。

「わかりました。絶対にミカサを守り抜きます!」

「それから・・・、」

「・・・何でしょう」

「チナ語の出来る者を一人、ブリッジに寄越してくれ」

「直ちに命令を実施します!」

「ミカサは、君に委ねる。死ぬなよ、フレッド・・・」

 前部砲塔を出て甲板に伏せた。まだ煙幕はミカサを覆っていた。敵の銃声はますます激しさを増していた

「お前たち! 放送が聞こえなかったのか。全員反撃を止めて中に入れ! 銃を持つ者はブリッジ下に集合せよ!」

 そう呼ばわりつつ、姿勢を低くしながらブリッジの下のダメージコントロール室の前に走った。

 駆け寄って来た兵をブリッジ下に入れながら、兵の中に一人の甲板員、上等水兵の顔を見た。

「マック!、来いっ」

 その水兵を手招き、他は建物の中に入れた。呼ばれた水兵は身を屈めたヨードルの前に膝を突き、ヘルメットの庇を上げた。

「マック。今すぐブリッジに行け」

 彼の持っていた小銃を奪い、肩を叩いた。

「は?」

 中年に差し掛かった甲板員は突然の上司の指示に困惑顔に脂汗を滲ませた。

「いいから! とにかくブリッジに行け。お前はチナ語が話せる。通訳の任に当たるんだ」

「はあ? ツーヤクう? 先任、それは無理ですぜ。駆逐艦勤務の時、ほんの少々捕虜にしたチナ兵とふざけっこしたぐらいなんですよ」

「わかってる。でも、行け。行って副長の指示に従え」

「むちゃくちゃ言ってますよ」

「オレの命令に従えんというのか、ああん?」

 巨漢のヨードルのドスの利いた凄みに、ついに古参水兵は折れた。

「あ、アイ、サー・・・」

 しぶしぶブリッジに登ってゆくマックを見送ると、自分も艦内に入り、水密ドアを閉めた。そして、通路に居並ぶ50名弱ほどの兵たちに向かって言った。

「これからお前たちは半個小隊ずつに分かれ機関長及び砲術長の指揮下に入り、機関室、前後部弾薬室に立て籠もる。各員携帯弾数確認し必要であれば武器庫から調達せよ。

 ミゲルからそっちは前部弾薬庫、キャロラインからそっちは後部だ。サンディー、3名を率いてブリッジに行って副長の指示に従え。残りはオレについてこい。みんな、行けっ!」
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