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口元に笑みをたたえたまま、星川は伊織をじっと見つめる。冗談めかした口調だが、その目は熱っぽく、妬いているというより欲情している目だ。あからさまな目線に、伊織は目元を赤らめた。
「でも」
星川の手がおもむろに伸びてきて、伊織の伸びかけの髪を耳にかける。わざと耳朶をくすぐるように、そっと指先で掠め、そして耳元で囁く。
「遠田さんのこんな可愛い声、ふたりはもちろん知りませんよね?」
かぷ、と耳介を噛まれた瞬間、伊織は「ひゃっ」と声を上げて飛び退いた。
「もちろん、知らないですよね?」
重ねてされた質問に、伊織は赤くなった耳を押さえながら「当たり前です」と星川を睨む。星川はくすくすと笑いながら、伊織を抱き寄せキスをした。
最初は軽く触れるだけの。次に唇を何度か啄まれ、徐々に深い口付けになっていく。
星川の舌には、さっきデザートに食べた『タルトゥフォ』の、濃厚なチョコレートの味が残っている。きっと自分の舌も同じように甘いのだろう。
過去の失敗があるので、酒の飲み過ぎには注意している。だからさほど酔ってはいないはずなのに、深まるキスにくらくらしてきた。濃厚で強烈なカカオの濃さ。爽やかだけど、酔っ払いそうなほど強いコアントロー。
唾液とチョコレートが混じる。
舌を絡ませながら、伊織は混ざり合った唾液を吸った。もっと食べたい。
それに応えるように、星川の口付けが荒々しくなる。彼の吐く息から興奮が伝わってくる。
衣服の上から伊織の体をまさぐっていた星川が、スラックスからシャツの裾を強引に引き抜いた。裾から星川のてのひらが侵入し、素肌を撫で回す。星川のてのひらはあたたかかったが、伊織は震えた。興奮のあまり、肌が粟立つ。
気付けば上衣を脱がされ、ソファに押し倒されていた。
星川はあちこち撫で回しながら、乳首を熱心に吸っている。スラックスの中で性器が張り詰め、先走りが下着を濡らすのを感じる。
星川が毎回熱心にここに触れるので、乳首ですっかり感じるようになってしまった。舌先で捏ねられ、弾かれる。吸われ、舐られ、歯を立てられる。
「あ……あっ、星川さ……んんっ、そこばっかり……っ!」
星川はなかなか他に触れようとしない。伊織はもどかしくなって身を捩り、ねだるように腰を揺らした。
しかし星川は応えてくれるどころか、伊織を焦らす手を止め、おもむろに上体を起こす。
「遠田さん、そういえばまださっきのアイスって残ってますか?」
「え? あ、はい……冷凍庫に、まだすこし、ありますけど……?」
疑問に思いつつ、伊織は答えた。
それよりも中断されたことが不満だった。もっと触れてほしい。早く触れてほしい。
それなのに星川はソファからおりて、キッチンの方に行ってしまった。伊織も起き上がって、星川の行方を目で追った。間もなく彼はホーローのボウルを抱えて戻ってきたが、伊織はわけがわからない。
ボウルの中にはアイスクリームスプーンで二掬いほどの『タルトゥフォ』が残っている。
「いいこと思いついたんです」
そう言って星川はうっそりと笑った。
「でも」
星川の手がおもむろに伸びてきて、伊織の伸びかけの髪を耳にかける。わざと耳朶をくすぐるように、そっと指先で掠め、そして耳元で囁く。
「遠田さんのこんな可愛い声、ふたりはもちろん知りませんよね?」
かぷ、と耳介を噛まれた瞬間、伊織は「ひゃっ」と声を上げて飛び退いた。
「もちろん、知らないですよね?」
重ねてされた質問に、伊織は赤くなった耳を押さえながら「当たり前です」と星川を睨む。星川はくすくすと笑いながら、伊織を抱き寄せキスをした。
最初は軽く触れるだけの。次に唇を何度か啄まれ、徐々に深い口付けになっていく。
星川の舌には、さっきデザートに食べた『タルトゥフォ』の、濃厚なチョコレートの味が残っている。きっと自分の舌も同じように甘いのだろう。
過去の失敗があるので、酒の飲み過ぎには注意している。だからさほど酔ってはいないはずなのに、深まるキスにくらくらしてきた。濃厚で強烈なカカオの濃さ。爽やかだけど、酔っ払いそうなほど強いコアントロー。
唾液とチョコレートが混じる。
舌を絡ませながら、伊織は混ざり合った唾液を吸った。もっと食べたい。
それに応えるように、星川の口付けが荒々しくなる。彼の吐く息から興奮が伝わってくる。
衣服の上から伊織の体をまさぐっていた星川が、スラックスからシャツの裾を強引に引き抜いた。裾から星川のてのひらが侵入し、素肌を撫で回す。星川のてのひらはあたたかかったが、伊織は震えた。興奮のあまり、肌が粟立つ。
気付けば上衣を脱がされ、ソファに押し倒されていた。
星川はあちこち撫で回しながら、乳首を熱心に吸っている。スラックスの中で性器が張り詰め、先走りが下着を濡らすのを感じる。
星川が毎回熱心にここに触れるので、乳首ですっかり感じるようになってしまった。舌先で捏ねられ、弾かれる。吸われ、舐られ、歯を立てられる。
「あ……あっ、星川さ……んんっ、そこばっかり……っ!」
星川はなかなか他に触れようとしない。伊織はもどかしくなって身を捩り、ねだるように腰を揺らした。
しかし星川は応えてくれるどころか、伊織を焦らす手を止め、おもむろに上体を起こす。
「遠田さん、そういえばまださっきのアイスって残ってますか?」
「え? あ、はい……冷凍庫に、まだすこし、ありますけど……?」
疑問に思いつつ、伊織は答えた。
それよりも中断されたことが不満だった。もっと触れてほしい。早く触れてほしい。
それなのに星川はソファからおりて、キッチンの方に行ってしまった。伊織も起き上がって、星川の行方を目で追った。間もなく彼はホーローのボウルを抱えて戻ってきたが、伊織はわけがわからない。
ボウルの中にはアイスクリームスプーンで二掬いほどの『タルトゥフォ』が残っている。
「いいこと思いついたんです」
そう言って星川はうっそりと笑った。
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