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淫魔サキュバスとの対決!
しおりを挟むサキュバスは実に楽しそうに宙に浮いていた。
体を左右にくねなせながら、細くて長い手を独特のリズムで動かし、まるで踊っているかのように見える。
物心ついた頃に行ったテーマパークのパレードみたいな感じだ。
表情は笑顔を絶やさず、透き通る白い肌に紅い口紅をつけていて妙に色っぽい。
しかも、肌の露出が半端ない格好をしていて、ちょっとエッチなグラビアモデルも顔負けって感じで見えそうで見えないのがなんともそそられる。
マイクロビキニのようなビジュアルからはサキュバスが身体をくねらす度に豊満な胸がプルンプルンと揺れていた。
そんなセクシー全開のサキュバスが時折、誰に向かってか分からないがウィンクなどするために、護衛のゴブリンやオークは千鳥足になっていて表情がハートマークになってるように思えてしまう。
「バカぁー、無文サキュバス見ちゃダメだよ」
いつの間にか、サキュバスに見とれていた俺にロリミカが叫んでいた。
でも、俺はもっと近くでサキュバスを見てみたい衝動に駆られていた。
ロリミカも邪魔するなよ、あんないい女滅多にいないのだから。
もっと、間近で見たい、いやサキュバスに触れたい。どうなってもいい。
気がつくと、俺は宿屋から飛び出し大通りで立ちつくしていた。
「あらら、お兄さん、そんなに急がなくていいのよ。夜は長いから……さぁ、可愛がってあげる♡こっちにいらっしゃい」
サキュバスは自分を認識すると、途端に誘惑してきて「こっち、こっちにおいで」と手招きをしていた。
俺は、なんだか気持ち良い気分になってサキュバスのところへ歩み……。
その時、身体に激痛が走った。
「熱っっ」思わず叫んでしまう。
痛い所に目をやると、尻に火がついていた。
「なに、操られてんのよ」
どうやら、尻に火をつけたのはロリミカのようだ。
サキュバスの誘惑を解いたとはいえ、「乱暴じゃないかよ」と言いたくなるわ。
ロリミカを見ると、ステッキを振って無数の火球を飛ばしている。
眼前をすり抜けるように火球は飛んでいくと護衛のゴブリンを燃え上がらせる。
俺はその間に建物に尻をスリスリ擦って火消しだ。
「チェッ、魔法使いがいたのね。忌々しいわ」
サキュバスは「やれ」とばかりに手で合図を送ると、護衛達が「うぉーー」と雄叫びを挙げて俺とロリミカに向かって襲いかかってきた。
その時だった……。
魔物達の雄叫びに反応したのだろうか、視界の片隅に【スキル口上発動】と表示される。
なんじゃ、こりゃ? 確か覚えたての新スキル!!
俺の口は勝手に動き出すと、意もしない言葉を発していた。
「この、不逞浪士ども。さては薩摩か長州のまわしどもだなー! 御公儀に背くものは斬る!!」
はぁーー? 何言ってるんだ俺は……。
不逞浪士に御公儀?って、時代錯誤も甚だしいし、少なくともここは西洋風の世界で幕末の日本じゃないよ。
だが、勝手にスキルが発動してしまってるから、どうすることも出来ない。
襲いかかろうとした魔物達も?? なのか一瞬だけ動きが止まっていた。
【スキル発動 新撰組剣術】
「タッタ、タッタタッーター」
俺は動きが止まっていた魔物達のもとに走り刀を抜く。
「バサっ」
オークの肩に、刃を振り下ろす。
斧を持っていた腕が肩から離れ宙を舞い「ガシャ」と斧と腕が地面に落ちる音が聞こえた。
「プシャー」とオークの肩の切り口から時間差で緑色の血飛沫が隣にいるゴブリンに降り注いでいた。
ゴブリンは、仲間が斬られた事を知ると、ようやく武器のつるはしを振り下ろしてきた。
だが、遅い。
スキルの力を得た俺には、ゴブリンの動きはスロモーションでしかない。
「シュピィーン」
オーク同様に、【妖刀村正】の切れあじは鋭く武器を持ったままでゴブリンの腕は舞っていた。
「うぐっ」と腕をもがれたゴブリンに断末魔をあげる間も与えないほどに止めとばかりに胸元に刀を突き刺し刃を抜くと、銅貨に変わるゴブリン。
やはり、俺は強い。
いや、このスキルが強力、強大、甚だしかった。
更にロリミカが後方から俺にサポート魔法をかけてくれる。
魔法はバフ系で一時的に動きを俊敏にしてくれると頭の中でロリミカがチュートリアル。
武器を構える間もないほどに、俺はオークやゴブリンの合間に潜り込むと斬って斬って斬りまくった。そこら中に奴らの血飛沫が辺り一帯を緑色に染めていく。
ロリミカの方も、俺の様子を伺いながら、確実に魔法で魔物を仕留め、そこら中で魔物を炎上させていた。
気がつくと、ものの数分で数十匹いたサキュバスのパレードは数体になり、残った魔物達も逃げ出す始末になっていた。
残すはサキュバスのみ。
宙に浮いていたサキュバスはいつの間にか地上に降り立ち、苦々しく現状を見ているだけといった様子。
ほぼ勝確だと思っていたら、サキュバスが命乞いしてきた。
「あのー、お兄さん、いや剣士様。あたしは名もなきか弱い女なんです。ラーミア様に命じられて人集めしてただけなの。だから、もう悪いことしないから助けてよ。助けてください」
確かに、護衛のいなくなったサキュバスなど、敵ではない。
言うようにか弱い存在かもな。害もなさそうだ。
俺は、抜いた刀を鞘に納めた。
「ありがとう、剣士様。助けてくれた御礼にこちらにいらして、良いことしてあ・げ・る♡」
サキュバスは俺に向かって微笑みかけるとウィンクしてくれた。
こ、これは男たるもの行かねばならぬ。
断るとサキュバス、いやサキュバスちゃんに失礼というもんだ。
「さぁ、剣士様、はやくぅー。パフパフしてあげる♡」
俺は、サキュバスに向かって歩を進めた。後ろでロリミカが何か叫んでいて、尻も熱いがそんなの関係ねぇー。
パフパフされたいのみ。
サキュバスちゃんの胸に顔を埋めて、勝利を褒めてもらうイメージしか湧かないってものだ。
たとえ、サキュバスちゃんがマニキュアの変わりに長い爪に毒を塗って俺を突き刺したとしても、そんなの一時の快楽に比べたら微々たるものだろう。
そして、俺はいつの間にかサキュバスの至近距離にいて抱きつこうとした刹那……。
「ズボッ」と鈍い音と同時に【スキル発動 口上&剣術抜刀】と視界の片隅に表示されていた。
「うぐっ、なぜ、術が効かぬ?」
サキュバスの胸元で抜刀された村正が奴の身体を貫通して突き刺さっていた。
俺の方に倒れ込むサキュバス。
「なぜ?」と死に間際に聞いてくる。
「御公儀に背く花魁風情に要はない。あいにく女には困ってないもんでね」
と、俺の口からスキルが言わせていた。
「ピロリロリーン。レベルアップ、新スキル新撰組御用改めを覚えました」
レベルアップと同時にサキュバスの身体は金貨と変わり地面に落ちた。
そうして、俺とロリミカはサキュバス達のパレードを駆逐し勝利したのだった。
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