【完結】【やりちん】僕の青春グラフィティ。ノスタルジーな昭和チェリーボーイの卒業物語

カトラス

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いざ、泌尿器科

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 その時であった。今まで痒みを忘れていたアソコが猛烈に痒くなってきたのだ。

 恐らく、詩織とキス出来るのではないかと思った時に、アソコが勃起してしまい刺激を与えてしまったのだろう。

 

 詩織は、そんな私におかいまいなしに夢のあるようなことを言ってくる。



「今日から、部活が終わったら、一緒に帰らない。いろいろ話したいことあるし」

 

 うん、痒い!

「今度の休み、映画でも見にいかない?」

 

 痒い! 痒い!!



「電話番号の交換しようよ。祐一君といっぱい長電話したいし」

 僕の痒さは活動限界を迎えようとしていた。

 ここは、早く便所にでも行って掻きむしらないと発狂しそうである。



「ごめん、詩織、ちょっと、テニス部の先輩に呼ばれているの忘れてた。今晩、時間出来たら電話するので、番号だけ教えてくれないか」

 僕は、痒さの為に早口でそう言うのが精一杯であった。

 詩織は、まだ喋り足りないのか、少し残念そうな顔をしたが、すぐに鞄からメモ帳を取り出すと、走り書きで自宅の電話番号を書いて渡してくれた。


「悪いな、今晩、電話するよ」

「絶対だよ、祐一君」

 

 詩織のその言葉を確認してから、僕は走りだしていた。

 走りながら、我慢出来ずにアソコを掻きまくった。

 掻きながら、昨日のコンニャクの事が恨めしく思った。くそ、せっかくいいとこだったのに……

 便所に入ると、アソコを確認してみた。

 

 アソコは朝見たときよりも、さらに状況は悪化しているように思われた。発疹が棒にも広がりだしているのだ。

 しかも、授業中に掻いていたために、ヘアーの生えてる皮膚は発疹が潰れて血が出ているではないか。

 その状態を見たときに、僕は病院に行く決心がついたのであった。

 とにかく、クラブはとても出来る状態ではない。詩織と一緒に帰ることなんかもってのほかの状態だ。

 ここは、一刻も早く、クラブの顧問に体調不良を訴えて、自宅に戻り、病院に直行するのが得策ってもんだ。

 

 便所から出ると、顧問に部活を休ませて欲しいと言うために、制服のままテニスコートに行った。

 

 運のいい事に行く道すがら、グランドをとぼとぼと歩いてる顧問を発見した。

 僕は、顧問のところに走りよると、部活を休みたい旨を懇願した。



「先生、ちょっと、体調悪いので――休みたいのですけど」


「どうした? 風邪でもひいたんだろう。無理すんな」

 

 顧問は、私の尋常ならぬ様子が分かったのか、すぐに休むことを許してくれた。

 僕は、顧問に頭を下げると、踵を返して帰宅の途についた。

 

 家に帰ると、電話帳で病院を探した。

 この状態は皮膚科に行ったほうがいいのだろうか、泌尿器科の方がいいのか迷うところであった。

 

 場所が場所だけに泌尿器科のような気がするが、恥ずかしい。

 まぁ、皮膚科でも恥ずかしいことには変わりないのだが、まだ皮膚科の方がましな気がする。

 だが、皮膚科に行って、「これは泌尿器だよ」と医者に言われて、病院変えるのも二度手間になりそうで怖い。

 僕は迷った挙句に泌尿器を選ぶことにした。

 

 都合のいい事に泌尿器の町医者は自宅から自転車で五分ぐらいの場所にあった。

 善は急げ、私はパートから戻ってきた母親に、風邪ひいてしんどいのでと嘘をついて、保険証と医者代をひったくると、病院にむかったのだった。

 近所の泌尿器病院目指して自転車のペダルをこいだ。

 

 ペダルを踏むたびに、言い知れぬ不安が頭によぎる。

 なにしろ、泌尿器なる医者に行くなんて経験は初めての事だからだ。

 歯医者とか眼科だったら、経験があるのでだいたいの処置内容は頭に浮かぶのだが、泌尿器なるものは、全く想像がつかないのである。

 泌尿って漢字からして、下を取り扱うってことだけは分かるのだが……どんな治療をされるか全く持ってして不安であった。

 それと、医者に患部を見せないといけない。患部、即ちアソコを人様に見せるなんてことはありえないような気がするのだ。

 でも、現実問題として、医者に見てもらわないと治らないから、こうして泌尿器に向かってるわけであってして、受け入れなければいけないことなのであるのは百も承知の事なのではあるのだが。

 間違いなく、医者はどうして、アソコが被れてしまったのか? を聞いてくるに違いない。

 医者に聞かれたら、「コンニャクでシコシコしたら、こうなっちゃいました」などと真実を赤の他人の医者に言うことができるのだろうか。

 

 そんなことを自転車のペダルをこぎながら考えていたら、すっかり気分が憂鬱になってしまうのであった。



 ほどなく、自転車を走らせていると、住宅地の一角に目指す病院が見えた。



 病院といっても町医者なので、住宅兼医院って感じの佇まいである。

 僕は、でかでかと泌尿器と書かれた電光看板の脇に自転車を止めると、意を決して病院内に足を踏みいれた。玄関で靴を脱ぎ、スリッパに履きかえると、すぐに受付が目に入った。

 

 受付には、四十代くらいのおばさんが白衣を着て座っていた。

 病院の中はがらんとしていて、診察待ちの患者さんは誰もいなかった。

 
 おばさん看護婦は、私の姿を見つけるとこっちに来なさいって言うかのように満面の笑みを浮かべていた。
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