【完結】お暇ならショートでも。

カトラス

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恩師の教え(コメディー)

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 俺と彰は祇園の先斗町で週末飲んでいた。

 

 彰とは高校時代に知りあった友人だ。



 土曜の夕方とゆうこともあり、選んだ居酒屋はかなり混雑を見せていた。



 久々に会う旧友との飲み会で昔話に花を咲かせながら生ビールが進み、程よく酔いがまわる。



「お前、実家継いでお寺の住職になったんだろう?」



「おぅよ、先代の親父がぽっくり亡くなってしまったからな」



「親父さんはお気の毒だったけど、彰はいいよね。寺の住職たもん。俺なんか雇われで頭を下げまくる日々だぜ」



 俺は、日頃の愚痴がつい出てしまう。



「まぁ、お前は元々から実家継ぐために花道に進学してたから、俺みたいに併願受験したのと違うけどな」



 俺の言った花道ってのは京都には比較的よくある宗教法人が経営している私立の高校だった。



 花道は禅寺が母体なので規律は厳しくて有名な男子校だった。

 生徒の多くは、禅寺に関係のある子息が多いのが特徴だったが、母体の門下生だけでは生徒数不足になることから、日本全国から広く生徒を募集していた。



 そんな、俺は公立高校の滑り止めで当校を受験したが本命に落ち花道に進学した経緯があった。



「しかし、花道は本当にヤバい学校だったよな」



 いつもの流れで昔話がてらに自然と花道高校の話になる。



「宗教の座禅が堪らなく地獄だったわ」



 花道は仏教高なので宗教は必須であり単位を落すと進級ひいては卒業出来ないシステムである。



「まあなぁー、でも、今じゃ観光で京都に来る人の中には寺の座禅体験なんてものが人気らしいぜ」



 彰は坊さんらしい話を横入れしてくる。



「観光の座禅がどうか知らないけど、授業の座禅とは違うと思うわ」



「確かに、コンドームが担当の時は容赦なかったからな」



 コンドームというのは花道の必須科目である宗教担当の先生の事だ。

 本当は近藤という苗字なのだが、 男子高特有の下品なあだ名をつけている。

 コンドームは先生といっても宗教を教えるだけあってれっきとした禅寺の僧侶だったりした。



 コンドームこと、近藤先生は坊さんだけあって、生徒に対して品行方正を過分に求めてくるタイプの教育方針。



 見た目は体格が良くて坊さんだからスキンヘッド、声か低く話すときはドスが利いていて反社会みたいな奴だった。



 そいつが、宗教の授業になると本領発揮とばかりに威張るからうっとしい存在だ。



 校内に建てられた講堂に集められて俺達は宗教の授業を受けるわけなんだが、長椅子に置かれた座布団の上で胡座をかかされて、近藤の説法を一時間聞かないといけなかった。



 そもそも、座禅などしたことのないものにとっては正式な胡座をするのは、至難の技だったりする。足の甲を交互に膝の上で組まないといけないから、柔軟な身体じゃないと痛くて仕方ないのだ。

 仏教でいうところの苦行といっていいほど辛い。

 その姿勢のまま、お釈迦様の話を聞くのだ。



 最初は壇上で説法を話してる近藤は頃合いを見て、降りてくると、警策という木の棒を手に持ち徘徊しだす。



 近藤配下の手下坊主達と一緒になって、座禅の姿勢が悪かったり、していない生徒を見つけると「喝っ」といって肩口を警策で叩くのだ。

 よく、テレビで見るような座禅の叩くシーンみたいに軽くじゃないからたまったものじゃなかった。

 あまりに叩くものだから、警策が折れてしまう。

 だが、近藤は折れないように警策を重ねてガムテープで巻いたものを使用するので折れたりはしなかった。



 折れるのこの授業を耐えないと単位が貰えない生徒達の心だったりする。



 あと、近藤は校則あたりの学内ルールにも厳しく、守らない生徒がいたら体罰も甚だしい鉄拳制裁も厭わなかった。

 今から思えば血気盛んな男子高だったから、ある程度は力で制しないと学内の秩序は保たれない気もしないでもないがコンドームの鉄拳は度を越していた。



 一度、生徒の親御さんが問題にしたこともあったが、何しろ花道高校たるところ、色々な手を尽くしてもみ消したって話だ。宗教法人は伊達じゃないって事かも。

 それを裏付けるのかコンドームは生活指導も臆することなくしていたりする。



「特にコンドームは平城女子との交際にうるさかったよな」



 平城女子とは花道に隣接している女子高でかわいい娘が多かったので男子高で飢えてた俺達にとっては憧れでもあった。



「川畑なんか、上手く平城の子と付きあって帰りに手をつないでいたりしたところを見つかって酷い目にあってたからな」



「バタやん、彼女が出来て青春してたのにな。ボコボコにされて別れたからな」

 

「ほんと、それな。ことあるごとに不順異性行為はいかん

とか言うのが奴の口癖だから」



「よっぽど、近藤は歪んだ青春送ってたんだろうよ」



 彰は枝豆をつまみに生ビールを流し込みとしみじみと言った。



「ところで、このあといい店見つけたから行かないか?」



「キャバクラいいね!」



 俺達は居酒屋で一杯やったあとは決まってキャバクラに行くのがお決まりだった。



 特に彰は坊さんになってから、そこそこに羽振りが良く奢ってくれるのでありがたい存在だったりする。



 俺と僧侶になった彰もお姉ちゃんと戯れるのは大好きだ。

 いや、男で嫌いな奴なんか見たことないけど、花道での厳しい教えが反面教師になっていて、卒業してから女に目覚めてしまっていた。



「じゃ、そろそろ行くか!!」



 彰は残ったビールを一気に飲み干すと言った。



 そろそろ会計を済ませて居酒屋から出ようとした時。



 俺達はとんでもない光景に遭遇したのだ……。



 それは、店の出入り口付近から男が大声で騒いでいた。



「だから、入浴料はいくらだ? って聞いてるんだろー」



 居酒屋の店員が「いや、ここ飲食店なんで」

 と、困っている。



「それじゃ、直接、姫に払うのか、買わった店だな」



 俺達は入浴料と姫と男が言ったワードで状況を把握した。



 どうやら、この客は酔っ払っていて居酒屋の事をソープランドと勘違いしてるのだ。



「はぁ? 2万円もするのか、高いなこの店は入浴料割引しろ」



 他の客の会計を聞いて、勝手に入浴料と勘違いしてる男。しかも「割引しろ」と大声でわめいている。



 なんとも、酔っ払いといえどアホ丸出しで、思わず吹いてさそまいそうになる滑稽な場面だ。



 しかし、俺と彰はその男の声に聞き覚えがあった。



 ドスの低い声に。



 その声の主を確認すると、そこにはスキンヘッドでわめいている近藤こと、コンドームの姿がそこにあったのだ。



 あの「お釈迦は聖人君子でやれ見習って生きろ」だとか「不純異性行為は許さん」とか言っていた御仁である。



 そ、それがベロンベロンに酔っ払い居酒屋を風俗と間違えてるとは……。



 まさに、近藤の正体見たりの瞬間だった。



 会計を済ませた俺達は、まだ店先で騒いでるコンドームに「先生ありがとうございます」と言うと居酒屋を後にした。



 さて、「近藤先生の教えを守って俺達も楽しもうじゃないか」



 彰の足取りは軽かった。





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