41 / 45
ドロンパっ!! (コメディー)
しおりを挟む
「うぐっ」
会社の定期健康診断で、まさかの腹囲90センチオーバー!
見栄で思いっきり腹を凹ませてのこの結果に衝撃を感じる。
最近ズボンがキツイなぁーと思っていた矢先のメタボ判定。
禁煙してから、口寂しさからパクパク食べてたからなぁ。
などと後悔しても後の祭りで飛び出した腹をなんとかしたいと思う。
私は一大発起してスポーツジムに行くことにした。
ジムは仕事帰りにも寄れるように、駅チカにして受付がオススメしてくれたイブニング会員にすることにした。
一通り、トレーナからジムのマシーンの使い方をレクチャーしてもらいダイエット開始だ。
運動する前は、身体を動かすのが、億劫で嫌だったが、いざ始めてみると、やってる感も手伝い意外と楽しい。
ジムには様々な人達がトレーニングしている。
トレッドミルで速歩きしながら人間観察しながら色々と年齢や職業など想像するのも面白かったりした。
そんなこんなで、ジム通いは半年ほど経ち、腹回りの脂肪はすっかり取れてなくなってくれた。
とりあえず、当初の目標はクリア出来て心地良い達成感で満たされていた。
そんな、ある日のこと。
ジム通いで顔見知りになった佐藤という名の男性会員が話しかけてきた。
年齢は自分と同年代のアラフォーで体質なのか細見で毎日来てる割にはマッチョではない。
佐藤さんの見た目は、頭は剥げていて、トレーニングウェアの露出してる部分からはムダ毛が多い。
どちらかと言うと、悪い方向に男性ホルモンが作用してしまったように思える方だった。
「たまらんですな」
佐藤さんは一通りの社交辞令的な挨拶が終わるとボソッと呟いた。
佐藤さんは鼻の下を伸ばしながら、マットの上でストレッチをしてる女性を目で指して言ってる。
確かに、佐藤さんが言うように女性はセクシーなポーズをとりながらストレッチをされていた。
「うわぁー、あんなに足を広げて……」
佐藤さんは食い入るように女性を目で追っているようだ。
しかし、ここはスポーツをするオフィシャルな場所。
そのようなスケベな目的でジムに来るのは迷惑この上ないのだが、少なからずそういった男性会員もいるといった具合。
「ヤバいっすよ。佐藤さん。一応ストレッチエリアは鏡ばりになってるし、見てるの相手に分かられますよ」
私は、できる限り当たり障りのないように佐藤さんにそう言ってみた。
「そうだね、失礼、失礼。筋トレしてるとムラムラしてまいますな」
とりあえず相づちだけ打つと私はトレーニングを再開した。
しかし、佐藤さんは本当に露骨でスケベな人だな。
そりゃ、自分も男だから、敢えて否定はしないけれども、他の会員の目もあるし、ちょっと注意が必要な方だわ。
などと思ってしまう。
それから、一週間後の事。
筋トレをしていると、また佐藤さんと出くわして話かけてきた。
前回の事もあるので、適当に合わせて早くトレーニングしたいところってのが本音だった。
のだが……。
その日の佐藤さんは、こちらから話かけたくなる出で立ちをしていた。
いつもは短パンに半袖のTシャツって感じのラフな服装なのだが、その時は、エアロ用のコスチュームを着用されていたのだ。
「どうされたのですか? その格好」
私は思わず聞いてしまっていた。
「筋トレ飽きたから。スタジオプログラムに積極的参加することにしましたわ」
てか、飽きるほどの身体にはなってないような気もするが、本人の意思はそのようだ。
「エアロビとかルンバなんか、やりだすと面白いですよ。なんと言っても女性と一緒に運動出来るのは最高に楽しいですわ。おたくも是非一緒にしましょうよ」
確かに佐藤さんの言うように、ジムには筋トレ以外にも、スタジオプログラムといって専任のトレーナが行うダンス系のレッスンは女性には大人気だったりする。
ただ、男性で参加されてる方は稀有であって、女性陣だらけのレッスンの中を黒一点で孤軍奮闘するのは、なかなかに敷居が高い。
ジム内を開始5分前からスタジオブログラムの参加者達が列を作って並びだす。一応に定員があるみたいで皆さんチケットを持ってブログラム開始を待つようだ。
そんな中、佐藤さんは女性しかいない列の中をど派手なコスチュームで列の前方におられる。
しかし、見れば見るほど目だって仕方ない衣装だ。
プログラム開始直前になって現れた女性インストラクターの控えめなコスチュームと対象的に佐藤さんのは全体がオレンジ色をしていて、中央に真っ赤な☆が入っている。しかも。サイズがあっていないのかピチピチ感が半端なかった。
遠目に佐藤さんを見ていて何かに似ていると思っていたら、子供の時に漫画で読んだオバケのQ太郎に出てくるドロンパそっくりじゃないか!!
失礼ながら佐藤さんの薄い頭髪も手伝ってか、何かコスチュームを身に纏う佐藤さんは得体の知れない生物に見えて滑稽だった。
このドロンパが果たして、どのように踊られるのか興味が湧いたので、スタジオが真正面に見えるマシーンの元に私は移動して拝見することにした。
軽快なリズムがスタジオから聞こえてくると、ピンマイクでインストラクターが「ワン、ツゥー、ワン、ツゥー、はい手を横振って」と自身の動きとステップを真似させるようにエクセサイズをスタートさせる。
ドロンパは周りを女性に囲まれながら、ど真ん中でぎこちない動きながらも一所懸命にステップしていた。
「はい、スクワット、ワン、ツゥー。手を前出して、お尻振ってワン、ツゥー」
ドロンパ佐藤は、両手を前に出しながら尻を突き出してフリフリ、フリフリ。
「苦しくても、顔はスマイル。ワン、ツゥー」
ドロンパは満面の笑みを浮かべ一心不乱に尻を突き出しフリフリしている。
いやはや、まだ始めたばかりのエアロビでベテランの女性達に負けず劣らず、しかも中央でこれだけのパフォーマンスはされるドロンパに私は脱帽ものだった。
とにかく楽しんでる姿を目の当たりにして、ドロンパの勇姿に、「うわぁーこの人勇者だわ」と感嘆してしまっている自分がいた。
スタジオのプログラムはやりだした動機は不純だろうが、スポーツは楽しんだものが勝ちなんだと思わせてくれた光景だった。
ドロンパ佐藤さんがエアロビを謳歌されてる姿を見て、自分には体裁とか気にして参加出来ない自分が少し残念に思えてならない。
でも、自分には女性だらけの中でレッスンを受ける勇気も根性もないわけで、羨ましく思う事しか出来ない。
私は、良いものを見せてもらったと思う事にして、自分の出来る筋トレに打ち込むことにした。
そんな、佐藤さんの勇気と勇者ぶりを見せつけられ、ほどなくした頃、私にもチャンスが訪れた。
それは、いつものように筋トレマシーンのルーティンをしているときに、若い女性がマシーンの仕方を分からなく困ってる姿に遭遇したときだった。
親切心と少しの邪な気持ちから懇切丁寧にマシーンをレクチャーして上げると女性は喜んでくれて、その日を境にその方と話をするようになったのだった。
最初はジムに来るきっかけとか運動の話題だったが、そのうち、年齢や仕事などプライベートのことも聞けば嫌な顔もせずに教えてくれるようになっていった。
今では、女性は会話の間にボディタッチも加わり親密度は高いといった具合だ。
今では、ジムに来る度に女性がいないか探す自分がいてトレーニングライフも充実して楽しくて仕方がなかった。
相変わらず、派手なコスチュームを着てスタジオ中央でダンスをしてる佐藤さんに見せてつけてやりたくなる。
「どうだ!? ドロンパよ、正攻法でも女性と仲良しになれるんだ」と言いたい!
私は自信に満ち溢れていた。
ジムで出逢った女性とも仲良くなれたし、インボディの計測でも、ついに体脂肪率が10%になったからだ。
会う人達は口を揃えて「スリムになられましたね」とか「かっこいい」と言われて気分が良い。
やはり、継続は力なりなのだ。
ここまで、仕事が終わってからもコツコツとトレーニングに励んだ成果とご褒美が一気にやってきて有頂天になっている自分がいた。
だから、思い切って私はジムで知り合った女性に「今度、食事でも行きませんか?」と誘ってしまっていた。
「いいですよ、今度是非。奢ってくださいよ」
と、まんざらでもないイエスの返事をいただけたのだ。
こ、これは、私の人生経験から「いける!」と思うのだった。
なぜなら、女性との二人きりの食事は簡単そうに思えて、実はハードルは高いからだ。
食事の後のムフフな展開も夢ではない。
ここで、連絡先の携帯番号を聞こうかと思ったが自重する。焦っては決していけない。
あくまでナチュラルに誘うのであってドロンパのように下心を決して出してはいけないと思うからだった。
連絡先は次の機会でも、充分だし、今は食事に行ってもいいよだけで良しだからだった。
「じゃ、またね」
と言って私は次の機会を待った。
だが、私の思惑通りに物事は進まず、女性とはその日依頼逢う機会は訪れない。
悶々とジムで過ごしていると、私はとんでもないものを見てしまったのだ。
それは、ジムにある休憩スペースにあった【ご意見ボックスノート】なるもので知ってしまった。
ノートの横には、「より良い、スポーツジムを目指しておりますので、ご意見をお寄せください」と書かれている。
どんな事が書かれているのか興味があるので、ノートの中を見てみた。
ノートは匿名で書かれた、いわゆるジムに対するクレームが多かった。例えば、ジムのマシーンが壊れているのに、なかなか直してくれないや、トレーナが特定の会員だけ贔屓してる。
はたまた、男性の脱衣所やシャワールームに女性の清掃員が入ってくる。逆なら問題になるのにオカシイといったもの。
とにかく、クレームのオンパレードで、それに対して運営者が、それぞれの意見に対して真摯な返事と対応する旨の事が書かれていた。
しかし、よくも、これだけ言いたい放題になるものだと驚いてしまう。
やはり、会員制のスポーツジムは客意識が高いってことなのかな。ジム経営も過当競争に入っているから、このようなご意見をもらって改善していけのは必須なのたろう。
更にページをめくって読んでみると、【スタジオプログラム利用者です。最近エアロ中級コースに明らかに初心者と思われる男性が真ん中でエアロされるので皆さん困ってます。派手なコスチュームを着た(真ん中に星が入ってます)方です。インナー付けてられないのか、汗をかかれると色々透けて気持ち悪いし、臭いです。とにかく、注意お願いします。本当に皆さん困ってますので】
うわぁわぁー、これ、どうみてもドロンパ佐藤の事じゃないかよ。
透けてるって……。
確かに、インナーをつけてないと透けるのはヤバい気がする。
まぁ、あの格好で女性の中に単身特攻したドロンパは私の中では勇者だったが、プログラムの女性達にとってはセクハラ魔王でしかなかったようだ。
私は人の不幸は密の味ではないが充分に笑わせていただいた。
ドロンパ万歳! ってところだ。
しかし、女性は実に怖い。
自分も気をつけないと、反面教師にすることにした。
更に刺激的な事が書かれていないか、ページをめくると……。
書いてあった。
【筋トレマシーンでレクチャーしてもらった男性会員の事で悩んでいます】
ふむふむ。
【その方は、最初は優しく教えてくれたので良い方だと思ったのですが、最近、下心見え見えで食事に誘われました。ここは、スポーツを楽しむ場で、プライベートでお付き合いするのは絶対に嫌です。ジムに行くとその人にあって、また誘われるのじゃないかと思うと怖くて怖くて、ジムに行くのが辛いです。なんとかならないでしょうか。ナンパ目的で来てる方がいてショックです。その方のイニシャルは――】
イニシャルを見て、自分の事だとわかり、腰がくだけてしまった。
結局、ドロンパ佐藤の事を笑っていたが、自分も同じ穴のムジナであって、オープンかむっつりの違いしかない。どちらかと言うと、ドロンパの方が男としては潔い。
私は、知ってはいけない真実に遭遇して、このジムからドロンパしたい気持ちになるのだった……。
会社の定期健康診断で、まさかの腹囲90センチオーバー!
見栄で思いっきり腹を凹ませてのこの結果に衝撃を感じる。
最近ズボンがキツイなぁーと思っていた矢先のメタボ判定。
禁煙してから、口寂しさからパクパク食べてたからなぁ。
などと後悔しても後の祭りで飛び出した腹をなんとかしたいと思う。
私は一大発起してスポーツジムに行くことにした。
ジムは仕事帰りにも寄れるように、駅チカにして受付がオススメしてくれたイブニング会員にすることにした。
一通り、トレーナからジムのマシーンの使い方をレクチャーしてもらいダイエット開始だ。
運動する前は、身体を動かすのが、億劫で嫌だったが、いざ始めてみると、やってる感も手伝い意外と楽しい。
ジムには様々な人達がトレーニングしている。
トレッドミルで速歩きしながら人間観察しながら色々と年齢や職業など想像するのも面白かったりした。
そんなこんなで、ジム通いは半年ほど経ち、腹回りの脂肪はすっかり取れてなくなってくれた。
とりあえず、当初の目標はクリア出来て心地良い達成感で満たされていた。
そんな、ある日のこと。
ジム通いで顔見知りになった佐藤という名の男性会員が話しかけてきた。
年齢は自分と同年代のアラフォーで体質なのか細見で毎日来てる割にはマッチョではない。
佐藤さんの見た目は、頭は剥げていて、トレーニングウェアの露出してる部分からはムダ毛が多い。
どちらかと言うと、悪い方向に男性ホルモンが作用してしまったように思える方だった。
「たまらんですな」
佐藤さんは一通りの社交辞令的な挨拶が終わるとボソッと呟いた。
佐藤さんは鼻の下を伸ばしながら、マットの上でストレッチをしてる女性を目で指して言ってる。
確かに、佐藤さんが言うように女性はセクシーなポーズをとりながらストレッチをされていた。
「うわぁー、あんなに足を広げて……」
佐藤さんは食い入るように女性を目で追っているようだ。
しかし、ここはスポーツをするオフィシャルな場所。
そのようなスケベな目的でジムに来るのは迷惑この上ないのだが、少なからずそういった男性会員もいるといった具合。
「ヤバいっすよ。佐藤さん。一応ストレッチエリアは鏡ばりになってるし、見てるの相手に分かられますよ」
私は、できる限り当たり障りのないように佐藤さんにそう言ってみた。
「そうだね、失礼、失礼。筋トレしてるとムラムラしてまいますな」
とりあえず相づちだけ打つと私はトレーニングを再開した。
しかし、佐藤さんは本当に露骨でスケベな人だな。
そりゃ、自分も男だから、敢えて否定はしないけれども、他の会員の目もあるし、ちょっと注意が必要な方だわ。
などと思ってしまう。
それから、一週間後の事。
筋トレをしていると、また佐藤さんと出くわして話かけてきた。
前回の事もあるので、適当に合わせて早くトレーニングしたいところってのが本音だった。
のだが……。
その日の佐藤さんは、こちらから話かけたくなる出で立ちをしていた。
いつもは短パンに半袖のTシャツって感じのラフな服装なのだが、その時は、エアロ用のコスチュームを着用されていたのだ。
「どうされたのですか? その格好」
私は思わず聞いてしまっていた。
「筋トレ飽きたから。スタジオプログラムに積極的参加することにしましたわ」
てか、飽きるほどの身体にはなってないような気もするが、本人の意思はそのようだ。
「エアロビとかルンバなんか、やりだすと面白いですよ。なんと言っても女性と一緒に運動出来るのは最高に楽しいですわ。おたくも是非一緒にしましょうよ」
確かに佐藤さんの言うように、ジムには筋トレ以外にも、スタジオプログラムといって専任のトレーナが行うダンス系のレッスンは女性には大人気だったりする。
ただ、男性で参加されてる方は稀有であって、女性陣だらけのレッスンの中を黒一点で孤軍奮闘するのは、なかなかに敷居が高い。
ジム内を開始5分前からスタジオブログラムの参加者達が列を作って並びだす。一応に定員があるみたいで皆さんチケットを持ってブログラム開始を待つようだ。
そんな中、佐藤さんは女性しかいない列の中をど派手なコスチュームで列の前方におられる。
しかし、見れば見るほど目だって仕方ない衣装だ。
プログラム開始直前になって現れた女性インストラクターの控えめなコスチュームと対象的に佐藤さんのは全体がオレンジ色をしていて、中央に真っ赤な☆が入っている。しかも。サイズがあっていないのかピチピチ感が半端なかった。
遠目に佐藤さんを見ていて何かに似ていると思っていたら、子供の時に漫画で読んだオバケのQ太郎に出てくるドロンパそっくりじゃないか!!
失礼ながら佐藤さんの薄い頭髪も手伝ってか、何かコスチュームを身に纏う佐藤さんは得体の知れない生物に見えて滑稽だった。
このドロンパが果たして、どのように踊られるのか興味が湧いたので、スタジオが真正面に見えるマシーンの元に私は移動して拝見することにした。
軽快なリズムがスタジオから聞こえてくると、ピンマイクでインストラクターが「ワン、ツゥー、ワン、ツゥー、はい手を横振って」と自身の動きとステップを真似させるようにエクセサイズをスタートさせる。
ドロンパは周りを女性に囲まれながら、ど真ん中でぎこちない動きながらも一所懸命にステップしていた。
「はい、スクワット、ワン、ツゥー。手を前出して、お尻振ってワン、ツゥー」
ドロンパ佐藤は、両手を前に出しながら尻を突き出してフリフリ、フリフリ。
「苦しくても、顔はスマイル。ワン、ツゥー」
ドロンパは満面の笑みを浮かべ一心不乱に尻を突き出しフリフリしている。
いやはや、まだ始めたばかりのエアロビでベテランの女性達に負けず劣らず、しかも中央でこれだけのパフォーマンスはされるドロンパに私は脱帽ものだった。
とにかく楽しんでる姿を目の当たりにして、ドロンパの勇姿に、「うわぁーこの人勇者だわ」と感嘆してしまっている自分がいた。
スタジオのプログラムはやりだした動機は不純だろうが、スポーツは楽しんだものが勝ちなんだと思わせてくれた光景だった。
ドロンパ佐藤さんがエアロビを謳歌されてる姿を見て、自分には体裁とか気にして参加出来ない自分が少し残念に思えてならない。
でも、自分には女性だらけの中でレッスンを受ける勇気も根性もないわけで、羨ましく思う事しか出来ない。
私は、良いものを見せてもらったと思う事にして、自分の出来る筋トレに打ち込むことにした。
そんな、佐藤さんの勇気と勇者ぶりを見せつけられ、ほどなくした頃、私にもチャンスが訪れた。
それは、いつものように筋トレマシーンのルーティンをしているときに、若い女性がマシーンの仕方を分からなく困ってる姿に遭遇したときだった。
親切心と少しの邪な気持ちから懇切丁寧にマシーンをレクチャーして上げると女性は喜んでくれて、その日を境にその方と話をするようになったのだった。
最初はジムに来るきっかけとか運動の話題だったが、そのうち、年齢や仕事などプライベートのことも聞けば嫌な顔もせずに教えてくれるようになっていった。
今では、女性は会話の間にボディタッチも加わり親密度は高いといった具合だ。
今では、ジムに来る度に女性がいないか探す自分がいてトレーニングライフも充実して楽しくて仕方がなかった。
相変わらず、派手なコスチュームを着てスタジオ中央でダンスをしてる佐藤さんに見せてつけてやりたくなる。
「どうだ!? ドロンパよ、正攻法でも女性と仲良しになれるんだ」と言いたい!
私は自信に満ち溢れていた。
ジムで出逢った女性とも仲良くなれたし、インボディの計測でも、ついに体脂肪率が10%になったからだ。
会う人達は口を揃えて「スリムになられましたね」とか「かっこいい」と言われて気分が良い。
やはり、継続は力なりなのだ。
ここまで、仕事が終わってからもコツコツとトレーニングに励んだ成果とご褒美が一気にやってきて有頂天になっている自分がいた。
だから、思い切って私はジムで知り合った女性に「今度、食事でも行きませんか?」と誘ってしまっていた。
「いいですよ、今度是非。奢ってくださいよ」
と、まんざらでもないイエスの返事をいただけたのだ。
こ、これは、私の人生経験から「いける!」と思うのだった。
なぜなら、女性との二人きりの食事は簡単そうに思えて、実はハードルは高いからだ。
食事の後のムフフな展開も夢ではない。
ここで、連絡先の携帯番号を聞こうかと思ったが自重する。焦っては決していけない。
あくまでナチュラルに誘うのであってドロンパのように下心を決して出してはいけないと思うからだった。
連絡先は次の機会でも、充分だし、今は食事に行ってもいいよだけで良しだからだった。
「じゃ、またね」
と言って私は次の機会を待った。
だが、私の思惑通りに物事は進まず、女性とはその日依頼逢う機会は訪れない。
悶々とジムで過ごしていると、私はとんでもないものを見てしまったのだ。
それは、ジムにある休憩スペースにあった【ご意見ボックスノート】なるもので知ってしまった。
ノートの横には、「より良い、スポーツジムを目指しておりますので、ご意見をお寄せください」と書かれている。
どんな事が書かれているのか興味があるので、ノートの中を見てみた。
ノートは匿名で書かれた、いわゆるジムに対するクレームが多かった。例えば、ジムのマシーンが壊れているのに、なかなか直してくれないや、トレーナが特定の会員だけ贔屓してる。
はたまた、男性の脱衣所やシャワールームに女性の清掃員が入ってくる。逆なら問題になるのにオカシイといったもの。
とにかく、クレームのオンパレードで、それに対して運営者が、それぞれの意見に対して真摯な返事と対応する旨の事が書かれていた。
しかし、よくも、これだけ言いたい放題になるものだと驚いてしまう。
やはり、会員制のスポーツジムは客意識が高いってことなのかな。ジム経営も過当競争に入っているから、このようなご意見をもらって改善していけのは必須なのたろう。
更にページをめくって読んでみると、【スタジオプログラム利用者です。最近エアロ中級コースに明らかに初心者と思われる男性が真ん中でエアロされるので皆さん困ってます。派手なコスチュームを着た(真ん中に星が入ってます)方です。インナー付けてられないのか、汗をかかれると色々透けて気持ち悪いし、臭いです。とにかく、注意お願いします。本当に皆さん困ってますので】
うわぁわぁー、これ、どうみてもドロンパ佐藤の事じゃないかよ。
透けてるって……。
確かに、インナーをつけてないと透けるのはヤバい気がする。
まぁ、あの格好で女性の中に単身特攻したドロンパは私の中では勇者だったが、プログラムの女性達にとってはセクハラ魔王でしかなかったようだ。
私は人の不幸は密の味ではないが充分に笑わせていただいた。
ドロンパ万歳! ってところだ。
しかし、女性は実に怖い。
自分も気をつけないと、反面教師にすることにした。
更に刺激的な事が書かれていないか、ページをめくると……。
書いてあった。
【筋トレマシーンでレクチャーしてもらった男性会員の事で悩んでいます】
ふむふむ。
【その方は、最初は優しく教えてくれたので良い方だと思ったのですが、最近、下心見え見えで食事に誘われました。ここは、スポーツを楽しむ場で、プライベートでお付き合いするのは絶対に嫌です。ジムに行くとその人にあって、また誘われるのじゃないかと思うと怖くて怖くて、ジムに行くのが辛いです。なんとかならないでしょうか。ナンパ目的で来てる方がいてショックです。その方のイニシャルは――】
イニシャルを見て、自分の事だとわかり、腰がくだけてしまった。
結局、ドロンパ佐藤の事を笑っていたが、自分も同じ穴のムジナであって、オープンかむっつりの違いしかない。どちらかと言うと、ドロンパの方が男としては潔い。
私は、知ってはいけない真実に遭遇して、このジムからドロンパしたい気持ちになるのだった……。
0
あなたにおすすめの小説
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる