完結 元エリート刑務官、転移先は異世界のブラック監獄!? 下っ端スタートから囚人たちと更生改革します!』

カトラス

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第27話 当日、事件発生。視察!? 何者かの陰謀

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 視察当日の朝。空は不穏な曇りに覆われていた。

 帝都からの役人一行が監獄島ガランツァに到着する数時間前、俺──眞嶋隼人は朝食の準備を手伝っていた。



 配膳室では、メルクやフライ、他の囚人たちが慌ただしく動き回っていた。パンの焼き上がりも順調、野菜スープも完成し、視察団に供する特別食の準備も整っていた。



「隼人さん、野菜の仕込み終わりました!」

「ありがとう、ガイ。こっちもパンは上々だ」



 その時だった。

 配膳室の奥から、轟音が響き渡った──。



 ドゴォォォン!!



「な、なんだ!?」



 駆けつけた俺たちが見たのは、無残に破壊された調理台と、飛び散る食材、煙を上げる熱炉だった。



「誰か!水を持って来い!」

「メルク、大丈夫か!?」「けほっ、けほっ……俺は無事だけど、これ……完全に壊されてる……」



 調理器具はひしゃげ、調味料はまき散らされ、保存食の入った樽は粉々になっていた。

 誰かが意図的にやった──そう確信できる惨状だった。



「……これは、ただの事故じゃない」ジリアが険しい顔で呟いた。

「間違いない。視察当日を狙った妨害だ」



 その場にいた全員が沈黙した。

 俺たちの更生改革は、いままさに形になりつつあった。囚人たちが希望を抱き、看守たちとの信頼が芽生え始めていた。それを潰すには、今この瞬間が最も効果的。



「ナナ、被害状況をまとめてくれ。ベルン、現場を封鎖して証拠を保全するんだ」



 ナナは頷きながらも、唇を強く噛みしめていた。「せっかく、ここまで来たのに……」



「まだ終わっちゃいない」

 俺は壊滅的な配膳室を見つめながら言った。「これも試練だ。誰が、何のためにやったのか……必ず突き止める」



 事件の背後に潜む影──それが“誰”なのかを、この場にいる誰もが察していた。



 そう、あの男──ロト・ギャンベル。帝国視察という晴れ舞台に乗じ、改革の失敗を演出するには絶好の機会だった。



 だが、今回の事件には、もう一人、真の黒幕が存在していた。

 それは、別棟の看守・バルド。



 バルドは、ガランツァ島の旧体制に深く染まりきった看守であり、更生など無意味だと信じる典型的な暴力主義者だった。

 彼はロトと結託し、陰で囚人を使って密告や破壊工作を行い、現状維持によって自身の権力と利権を守ろうとしていたのだ。



「俺たちは、この施設を“改革”されるわけにはいかねえんだよ……」

 それがバルドの口癖だった。



 彼にとっては、囚人の人間性も、矯正の理想も関係ない。暴力と恐怖で支配する今の環境こそが、最も都合がよかった。



 一方、ロト・ギャンベルもまた、管理職という立場に安住する無能な者の典型であった。責任を取らず、成果には便乗し、失敗すれば他人に擦りつける。それが彼の処世術。



「どうせ失敗するさ。外野が変な希望持たせやがって……」

 ロトは更生改革を“危険思想”とみなし、積極的に妨害はしないが、陰で煽ることで潰れるのを待っていた。バルドの過激なやり方にも黙認を決め込み、責任を問われれば「自分は知らなかった」と逃げ道を用意していたのだ。



 そして今回使われた火薬も、実は以前バルドが没収物として隠し持っていた旧式の軍用備品から横流しされたものだった。爆薬の残滓からそれと分かる硝煙成分が検出され、誰かが倉庫の封印を破っていたことが後に発覚する。



「……まさか、ここまで露骨にやってくるとはな……」

 ベルンが呟いた。

「けど、俺たちなら、やれる。折れずに立てばいい」



「……メルク、フライ、まだ材料は残ってるか?」

「わ、わずかですけど……なんとかなるかも」

「やるしかない。今ここで折れたら、すべてが無駄になる」



 ──試されているのは、制度じゃない。

 俺たち自身の“意志”だった。



 誰もが震える中、再び立ち上がるために。



 視察団到着まで、あと──三時間。



 ***



 帝都からの視察団は、総勢七名。

 中枢官庁から派遣された上級官僚で構成されており、代表は帝都矯正局の第参課課長、カラム・ラングリス。



 カラムは、完璧主義者であり徹底した合理主義を貫く官僚中の官僚だった。

 彼はかつて「人間の更生も、数学のようにモデル化できる」と発言し、現場の看守たちからは“鉄面皮の判定者”と恐れられていた。



 無駄を嫌い、情や現場の感情論には一切耳を貸さない。

 過去には“感情に流された現場判断”を理由に、現場責任者ごと交代させたという逸話もあり、彼が視察に来る施設では事前に大量の資料と想定問答が準備されるのが通例である。



 だが、その冷徹さと厳格さの裏には「更生制度の本質を、数字と成果で守りたい」という信念もあった。



 他にも、教育分野の統括官、労働局からの視察官、さらに軍務省からも一名が同行しており、視察は単なる形骸化した行事ではなく、制度そのものを根底から覆す権限を持っていた。



 過去には、訪問先の矯正施設で“更生失敗率が基準を下回っていた”という理由で、看守の半数が即日解雇されたという噂すらある。



 それが、今日この監獄島に来る。



「どうにか、形にしないと……」

 焦りの色を隠しきれず、俺は作業に手を戻した。



 死力を尽くす、逆転の時間が始まろうとしていた。

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