完結 元エリート刑務官、転移先は異世界のブラック監獄!? 下っ端スタートから囚人たちと更生改革します!』

カトラス

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第34話『蘇る英雄──口の悪い勇者、レオン覚醒』

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 中央空間に満ちる静寂の中、俺──眞嶋隼人は、封印された人物の前で立ち尽くしていた。

 空気がひやりと冷たく、どこかで、誰かの声が囁いているような錯覚に包まれる。



「今、目覚めさせなきゃ……間に合わないかもしれない」



 その囁きに突き動かされるように、俺はそっと手を伸ばした。

 石柱の中に眠るのは、かつてこの世界で魔王を討伐したとされる伝説の勇者──レオン=グレイアッシュ。



 リヴェルの補助魔法で術式が活性化され、石化の封印が解かれていく。



「レオン=グレイアッシュ……。俺たちの世界が、またお前の力を必要としている」



 そう告げた瞬間、淡い光が空間を満たし、封印石が砕け散った。



 そしてそこに現れたのは、銀灰色の短髪に鋭い双眸を宿す青年。

 その第一声は──



「……あー、くっそ体いてぇ。誰だよ、勝手に起こしたのはよ」



「えっ……」



 ナナが目を丸くする。



「おい、あんた、ここがどこだかわかってるのか? あんたは──」



「監獄島ガランツァ、だろ? わかってるさ。まだ潰れてなかったのか、このクソみてぇな島」



 言葉遣いも態度も悪い。開口一番、罵詈雑言のオンパレード。



「……これが伝説の勇者?」

「想像してたのと違いすぎる……」



 仲間たちがざわつく中、レオンは全身を伸ばしながらあくびをかみ殺した。



 だが次の瞬間、空間の魔素がざわつく。

 その身から発せられる魔力の波動は、規格外の圧力を周囲に放っていた。



「っ……来るぞ!」



 リヴェルが叫んだ直後、ダンジョン奥から異形の魔物が突進してきた。

 巨大なオーガだ。体躯三メートル、黒紫の皮膚に血走った目。鈍器のような腕を振り上げ、咆哮を上げて迫ってくる。



「チッ……しょうがねぇな」



 レオンが片手をかざす。瞬間、空気が揺れ、光と音が同時に炸裂した。

 火炎と雷撃の複合魔法がオーガを貫き、床に巨大な亀裂を走らせる。

 魔物は一瞬で焼け焦げ、灰と化した。



 詠唱なしで放たれる高等魔法。まさしく“勇者”の実力だった。



「お前ら、下がってろ。雑魚処理くらい、寝起きでも余裕だ」



 レオンの声には苛立ちが混じっていたが、その姿に誰もが息を呑んだ。



「……やっぱり、あれがレオン=グレイアッシュ」



 ジリアが静かに呟いた。



 戦いの後、レオンは肩を竦めて俺を見た。



「まったく、誰が俺を起こしていいって言ったんだか。……ま、状況が状況なら仕方ねぇか」



「レオン。君は、もう一度この世界のために戦ってくれるか?」



 俺は真剣に問いかける。



 レオンはじろりと俺を睨んだ。



「俺は正義の味方じゃねぇ。ただ……納得いかねぇことを見過ごせない性分なんだよ」



 そして口元を吊り上げた。



「魔王? 魔物? 帝都? ……いいぜ、ひと暴れしてやるよ」



 その瞬間、監獄島に新たな嵐が舞い降りた。

 封印された伝説は、ついに覚醒したのだ。



 そして彼は、俺の前に立つと言った。



「で、お前──隼人って言ったか。面白ぇ魔素してんな……。お前、異世界から来た口だろ?」



「えっ……!?」



 その一言に、俺は言葉を失った。



「俺がどれだけ魔力の変質を見てきたと思ってんだ。お前の魂の匂いは、こっちの世界のもんじゃねぇよ。ま、悪いことは言わねぇ……覚悟だけはしとけ。戻れねぇってことは、な」



「……俺はもう、戻る気なんてないさ。この世界で、やるべきことがある」



 レオンはしばし黙り、そして口を開いた。



「そうか……じゃあ、教えてくれ。今、この世界はどうなってる?」



「帝都が──魔物に襲われた」



 俺は重く、だがはっきりと言った。



「査察官たちが命からがら逃げ戻ってきた。帝都は壊滅的な被害を受けてる。だからこそ、今、君の力が必要なんだ」



 レオンの表情がわずかに険しくなる。



「……そうか。魔王どもがまた好き勝手やってやがるのか。いいぜ。久々に、本気で暴れるとするか」



 レオン=グレイアッシュ。

 その口は悪い。だがその目は、本物の英雄の目をしていた。



 この出会いが、俺たちの運命を大きく動かしていく──。



 ※補足:この世界では魔力は空気中の“魔素”という粒子を媒介して発動する。魔素の質や色、反応速度は生まれ育ちや魂の由来によって左右されるため、異世界から来た者は“匂い”や“性質”で判別できることがある。レオンは長年の戦いの中で、その違いを見抜く眼を持っていたのだ。



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